辞めてしまおうか
この日の夜、次の日からまた1週間が始まる日曜日の夜のこと。
やっぱり私は耐えられなかった。明日から会社に行くこと。理不尽の塊のブラック企業に行くこと。テレアポをまた1日中やり続けること。
これに耐えられなかった。
◇◆◇
社会人3日目の朝、彼に「いってきます」と言った後、満員電車の中で涙を貯めた。テレアポを一日中するのが嫌だった。お昼休み前にはおじさんに「もうかけてくるな!」と怒鳴られて、お昼休みの半分はトイレに籠って泣いた。帰りの電車の中では気がついたら涙がこぼれた。
4日目の朝、行きたくなくて朝から泣いた。1日中テレアポし続けることも、怒鳴られるのも嫌だった。「要らないです〜ガチャ」と切られるのも、要件言うとガチャとなるのも、嫌だった。プルルルル…その音さえ嫌だった。電話と電話の合間に流れる曲が頭の中から離れなかった。頭がおかしくなりそうだった。それでもはじめて1つアポを取れた。仕事のために食べることが嫌で、なんだかバカバカしくてお昼ご飯も放棄した。それでも夜は彼がご飯を買っておいてくれて、美味しそうに食べるのだから、つい釣られて食べた。美味しかった。
ただ、この日は1時間も残業させられた。1週目から信じられなかった。帰り道も、仕事のことを考えると涙がこぼれた。
5日目は2つアポを取れた。「華金だから早く帰ろうね」と言っていたのに30分の残業。結局毎日残業してた。でも営業には残業という概念が無いらしい。残業代が入らないのかもしれない。走って帰った。久しぶりに自宅に帰る。母の顔を見てほっとしたのか、たくさん食べた。もりもり食べた。土日が心から嬉しかった。
◇◆◇
謎の習慣や決まりに納得がいかないことはもちろん、仕事が合って無さすぎるのは一目瞭然だった。さらに、部署も入社1か月前に変えられて、講義もしたけど通らずに、納得できないままの入社だ。モチベーションなんてあるわけが無い。
辞めたかった。
いや、私の中では辞めるの一択。
いつ辞めるかの問題だった。
はじめは1年頑張るつもりだった。でも配属先が打って変わって、半年持つかな〜?と思った。入社前には周りに「何日もつかな?」と冗談半分・本気半分で言っていた。最初から不満だらけだった。
実際はじめて3日目の朝には辞めたいなと思い、お昼に篭って泣きながら「辞めてやる」と決めた。ただ初任給はもらおうも思った。せっかく入ったし、今辞めたら次、お金が入るのは何時になるのか分からないから、最初の19万だけはもらおうと思った。でも、5日目にはもうそれすら難しいと感じた。土日を過して、初任給まで続けられる自信は無くなった。
「仕事辞めたい」
日曜日の夜、彼にうっかり漏らした。彼はとっくに気づいてるはずだけど、そんなに早く言うつもり無かった。
と言われた。大学院のときもそうだった。彼ならそう言うと思った。分かってて私は言った。彼に背中を押してもらおうと思っていたのかもしれない。
でも、いざそうするとなると、また違う。
辞めた後どうするの?
5日で辞めて、次の就職できるの?
ママやパパになんて言うの?
そんなこと許されるはずがない
そんな不安はもちろんいる。でも、彼にも言われたけれど “モチベーションも無く続けることに意味はあるのだろうか?” と考える。「ない」よな。即答。だったら好きなことして少なくてもお金を稼ぐ。その方がよっぽど楽しく生きられる。なにも苦しい場所にい続ける必要なんてこれっぽっちもない。
そんなこと、去年散々学んだのに、私また繰り返すのか。
それでも早すぎるような決断に、やっぱり不安が増える。本当に大丈夫だろうか?
自分が考えるために仕事を続けることはできる。
納得いくまで続けながら考えればいい。
でも、それは私が耐えられるまでが限度だ。
それも長くは無い。
将来を考える日々が続く。
でもそれは、どんな人も考え続けなければならないことだと思うんだ。ただ、私の場合はその緊急度が少し高いだけ。
明日の私、どんな決断をするんだろうね。
会社の人と初めて顔を合わせた懇親会のとき、こんなことを言われた。
それはそうかもしれない。(知らんけど)
でも別に、うちの会社じゃなくてもいいよね。
チャンスなんて日常の至る所に転がっている。
チャンスに気づけるかどうか、そして掴めるか。
どこにいたってチャンスをものに出来るかはどこにいたって2つのことができるかどうかにかかっているもののはずだ。
この会社じゃなくたって、仕事はあるよ。会社もあるよ。
生きていけるよ。
楽しく暮らす方法も、幸せな生き方も、
そのための選択肢も山のようにあるのだから
辞めてしまおうか。
月曜日の朝、適当に髪を整えるの辞めた。社会人ぽく薄くメイクするのも辞めた。
髪は真っ直ぐに、外ハネしないように平日初めてていねいに整えた。メイクも好きなくすみピンクを使って、特別な日にしか出さない唯一のデパコスのリップを使った。
服装も、イヤリングも、濃いメイクも、私にとって武装だ。言いたいこと・聞きたいことを勇気を持って言うための武装。
辞めるか否かは置いておいて、ちゃんと伝えよう。
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