「小説を書く」ということー『【実践】小説教室 』(根本昌夫)感想
小説教室に行ってみたい!
小説を書くというのは、孤独な作業だ。
プロではないので当たり前だが、どれだけ書いてもお金はもらえないし、伴走してくれる編集者もいない。
家にいるだけでもネットサーフィンや動画配信など多くの誘惑がある中で、自分で自分を律して書き続ける必要がある。
理想は高いくせに根がナマケモノの私は、独学には一番向かないタイプの人間だ。(そんな人間が作家を目指していることがまず問題な気がするが…)
そんな私が最近気になっているのが、「小説教室に通う」ということだ。
元編集者や作家が講師になっていることが多いので、自分が書いた作品のフィードバックをもらえるし、教室には同じ目標を持つ仲間がいるのでモチベーションも上げられる。
これは入るしかないのでは…!?と(執筆そっちのけで)小説教室についての情報収集をする中で知ったのが、元編集者・根本昌夫さんの小説教室である。
根本さんは「海燕」「野生時代」の元編集長で、吉本ばなな、小川洋子、角田光代さんらのデビューに立ち会っている。
退職後にカルチャーセンターなどで小説講座を担当し、多くの新人賞受賞者や芥川賞受賞者を輩出しているそうだ。
なんだかものすごいレベルの高そうな小説教室である。
通ってみたい気持ち以上に、「私レベルが通っても場違いなのでは…?」という気さえしてきた。
そこで、通うかどうか決める前にまずは根本さんの著書『【実践】小説教室 』を読んでみることにしてみた。
前置きがとても長くなってしまったが、この本はこれまで読んだどんな小説指南本より本質的で、実践的な部分もあり、小説を書くモチベーションを高めることのできる一作だった。
『【実践】小説教室』感想
「はじめに」にあるように、この本は「紙上小説講座」である。
最初の「1ー小説とは何ですか?」では「いい小説」とはどんな小説か、どうやったら作家になれるのかといった基本的なことについて、「2ー書いてみよう」では「あなたにしか書けない小説の書き方」について具体的な項目ごとに書かれている。
最後の「3ー読んで深く味わおう」では村上春樹や綿矢りさの作品を取り上げて小説の「構造」と「重層性」に着目しながら作品の読み解き方を解説している。
何度でも読み返したくなる、まさに「目から鱗」な言葉の数々だった。
特に私が心に残った部分を引用しながらいくつか紹介する。
➡まあ結局これなんだよな、と思うし、自分の可能性を信じて書き続けることができた人が小説家になれるのだと思う。
➡たしかに、と納得。小説「教室」とはいうものの、他のいわゆる習い事とは来る人達のモチベーションも全然違うと思う。
小説は「書きたい」という自分の中から湧き上がる強い意志がないと、そもそも書こうと思わないのだから、やはり書きたい時がはじめ時なのだろう。
➡書くことと同じくらい読むことが大切というのは、少し意外な気がした。
4種類の読み方の話から、私が普段いかに「自分の読み方」しかしていないか、ということを痛感した。
たくさん本を読んでいるはずなのに、いざ書こうとするとうまく書けない」のは、圧倒的に「著者の読み方」の読書体験が少ないからだと分かったので、今後は幅広いジャンルの名著を「著者の読み方」で読んでみたい。
また、「おわりに」では小説を書くことの楽しさや醍醐味を以下のようにまとめている。
➡この3つそれぞれの説明と、その後に続く「人生にとって小説修業は決して無駄ではない」、「小説にとっては、どんな人生も無駄ではない」というあたたかくも力強い言葉に胸を打たれた。
読み終えて感じたこと
この本を読むまで、私がいま小説を書いているのは「小説家になりたいから」だと思っていた。
もちろんそれもまた真実なのだが、それ以上に私は「小説を書きたいから」書いているのだ、と読み終わった後再認識した。
小説を書くのはきわめて個人的で、精神的で、身体的な行為である。
小説を書くことは自分を語ることだし、自分の人生や内面を掘り下げて考えることで、または世界に関心を持つことでもあり、すなわち「生きる」ということだ。
小説を書くのに理由はいらない。生きるために書く。書くために生きる。
そんな思いが、私の胸にこみあげてきた。
まさに「紙上小説講座」の本書は、小説家志望の方はもちろん、小説を読むのが好きな人、小説教室が気になっている人、自分の人生に向き合いたいすべての人におすすめの1冊です。
本を読み終えて、この高まったモチベーションがずっと続けば執筆は継続できるだろうな、と感じた。
でも、根本先生・他の参加者からの批評とともに実際の教室の雰囲気を実感したい気持ちも湧いてきたので、今書いている作品が完成したら根本先生の小説教室に行ってみたいな、と思います!
まずは、毎日コツコツ書く。読む。考える。やっぱりこれに尽きますね。
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