『神様のカルテ』日本の医療の現状を患者も自分ごととして考えないといけない
本日は、夏川草介さんの『神様のカルテ』をご紹介します。
こちらは、インスタのフォロワーさんに激推しされた本です!
「24時間365日」対応を看板に掲げている、長野の基幹病院「本庄病院」に勤務する5年目の内科医、栗原一止が主人公の物語。
ストーリーは救急外来の場面から始まります。
いったん心を落ち着ける必要がありました。
きりんは、今まで医療小説を避けてきました。
その理由は、息子を育ててきた中で、救急外来は30回以上訪れていたからです。
持病のけいれん発作は深夜から明け方に起こることが多くて、救急車にお世話になりっぱなしでした。
まだ息子が小さかった頃は、隊員さんに抱っこされて、少し大きくなるとストレッチャーに乗せられて。
私はその後を追いかけながら、マンションの玄関を飛び出す。
冬の夜の闇の中、ぶわっと粉雪が舞い上がる。
「靴下を履かせてくればよかった」と後悔しながら、救急車に飛び乗って。
けいれんが病院に着くまで収まらなくて重積発作でそのまま集中治療室に入院したことも何度もありました。
救急車の中で呼吸が止まって、「このまま死んじゃうかも!」って半狂乱になったこともあって。
子どもが楽しめる行事もスルー。
お正月やクリスマスをPICUで過ごした年もあります。
元気な子どもたちを見ているのが辛い時期が長いことありました。
そんな訳で、医療小説を読むことが怖かった。
医療は我が家にとっては命を繋いでくれるものであるのと同時に、私の脳裏にさまざまな恐怖が染み付いたトラウマにもなっているのです。
でも、この小説は頑張って読んで良かったです!
私たちは医療を受ける患者の立場でしか、命を考えることがなかったと気づけたから。
私もこの小説の患者家族のように医師を責めるような取り乱した場面もあったかもしれません。
でも、医師もまた血の通った人間なのだと思い知らされて胸が苦しくなりました。
今はほとんど乗ることがなくなった救急車、めっきり減った夜間救急外来。
思い出すと、救急の先生方は、いつだってみんなボロボロでした。
先生の髪の毛はフケだらけでボサボサ。
帰ったり寝てないんだろうなと、ひと目見てわかるほどのときもありました。
でもいつだって。
深夜だろうが本当に真剣そのものに診療にあたってくださっているのです。
息子は第三次救急医療機関である大学病院に通院しています。
つまり、重篤になりやすいんですね。
この本を読んでいると、いろんな病気を抱えた患者さんや、命の現場に向き合う医者や看護師。
それぞれの人生が見えてきます。
個性的で味のある登場人物が、重くなりがちなテーマに軽妙さを与えてくれていました。
患者であること、医療を受ける側の私たちも、知らぬうちに傲慢さを押し付けていなかっただろうか?とハッとさせられました。
地域医療の医師不足による綱渡りの問題。
大学病院の医局と地域の中小病院との関係性なども興味深かったです。
終わりゆく命に延命治療を施すことの意味。
医師として葛藤する栗原先生の苦悩がリアルに伝わってきました。
読後感が爽やかで、続きが読みたくなりました。
日本の医療を崩壊させないためにも、患者側も考えていかなければいけないことがたくさんあると気づかされました。