【読書感想】川越宗一著『熱源』を読んでから、一分一秒がとても濃い密度で進んでいる気がする。
文月ノベルです。読書感想です。
ふりかかる理不尽は、 『文明』を名乗っていたーー
極寒の地でも確実に感じる、歴史に巻き込まれながらも自分を自分たらしめようと生きる人の熱!
読みたかった想いを遥かに越える熱量の作品でした...あ〜読めて、よかった。
摂理を受け入れるのか、抗うのか、それとも。
読者に突きつけるテーマが、
現世に通じるものがあり、かなり重たい。
芯のある名作に出会えた感動があります。
ネタバレしますが、どうぞお付き合いください。
圧倒的な信念と熱量に、ため息が漏れる。
金田一京助が、『あいぬ物語』としてまとめた実在するアイヌ、ヤヨマネクフ(山辺安之助)の半生を軸に描かれた歴史大作。史実を元にしたフィクションです。
主人公はヤヨマネクフに加えて、ロシアに生まれたポーランド人、ブロニスワフ・ピウスツキの2人。
開拓使たちに故郷を奪われ、
コレラや天然痘の流行り病で愛する妻や友人を失い、
戦火が吹き荒れる弱肉強食の世界で
押し付けられる文明にアイデンティティを揺るがされても、
その理不尽に立ち向かって生き抜いた人々の
圧倒的な信念と熱量に、ため息が漏れます。
世の中の理不尽に打ち勝つための唯一は
「勉学、教養、言語」と語る主人公に、私は共感です。
暴力や武器は何の役にも立たないし、
無知は、時に人を苦しめます。
(無知の知ももちろんあるとも思う...そんな文月ノベルは、某大学の哲学科を卒業しています。笑)
熱く、苦しく、そして、
はじまりを感じる壮大な作品です。
ちなみに。
熱源を読んでから、太陽の熱やら潮の匂いやら風の音やらを強く感じるようになって、一分一秒がとても濃い密度で進んでいっているきがして、自分が樺太の凍土に立って、荒涼とした大地を見つめているような、キサラスイの琴の調べが聞こえそうな、そんな、気持ち。
川越さん、ありがとう。