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母さんの無邪気さ

いつもテレビで豪快に笑う母さんが好きだ。

どんなに私が捻くれた解釈しかできなくて
相手を困らせても、

「こんなこと最低だ」って思うくらいに
試すような酷いことを繰り返しても、

時間が経てばテレビをつけて、
さっきの出来事が嘘みたいに
リビングで大声で笑う母さんは、すごい。

忘れたいなぁ、切り替えたいなぁ、

でもなぁ、ってぐずぐず執着している私から

びゅんと遠ざかって、もう笑顔になって

楽しさに打ち込めている母さんは、

無邪気すぎて、まぶしい。

遠くから聞こえる母さんの笑い声は、

わたしも口元が思わず緩んでしまう。

私もそんなふうに、

辛いことがあっても豪快に笑えるときが

来るのかもな、って軽くなる気がする。

シフォンケーキを焼くとき、

メレンゲをしっかり泡立てて

気泡を潰さないようにして

生地に混ぜ合わせないと、

ずっと萎んだままでうまく膨らまず、

失敗する。

私が負の感情の密度をただ増やしたまま

萎んでいるのに、

母さんはもう今にもはち切れそうなくらいに

ふわっふわに膨らんで、天にも登れそうだ。

「天使のシフォンケーキ」。

そんなネーミング、
たぶん世界中のケーキ屋を探せばあるだろう。

味は口の中ですぐ溶けるくらい、
軽い食感なんだろうな。

深刻に考えすぎないで、

それで目尻に皺を作っても気にしないで

面白いことを面白いと素直に笑える、

そんな軽さを持った母さん、

あなたは私の捻くれた時点で見ても、
いいところだなと思う。

貴方の血が入ってるから
私もそうなれるかもな、

逆にここまで貴方と対比するように性格が
違うのはなんでなんだろうなって考える。

ところで私は、母さんと呼んだことはない。

普段は彼女のことを、「ママ」と呼んでいる。

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