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なまえのない感情たち

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今までの小品たちを集めました。 ひっそりと読んでください
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#小説

ミニマム賞味期限

インスタグラムに更新するたびに、たくさんのいいねと「憧れです」のコメントが届く部屋。 シ…

moon
3年前
19

金魚

浴槽の中で泳がせる指先。 小さな爪にちょんと乗せられた紅いペディキュアが金魚の背びれみた…

moon
4年前
28

揺らぎ

ぴったりと合わさらないそれが好きだった。 ぽってりとしたかわいいあの子の唇が私に被さると…

moon
4年前
41

慰む

生温い風に少しだけ湿り気が出てきたら、一刻と夜が迫っている報せだ。 それでも初夏の夕時は…

moon
4年前
33

仮面

あいつさ、今度彼女と結婚するらしいよ。 背が高くて面長ですっと切れ長の目をしていて、涼や…

moon
4年前
62

海水を飲む

膝を擦りむくと誰かが大丈夫?と言ってくれる。 擦りむいた傷口から血が出てると誰かが慌てて…

moon
4年前
21

罪 #幸せをテーマに書いてみよう

ぼくは罪を犯しました。 今、きみが泣いているのはぼくのせいなのです。 かわいそうに。きみは不幸にも毎日涙を流して暮らしています。 幸せとは、何も知らないことだときみは言っていました。 何でも知りたい、どれだけでも欲しいという、欲望にまみれた周囲の人間を軽蔑しながら生きてきたぼくです。 恋なんて知らなければ、目が会うだけでぼくの体温をカッと上げるきみの一挙一動にぼくの心臓は揺れない。 愛なんて知らなければ、誰かの温もりに触れることなく毎日が過ぎていっても、ぼくは透明人間になっ

ミネラルウォーター

酷く喉が乾いて目が覚めた。 カーテンの隙間から、昨夜激しく降っていた雨は、もう止んでしま…

moon
5年前
16

わすれもの

「今ならわたし、この一杯のリキュールで酔ってしまえる気がするわ」 ふっと一瞬だけ目線を合…

moon
5年前
11

オルゴール

ギギ…と軋んだ音を立てて小さな木箱を開けた。 甲高く半音ズレた「月の光」が小さな部屋に駆…

moon
5年前
17

冷酒

「今日もきみの料理は美味しいね」 そう言って微笑むあなたの笑顔がわたしは好きだった。 こげ…

moon
5年前
15

散ってゆくけれど

「もうすぐサクラもお終いだねぇ。きっと、今夜の雨で全部散ってしまう。」おばあちゃんは、縁…

moon
5年前
4

知らない。

だから心の扉だけは固く戸締りしていたのに。 ひとり、しんとした部屋で夜を迎えるのが少し…

moon
5年前
8

午後15時の紅茶

基本のステップなんて、アン・ドゥ・トロワ 先生のカウントが無くても簡単に踏めてしまう。 口ずさむメヌエットも踊るように指が勝手に鍵盤を舞うのに任せてしまえばいいの。 日が傾くリビングでティーカップを見つめて ただいま、と帰ってくるのを待つ静寂 この時間は、時計の長針の足取りも重い もしかしたら、このままずっと針は4をさしたまま進むのをやめてしまうのかも。 そんな期待を裏切って、冷めて湯気を出さなくなったティーカップの影がさっきよりも少し長くなった。 いつからだろう。感じ