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人間が、地球の侵略者ですって?~私の愛するウルトラセブン2~
今回も私の大好きな「ウルトラセブン」の話をしようと思うんですが、例によって私はオタクではないので、そんなにディープな内容は書けません。私がどのようにセブンを見ているか、ちょっとだけご紹介する体ですので。
先ずは海外で放映された際の英語版のテーマ曲をお聴きください。
「ウルトラセブンの歌」(英語版)
作詞:東京一(円谷一)訳詩:Maya Taguchi 作曲・編曲:冬木透
歌:子門真人
オリジナルの主題歌も良いですが、子門さんのバージョンも捨てがたい魅力があります。
ノンマルトの使者
ウルトラ警備隊のモロボシダン=ウルトラセブン(現森次晃嗣)と友里アンヌ(ひし美ゆり子)は束の間の休暇を浜辺で楽しんでいます。彼らの目線の先には、人類の海底開発を担うべく開発された期待の「シーホース号」がその巨体を浮かべています。穏かな浜辺の風景。ところが、一人の少年の登場でその状況は一変します。少年はシーホース号を指をさしながらアンヌにこう言います。
「僕、ずいぶん前から、やめろ、やめろって言ったんだけど、ちっとも聞いてくれないんだよ」
いぶかるアンヌをよそに少年は、
「すぐにやめないと大変なことになるよ」
そう言い捨てると、少年はいずこかへ。ダンもアンヌも要領を掴めない様子です。とその瞬間、シーホース号が大爆発。同時に海の底にある海底開発センターも、何ものかが操る潜水艦によって破壊されたのでした。ダンとアンヌは血相を変えて少年を探すため、近くの小学校へ行くことに。しかし少年を見つけることは出来ません。ナシのつぶてのまま本部へと戻ります。ところが驚くことに、警備隊の本部にはあの少年と思しき人物からの電話があったというのです。
少年「海底はノンマルトのものなんだ。人間が、海底を侵略したら、ノンマルトは断然闘うよ」
しかし作戦室に詰める大人たちは、少年からの電話をただのいたずら電話だと思い込んでいる様子。
フルハシ「嘘っ八で言ったことが偶然にも、本当に起こったんで、調子にのってるんだよきっと」
ソガ「近頃の子供ならやりかねんな」
フルハシ「大体、事件そのものが、故意なのか、事故なのかハッキリしないんだ。こんな悪質な子供のイタズラ電話なんか気にすることないよ」
この時点では、潜水艦によって海底開発センターが破壊されたことはまだ作戦室の面々には伝わっていないようです。しかしその悲劇をいずれ現実のものとして受け止める時がやって来ます…。
ダンとアンヌは、先に訪れた小学校から少年がいるかも知れないとの連絡が入ったため、再び小学校へ向かうことに。その車中、ダンはあることに思いを巡らせていました。
「僕の故郷M78星雲(オリオン座にある反射星雲)では、地球人のことをノンマルトと呼んでいる。ノンマルトのことは人間のことである。だが、少年は確かにノンマルトと言った。それはどういう意味だろうか。人間でないノンマルトがいると言うのか?」
ノンマルトという「地球人」は、果たして「人間」のことなのか、それとも原生地球人のような人々のことを言うのだろうか?ダンは悩みます。結局、小学校では該当の少年を見つけられず、空しく車を走らせていると、何と海岸の岩場にあの少年がいるではありませんか。アンヌは車を降りると少年へと近づきます。
その少年の名は…
少年の名は「真市」といい、ノンマルトについてアンヌに語って聞かせます。
「ずっとずっと大昔、人間より前に地球に住んでいたんだ。でも、人間から海に追いやられてしまったのさ。人間は、今では自分たちが、地球人だと思ってるけど、本当は侵略者なんだ」
少年の言葉にアンヌは一瞬言葉を失います。アンヌは真市がノンマルトなのかと問いますが返事はありません。
真市「人間はずるい、いつだって自分勝手なんだ。ノンマルトを海底から追いやろうとするなんて…」
アンヌ「バカね。真市君は人間なんでしょ。だったら人間のことを考えるのは、当然のことじゃない。海底は私たちにとって、大切な資源よ」
真市「でも、ノンマルトには、もっともっと大切なんだ‼」
アンヌ「私は人間だから人間の味方よ。真市君もそんなこと言うべきじゃないわ!」
この言葉に怒りを覚えた真市は、アンヌを鬼の形相で睨みつけこう言いました。
「人間がやるんなら、ノンマルトもやるよ。僕知らないからね!」
その瞬間、ダンの通信レシーバーにキリヤマ隊長(中山昭二)の声が響きます。
「城南大学の海底探検部の船が襲われた!すぐに戻れ!」
現場ではタコのような大きな怪獣が、船を襲っています。この怪獣が真市の言うノンマルトなのか?
怪獣はウルトラ警備隊の攻撃により、泡を吹きながら海底へと沈んでいきました。やれやれと作戦室へ戻り一息つく面々。ところが、また真市らしき人物から電話がありこう告げられたのだ。ウルトラ警備隊のやっつけた怪獣はノンマルトではなく、怪獣ガイロスであること。そしていよいよノンマルトは、原子力潜水艦グローリア号で地上攻撃を開始することになった…。(ちなみに、このガイロスは、当時募集された怪獣デザインで銀賞を得た名古屋の少年の描いた絵を参考に制作されました)グローリア号はイギリスの開発した最新鋭の潜水艦だったが、二か月前に何者かによって奪われたのであった。ノンマルトは恐らく人間と比べると、脆弱な民族なのだと推測されます。怪獣を使ったり、自らの武器で戦うのではなく人間から奪った兵器を使うのですから。電話の逆探知に成功し、真市の身柄を確保すべく隊員たちは奔走しますが見事に逃げられます。そんな中、グローリア号の激しい攻撃が始まります。ウルトラ警備隊もウルトラホーク1号(大型戦闘機)を出撃させ迎撃します。
ダンがウルトラアイを手にとってまさにセブンに変身しようとしたその瞬間、真市がダンの目の前に立ちふさがります。
「ノンマルトは悪くない!人間がいけないんだ!ノンマルトは、人間より強くないんだ!攻撃をやめて!」
ダンは真市を振り切り変身しようとしますが、再び真市が目の前に。
「早くとめて!ノンマルトがやられちゃうよ!ノンマルトが可哀そうだ!とめて!とめて!」
真市の魂の叫びも、地球を守ると決めているダンには通じません。
ダン「真市君!僕は闘わなければいけないんだ」
(↑ノンマルトの使者のダイジェストをご覧ください)
ノンマルトの敗北
死んだはずのガイロスが、何と浜に向かって来るではありませんか。怪獣と原子力潜水艦のダブル攻撃。ノンマルトも中々やります。ウルトラ警備隊はグローリア号の攻撃のため、ハイドランジャーという潜水艦も出撃させます。セブンはガイロスに一旦は海底に引きずり込まれそうになりますが、最後はアイスラッガー(頭に付いている武器)でガイロスを見事撃破します。結局グローリア号も、ハイドランジャーの餌食となり海の藻屑と消えます。ハイドランジャーに乗り込んだクルーたちの目の前に、何と海底都市らしきものが現れました。
「もし、宇宙人の侵略基地だとしたら、ほうっておくわけにはいかん…。我々人間より先に地球人がいたなんて…そんな莫迦な…やっぱり攻撃だ」
キリヤマ隊長は心の中の自分の意思に従い、クルーに攻撃を命じます。
海底都市は次々に粉砕され、攻撃は激しさを増します。壊滅するノンマルトの海底都市…。
キリヤマ「ウルトラ警備隊全員に告ぐ!ノンマルトの海底都市は完全に粉砕した。我々の勝利だ!海底も我々のものだ!」
キリヤマ隊長の「勝利」に満ちた表情が、艦内のクルーたちの安堵を誘います。
寓話として残るノンマルト
事件は解決し、再びダンとアンヌは浜辺で体を休めている。だが二人とも何だか浮かぬ顔。ダンの心は揺れ動きます。
「真市君の言った通り、もし人間が地球の侵略者だったとしたら、ウルトラ警備隊の一員として働く僕は、人間という侵略者の協力をしていることになる…だが、ノンマルトは本当に地球人だったのか?」
ダンは自分を責めきれないでいるのです。ノンマルトが地球人であったかどうかを疑っているのですから。そんなダンの前に着物を着た一人の女性が現れます。
「この土地に避暑に来ていて、息子を亡くしたものです。もう二年になりますわ。今日が命日なものですから…」
女性の前に見える墓標に刻まれた文字にはこうありました。
「真市 安らかに…」
真市はとにかく海が好きで、海のように広い心を持った子供に育って欲しいと願い、彼女は毎年この地へ息子を連れて来ていたのだと言います。
真市は果たして何者だったのか?霊となってノンマルトの使者として現世に現れたのだろうか…。
「それにしても、ノンマルトは本当に地球の原住民だったのでしょうか?全てが消滅してしまった今、それは永遠の謎となってしまった」
番組の最後は、こんなナレーションで幕を下ろします。
脚本を書いた金城哲夫は、沖縄県出身の名シナリオライターです。この作品は彼の傑作シナリオの一つで、いまだに多くのファンに愛されています。沖縄出身という経歴が、このシナリオの根幹にあることは想像に難くありません。地球は一体誰のものなのか?本当に我々の物なのか?金城が私たちに残してくれたこの強烈なメッセージは、60年近く経った今でも決して色あせることはありません。
つづく
【作品データ】
第42話 「ノンマルトの使者」
脚本:金城哲夫 監督:満田穧(みつたかずほ)
放送日:1968年7月21日
【参考資料】
「ウルトラセブン SFヒーローのすばらしき世界」(朝日ソノラマ)
「僕たちの好きなウルトラセブン」(宝島社)