「旅そば」万歳! 五枚目 こんにゃく蕎麦
無類のそば好きを自認するH助が、旅先で出会ったそばについて書き綴るのがこの連載です。ただし、当方、ウンチクの多いそば好きではなく、ただ単にそばを食べるのが好きという輩。偶然出会ったその地方ならではのそば(=旅そば)を、のどごし良く紹介していきます。
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山形県の楢下宿で出会った
ユニークな蕎麦?
何やら最近は美容と健康のために糖質制限なるものが注目を集めているらしい。少々気になったので調べてみると、蕎麦というのはかなり糖質が高いようだ。その喉越しの良さに負けて毎日食べていては、BMI(肥満度指標)の値も下がらぬというものか。
そんな、私と同じように?体重増加が気になる方のためにおすすめしたいのが、東北は山形の楢下宿で出会った「こんにゃく蕎麦」だ。
実は今回の旅、このこんにゃく蕎麦が目的だったわけではない。羽州街道の宿場町として栄えた歴史をもつ楢下宿(ならげじゅく)には今も茅葺きの家が残っていて、風情ある街道風景を見ることができると聞いたのである。失われつつあるノスタルジックな情緒を感じたくて、一路山形へと向かったのだ。
果たして、楢下宿には茅葺の家がしっかりと残っており、周囲の素朴な田園風景とあいまって、静かだが満ち足りた時間旅行を満喫することができた。そして、もう一つ、予期せぬ旅の収穫となったのが「こんにゃく蕎麦」である。
楢下を散策中、昼飯を食べようと入ったのが「こんにゃく番所」というお店だった。実は、この店を運営している「(株)丹野こんにゃく」さんは、楢下を拠点にこだわりのこんにゃく商品を長く作り続けている、知る人ぞ知る超有名会社だった。
そもそも、山形の食生活とこんにゃくは切っても切れない関係で、山形市はこんにゃくの消費量が日本一。名物の「芋煮」や「玉こんにゃく」をはじめ、山形の生活になくてはならない食材なのだそうだ。そのこんにゃくにこだわり続け、こんにゃくを使った懐石料理やスイーツ等を開発して商いをしているのが(株)丹野こんにゃくだった。
こんにゃく番所の長屋門のような荘厳な入り口を入ると、左手奥に食事処があった。
[こんにゃく番所入り口]
[こんにゃく茶屋]
メニューを見ると、こんにゃく懐石なるものがある。コースの締めには、こんにゃく粥かこんにゃく蕎麦が選べると書いてあった。こんにゃく蕎麦、ですと。こりゃ珍しき一品。迷わず、こんにゃく蕎麦のあるコースを頼んだのだった。
[こんにゃく懐石献立]
このこんにゃく懐石、次々とこんにゃく創作料理が出てくる(当たり前だが)。イカ刺し風こんにゃく、蟹とこんにゃくテリーヌ、こんにゃくの赤ワイン煮……斬新かつユニークなこんにゃく料理がわんさか出てくる。その数10品以上。こんにゃくで作ったものだと聞くと、味はどうかと思われるかもしれないが、これが予想以上にうまい! どの料理もしっかりとこんにゃくが主張しているのだが、その主張をいなすことなく、ほんのわずかな他の食材と見事な味のハーモニーを奏でている。
[こんにゃく懐石(一部)]
そして、いよいよシメのこんにゃく蕎麦。蕎麦粉に蒟蒻を練り込んだもので、見た目はまったく普通のそば。汁を飲み、いそいそと麺をすすってみると、これまた素晴らしい喉越し。こんにゃくのせいでよりツルツルとして喉ごしに磨きがかかっている。つゆも、東北らしいしっかりした味の汁だ。あっという間に食べ終わる。
もちろん、普通のそばのようにそばの香りを楽しむということはできないが、それでも喉越しや歯触りは、本物のそばと変わりない。シメとしてちょうどよく、ユニークで心に残る一杯となった。
[こんにゃく蕎麦]
食後、サービスとして出してくれたのが、なんとこんにゃく焼き鳥。ネギは本物だが、他はすべてこんにゃく。食感は、まさしく焼き鳥のそれであった。お見事。
[こんにゃく焼き鳥]
こんにゃく番所
〒999-3225 山形県上山市皆沢字諏訪前608-1
TEL023-674-2351