入院雑記vol.7『過食』
体重が増えている。
正確な数字でいえば、プラス5キロだ。
私は適性体重よりも痩せ型で、
BMIも18より下回っているため、
体重が増えたことは、
別に健康上、問題がない。
だが、急激な体の変化に、
心が追いついていない。
まずは、シルエットの変化である。
低体重であったため、
足が棒切れのようだったが、
太ももの付け根が丸太のように太くなった。
手首も、二の腕が手を輪っかにして
掴めるくらいだったのが、もう掴めない。
顔周りも、ふっくらした気がする。
健康的な見た目になったといえば、
うれしく聞こえるものだが、
やはり、ごぼうのように
細くて軽かった自分の身体が懐かしい。
でも、看護師さん曰く
「適性体重に戻っていく方がいいと思うよ」
ということだった。
まあこれは至極当然の解答だ。
病院でダイエットをしようものなら、
点滴になるし、ここは素直に従うべきである。
だが、私がいいたいのは、
問題は食欲が止まらないってことだ。
病院食では、ご飯が200gまで出る。
私は家で食べる時は
大体その2分の1の量だったので、
初めは食べ切ることが難しかった。
だが、最近、その量では、
足らなくなってきている。
それに加え、朝ごはんは
クロワッサンにしてもらっているため、
通常のご飯、食パンよりもカロリーが多い。
その上、バターをつけて食べるものだから
カロリーは半端ではない。
その残ったバターの容器さえ、時には
舐めてしまいたいという衝動に駆られる。
病院食を食べ終わると、
テレビのグルメ番組を見てしまえば、
すぐさまお腹が減る。
何か口寂しくて、病棟にあるお茶コーナーで
ガブガブ水分を摂ってしまう。
ときには、病棟の売店で、お金もないのに
食べれそうなものをうろうろ探すこともある。
うん、これは問題、ちょっと異常だ、と思う。
また、土日は外出許可を多めに取れるので、
その度に店で買い食いをしたり、
家に帰って間食ばかりしてしまう。
この間は、すぐ売り切れると噂の
カヌレ屋さんに行って、カヌレを買った。
外側がカリッと香ばしくて、
中は濡れたようにしっとりして、
大変美味しかった。
その食感のコントラストが素晴らしく、
小さい見た目をして250円とは
随分高いなと思ったものだが、
食べたらびっくり、その値段には理由がある。
もう一回買って食べたいな、と
つい最近まで思っている。
また、家に帰ると、
母と妹が美味しそうなものを
口にしていることが多々ある。
この前は、
ライスペーパーをテーブルの中心に置いて、
セルフ・スタイルで自作の生春巻きを
作っては二人でかぶりついていた。
具材には、
茹でた鶏肉、
甘酸っぱいきゅうりの浅漬け、
人参の甘酢漬けに、
トマト、レタスなどの生野菜、
さらには
醤油で味付けされたグリルチキンもあった。
つけだれも種類豊富で、
味ポン酢から、バルサミコ酢、
焼肉のタレなどいろいろあった。
なんて、美味しそう。
これは、食べないわけにはいかないだろう!
そういうわけで、帰れば病院食が
あるにもかかわらず、
ガツガツと食べてしまう。
....このままでは本当に適性体重を超えて、
巨万になってしまうのではないだろうか。
でも、食欲はなかなか治らない。
頭の中は、ケーキ、マフィン、ポップコーン
など、食べ物のことでいっぱいになる。
これは、過食ということになるのだろうか?
今のところ、お金を下ろして
大量の食品を買うことはしていない。
まだ私の中には細い身体でいたいという
意識が宿っている。
ただ、お金がもったいないという意識が
減ってきて、どうしても食べたい欲が
今より上回った時、
私は吐いてでも
食べに走ってしまうのではないだろうか。
そんな恐怖が襲ってくる。
とりあえず、今は美味しそうな食べ物から
目を逸らすため、運動や趣味活動に
専念していきたい。
怖いのでね。慎重に、慎重に。
入院雑記、以上。
PS この間、病院食でティラミスが出た時の
写真。とても美味しかった。