わたしの日記 「レモンを青春に漬ける午後」
はちみつレモンみたいな甘酸っぱさを夢に見て、しずかに終わった恋がある。
むかしむかし、わたしが中学生だった頃、渡り廊下ですれ違った男の子に一目惚れをした。
名前も知らない男の子に惹かれ、少し大きめの冬服に身を包んだある日。「来年、一緒のクラスになれないかなあ」なんて思いながら遠い春を待った。
そして翌年、運よく同じクラスになれたことで、もりみジェットコースター「あの子のこと好きかも号」は淡い希望とともに夏に向かって出発進行。
蒸し暑い教室で「昨日のあのテレビ見た?」と、いつもと変わらない話で盛り上がる中、地元の小さな夏祭りの話題が出はじめた。
夏の一大イベントに一緒に行きたい人なんて大抵ずいぶん前から決まっているもので、例に漏れずわたしもその一人。
初めて二人きりで遊ぶ約束をしてドキドキの頂点に達したものの、お祭り当日の数日前、順調に進んでいたジェットコースターは緊急停止した。
どうやら彼は部活動の大会で勝ち進んだらしく、次の試合と日程が重なってお祭りに行けないとのこと。この理由が本当か嘘か分からなかったけれど、とりあえず「試合がんばって!」と応援するだけだった。
その後、何もなくふわふわと夏休みを終え、よろよろと秋を過ごし、ぶるぶると冬に凍え、好きだと伝えられないまま春を迎えた。
あのとき両思いだったと数年後に知ったところで思い出が少し綺麗になるだけで、言葉にしなかった恋は儚く、酸っぱいレモンのようだった。
少し大人になったわたしは、クーラーが効いた部屋でレモンスカッシュを飲みながら遠い夏に想いを馳せ、こんな歌を聴いて過ごしている。
星野源「くせのうた」
いつも読んでくれてありがとう。本日の主人公はもりみでお送りしました。
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あたまのネジが何個か抜けちゃったので、ホームセンターで調達したいです。