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林真理子さん『みずうみの妻たち』若さを失うこと、恋に再び出会うこと

今回は林真理子さんの『みずうみの妻たち』をご紹介します。

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あまりご紹介したことがありませんが、林真理子さんの小説が好きです。
読み始めると先が気になり、ぐいぐい読んでしまいます。

本著は1990年から92年に19紙に連載された新聞小説の文庫化です。

ストーリーがそれほど古臭く感じないのは、夫婦関係をメインの題材とした普遍的なテーマだからでしょうか。

湖のある街の老舗和菓子屋に嫁いだ朝子。
夫は浮気を繰り返しながらも、どこ吹く風。

そこで朝子は、夫に本格的なフランス料理店を開くことを妥協点として提案します。

東京の建築家の大和田に店舗設計を依頼して、そこから、大きく朝子の運命が動き出していきます。

女たちの親睦団体「みずうみ会」は地元の有力者の妻たちで構成されています。
そこでは女同士の牽制が常にある狭い世界。

秘事、噂話。
それらは退屈な毎日を送っている彼女たちの蜜になる。

地方の名家は、「世間体」という周囲の目に晒されています。
お金もあり、人が羨まむような優雅な暮らしでありながら、地方であることの閉塞感もあってどことなく息苦しさも感じている。

若さが失われていく夫婦。
心も体も年を重ねるにつれ、お互いの気持ちも揺れ動いていく。

だからといって新しい人生に踏み出すには現実感がなく、諦めにも似た感情を持っている。

そういった停滞した現実から逃れるように、束の間に味わった密の味は甘すぎて・・・。

男と女の危ない恋が動き出して、ハラハラする展開を繰り広げていきます!

「不倫」というキーワードにより、「夫婦とは何か?」「女の人生とは?」「男の人生とは?」が炙り出されて。

思わず読んでいるこちらも、自分の人生に自問自答したくなるうような人間ドラマです。

男女の駆け引きや男心や女心を書かせたら、真理子様は天下一品だなぁと唸らされました。

ハマるほど出口がなくなっていく登場人物たちの気持ちに憑依できるのも、小説の愉しみであり醍醐味ですね!

『不機嫌な果実』も合わせて読んで欲しいです。
不倫小説としては、金字塔的な作品です。

怖いもの見たさでドキドキしたい方は、楽しんでみてください。











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森本木林(きりん)@読書研究家
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