ヲタポリス(平山夢明)
――ねえママ、ママ、この本買って!
だめ!頭悪くなるから!!
(帯の煽り↑)
上記は平山夢明著「あむんぜん」の煽り文。下品な下ネタだらけな短編集ですが、平山夢明は一定の節度を守っているような、そんな気がします。感覚がわりと普通というか、根が真面目なんだなと思う。
あと井上正彦が異形コレクションでコメントしていましたが、彼はロマンチストですよね。
この短編集も、始終ふざけているようで所々、著者の生真面目さが表れている気がしました。
そして最終話「ヲタポリス」、これは笑った。めっちゃ笑いました。
改題前は「ヲタポリス しごとは推しごと」
中華屋を経営する両親のいる兄弟が、店の二階に在る部屋で話している場面から始まります。
弟であるジローの喋り方が幼いので、まだ二人共ほんの子供なのだろうと予想するでしょう。何やら不遇な境遇の、親にタダ働きさせられこき使われている幼い兄弟なのかな、と。
しかし読み進めると、弟のジローは既に30歳、主人公である長男、サブローは34歳であると判明します。
因みにサブローは、店の手伝いとか全くしていません。彼の仕事は推し活。ヤブサカという地下アイドルの推し活です。だから「しごとは推しごと」なんですね!
ある日サブローは、推し活仲間のモリソバからヤブサカが解散するとの情報を得ました。そしてそれを食い止めるために、大量のバイブ(大人の玩具)を売る事になります。
そこへ突然、これまで推し活資金を提供し続けてくれていた母親が倒れたとの連絡が。
病院に来たサブローは、ベッドで眠る母親の周囲にバイブを並べていきました。一本一本、心をこめて…
そこへ運悪く、父親が登場。その有様を見て驚愕、そして絶望。
配偶者が倒れて病院運ばれただけでもびっくりするのに、病院に来てみたら息子が寝ている妻の周囲にバイブを並べてる訳ですから、そりゃ驚くなんてもんじゃない。
怒ってバイブを踏みつける親父にサブローは
「やめろ!これは俺の夢と希望なんだ!」
「お前、法律家になるんじゃなかったのか?!なれるとは夢にも思わんが…」
「なるさ!そのためにこのバイブスが必要なんだ!」(嘘。推し活のためです)
これが無ければ俺はアイドルと結婚できなくなるカモー!と必死に訴えるサブローに、ますます血の気を失う親父。
そんな親父を前に、サブローはバイブを両手に持ち変な歌と変なダンスを披露し始めます。
ますます頭を抱える親父でしたが、看護師に叱られたので喧嘩は一先ずここで終了。
その夜、部屋で一人しんみりと静かに飲む親父にサブローは声をかけます。
「親父、十万くれ。貸すのでも良い。」
サブロー、神経図太過ぎるやろ🤣!!
このタイミングで?!発達障害の私以上に、空気読めなさ過ぎる😂!
当然親父は金をくれず、「もう死ね!死んでくれえぇ!」と喚かれた挙句、フライパンでどつかれる羽目に。
仕方なくサブローはどうしたかと言うと、家探しして親父や弟の所持品をパクる事で金を工面しました。酷過ぎる🤣
とにかく合間合間の会話や言動が、しょーもな過ぎて始終笑えました。声出して笑った。
平山夢明、コレ素面で書いたのでしょうか?だとしたら天才だと思います。