詰めが甘すぎるシリーズ。〈オーケストラ編〉
私は非常に詰めが甘い。
何かに張り切っている時ほど詰めが甘い。
自身の詰めの甘さで痛い目に遭うたび、この注意散漫加減は早いうちにどうにかしなくてはならない、と毎回思うのだが、その意識を持続させるほどの集中力を持ち合わせていないので、23歳になった今も改善が見られない。
こんな人間のまま社会人になって世のため人のために働いてしまって良いのだろうか、と思っていたのだが、「マジでミスっちゃダメ」と思っていることに関してはそれなりに注意が向くらしく、今のところ大したミスは犯していない。
と言おうと思ったが、ここまで書きながら、着任1ヶ月目におっちょこミスで社外の方を怒らせてしまい、早速上司に迷惑をかけた件を思い出してしまったので、やはり私は世にも人にも害悪な不注意平たい顔人間であることが判明した。切腹。
とはいえ、仕事になれば流石に「おっちょこちょいなんですよね⭐︎」で何もかも片付けて良いわけではないと心得ている。ので、パソコンで何かを入力するにも人に何かを話すにも「私が流れるように準備したものがまともなわけない」という情けない自戒のもとトリプルチェックしてから人様の目・耳に晒されるよう心がけているため、ミス数が格段に減っているのは間違いない。
ちなみに、ダブルではなくトリプル、というのは、着任から約1年間ついてくださるメンターの先輩にアドバイスしていただいたからである。私はこのトリプルチェックで救われた経験が入社1年も満たない現時点で何回もあるので、早々とこいつは注意散漫モンスターだと見抜いてアドバイスしてくださった先輩には迷惑感謝している。
迷惑感謝とは、相手からすれば本来そんなことで感謝されたくないと感じるような迷惑な感謝を意味する。私が作った。
ということで、noteでは、仕事ではなくプライベートの時に私の詰めの甘さが発揮されてしまったエピソードを書こうと思う。
皆さんの中に、交響楽団〈オーケストラ〉に所属する友人がいる側の人間はどれだけいるだろうか。
癪に障ったら申し訳ないが、私はいる側の人間である。
同じ会社に入社した同期で川嶋さん(仮名)という子がおり、彼女は学生時代から交響楽団に入団している。そのため会社員の傍ら楽団員として活躍しているわけである。音楽・楽器が好き/実にネガティブ思考 というプラマイゼロな共通点から仲良くなり、一年に一度ある定期公演に誘ってもらった。普段なかなかオーケストラの公演を見に行くことはないので、私は数ヶ月前から楽しみにしていた。
服装はどうしよう。あまり張り切りすぎてもキモいか…。そういえば疲労が溜まった状態で観に行くのは避けたいから、前日から有給を取って余裕を持って東京に帰ろう…。(私は雪国配属なので都外住み)など、それはそれは入念に準備を進めていた。
当日になってもそれは同じで、普段は平日出社する時も休日散歩する時もほぼすっぴんで出歩いているくせに、その日はしっかりと化粧をして身支度を済ませた。
家を出る時間になり、電車に乗ってインスタグラムを開いてみると、公演を間近に控えた友人がストーリーで緊張感伝わる投稿をしていたので、「楽しみにしてるよ!」とコメントを送り、(楽しみにしてると送ったら余計なプレッシャーになってしまわないだろうか…)とメンタルケアまで気にかける完璧ぶり。こちらは、友人が「まだ練習のやる気出ない、休日は家でゴロゴロしてる」などと言っていた時期から会社で休暇申請を出し入念に準備していたのだ。面構えが違う。
そんなこんなで会場の最寄駅に余裕を持って到着した時、私は一番大切なことに気づく。
ばかばかばか!絶対に必要じゃん!都外からめちゃめちゃ気合い入った装いで演奏を聴きに来た私が手ぶらだったら、
ってヒス構文で問い詰められても何も言えない!!!
慌てて近くの花屋を調べて、余裕を持っておいてよかったと胸を撫で下ろした。
どんな色だったら喜ぶだろう…?どのくらいの大きさが良いのかな…。時間がないなりに思考を巡らせた。結局オレンジ色や黄色で揃えたミニブーケを購入し、会場に向かった。
無事公演にも間に合う時間帯に会場に到着したところで、私は左手に花束を持ち一つの疑問と対峙する。
品のある大人noterなら悩まないことかもしれないが、私は今まで「友人の公演を観に行く」なんてかっこいい経験をしたことがないので、大きな会場で開催される公演でいつ花束を渡せば良いのか分からなかった。
取り急ぎ、私が小学生の時のピアノの発表会で、演奏後お辞儀をしたらお母さんや友達がわーっと集まって花束を渡してくれた記憶を引っ張り出してみたが、今回の公演でその経験が役に立つわけなかった。
というかここで突然、普段どれだけ怠惰な休日を過ごしたかの報告をして競い合っているような友人に花束を手渡す気恥ずかしさが生まれてきた。
私には、恥ずかしげもなくさらっと花束をプレゼントしてくれる幼馴染がいるのだが、私自身は彼女のような「さらっと花束手渡しスキル」を持ち合わせていないので、絶対渡すべき日にも関わらず、そもそも花束渡したくない!!ヤダヤダヤダ!!という最低な気持ちに襲われてしまった。
とここで、一つのカウンターが目に入る。
「出演者への花束はこちら」
キタ〜!
ここに預ければ、楽屋で確実に本人の手に渡る!しかも面と向かって手渡さずに済む!このシステム最高!
こういった大きな会場であれば当たり前のシステムにあらためて感動して私はカウンターに近づいた。
カウンターにいるスタッフの方に笑顔を向けながら、私は「花束とは無縁そうな友人が実は準備してて、演奏を終えて楽屋に戻ったら届けられてるなんて、直接渡すよりよっぽどかっこいいのでは?」と都合良い思考を巡らせた。
渡す相手と自分の名前を書き残すカードとペンを手渡され、「それなりに字が綺麗」で定評のある私は、
「Ob. 川嶋さんへ 森井」(彼女はオーボエ奏者である)
と流れるように書き残し、花束を預けた。
その後演奏会を楽しみ、余韻に浸り、出口へ向かうところで、川嶋さんからLINEが来た。
「もう出るから駅まで一緒に帰ろ〜」
久しぶりに会えるの嬉しいな〜。そういえば花束届いたかな〜。なんて思いながら会場の前で待つことにした。
しばらくして彼女が会場から出てきて、「ひさしぶり〜!」「ありがと〜!」とひとしきりキャーキャーした後、彼女が手ぶらであることに気づいたので、それとなく
「あれ、花束とか持ってないんだ?(全然それとなくないとか言わない)」と聞いてみた。
川嶋さんは、「あ、お母さんが車で持ち帰ってくれるの。」と言う言葉に続けて、「そういえば、」
とクールに言い放った。
・・・
アホっぽい!!!!!
実にアホっぽい!!!!!
などと思っていた自分が恥ずかしい!!!
こんなのであれば、無知を貫いて演奏会が終わったあと手渡しする方がよっぽどマシ!!!!!
そういえば、プライベートだからと気を抜いてトリプルチェックをするどころか、慎重さのかけらもない流れるような一筆でカウンターの男性にカードを手渡してしまった。
花束に添えるためカードを手に持った彼の目には、すました笑みでビタミンカラーのブーケを残した私がどれほどふぬけ面に映っただろう。
これからはプライベートでもトリプルチェックが必要だ_______
と悟ったものだが、そんな自戒の念が持続するわけでもない私は、その後も注意散漫エピソードを重ねていったので、またいつかnoteにも書きたいと思う。
2023/11/25 18:40