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和菓子にみる桜

先日私のおばあちゃんがひなまつりの和菓子を贈ってくれました。
開けてみると2種類のお菓子がひな祭りの箱に丁寧に収まっていました。
嬉しくてきちんとお皿に盛り、味わっていただきました。
どちらもすごくおいしくて幸せな気持ちになりました。
おばあちゃん本当にありがとう。

そのお菓子に同封されていた和菓子屋さんの冊子を見ながら、和菓子は季節を感じさせてくれるお菓子だなとしみじみ思いました。
もう三月に入り少しずつ春の気配が感じられるようになっていますね。春といえば桜を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
そこで今日は和菓子にみる桜について書いていきたいと思います。

和菓子の季節感は2つある

さっき和菓子は季節を感じられると書きましたが、和菓子の季節感というのは実は二つあります。

一つ目は「その季節にしか作られない菓子」です。
このお菓子は季節の訪れを告げ、その季節が過ぎると売られなくなるもので、その季節にしか食べることができません。
年中行事などと関わりが深いものも多く、その季節ならではの素材を使っているので香りや味から季節を感じることができます。

二つ目は「その季節を表現した菓子」です。
こちらのお菓子は形や色合いなどによって食べる人が季節を感じられる様に作られています。季節が違くとも同じ素材で作られることもあり、どちらかといえば見た目で季節を感じるお菓子です。

今回はこの分類の中から一つずつ桜にまつわるお菓子を見ていきたいと思います。

桜餅

桜色のお餅が塩漬けされた桜の葉に包まれた春らしいお菓子。桜の葉からは春を感じるとてもよい香りがしますよね。分類的にいうと桜餅は「その季節にしか作られない菓子」タイプです。
そんな桜餅ですが関東と関西で形が違います。

関東風のものは「長命寺」と呼ばれていてあんこが桜色のクレープのような生地にくるりと巻かれた形をしています。

関西風のものは「道明寺」と呼ばれていて、こちらは普通のお餅のような見た目をしています。

桜餅の起源はどちらかというと関東風「長命寺」の方です。
江戸時代に長命寺というお寺の門番が木から落ちた桜の葉をみて「これを何かに使えないだろうか」と考え塩漬けにしました。その葉でお餅を包み、売ったところ、おいしく人気がでたというのが桜餅の始まりのようです。
その後その人気が関西に伝わり、道明寺粉を使った関西風「道明寺」が生まれたと言われています。
皆さんはどちらがなじみのある桜餅ですか?

関東風、関西風と呼ばれているものの、現在ではどちらもよく売られているので両方食べてその食感の違いを感じてみるのも面白いですね。
ちなみに私はどちらかというと関西風「道明寺」の方が好きかなぁ。

桜の上生菓子

上生菓子とはお茶会の席で出されるようなお菓子のことです。具体的には練り切り、羊羹(ようかん)、こなし、求肥などの菓子を、「上生菓子」と呼びます。しっかりとして食べ応えのある、かつ口当たりが滑らかで味わい深い風味を備えています。こちらは「その季節を表現した菓子」タイプですね。桜餅の様に統一された形があるわけでは無く、様々な製法や素材を使い季節を表現します。
そのため同じ桜を題材とした上生菓子でもお店によって形も素材も違ってきます。同じお店でも毎年新しい意匠の上生菓子が売られます。
今回は百貨店に入っている和菓子店が今年桜を題材として作った上生菓子を見ていきたいと思います。

とらや

「手折桜」

「春を謳歌(おうか)するように咲く桜の美しさは、自分だけで賞美(しょうび)するには忍びなく、手で折って持ち帰りたい。」という気持ちは、桜を愛してやまない日本人の自然な感情であると思います。
日本人の桜への想いが込められたお菓子です。

「遠桜」

花見といえば桜の下をそぞろ歩いたり、宴を開いたりしますが、野山に点々と咲く桜を眺めるのもまた風情があります。遠くに見える桜の濃淡あるさまを、紅と白のそぼろで表しました。

とらやさんは近くで見る桜と遠くから見る桜をイメージした上生菓子ですね。桜を見る距離に着眼しているのが素敵だなと思います。

たねや

「花のたより」

春風の届けたひとひらの花は、ちいさな季節のたより。うす紅色の薯蕷煉切を、ふくよかな桜に仕上げました。

たねやさんは一片の桜の花びらをイメージかたどった練り切りです。桜色一色というわけではなく白から桜のグラデーションがとても美しいです。また非常になめらかな表面からは品を感じます。

鶴屋吉信

「里桜」

桜の中の一種である里桜をかたどったもの
京都市の花でもある

鶴屋吉信さんは里桜という桜一輪をかたどった練り切りです。まさに桜という形でとてもかわいらしい。花びら一つ一つの形が均一で惚れ惚れするほど美しいですね。

両口屋是清

花盛り

あちこちから桜の便りが届く頃、淡い花の色のこなしで白小豆こしあんを
包み木型で押して美しく咲いた花の風情を写すお菓子です。

両口屋是清さんは重なって咲いている桜をかたどった上生菓子になっています。桜は一輪でも十分美しいですが、重なって咲いている姿はさらに美しいように思います。賑やかな感じがしますね。

いろいろな桜を題材にした上生菓子を見てきました。どのお菓子も本当に美しかったですね。
眺めているだけでうっとりしてしまいます。これはもう芸術品の域です。
お店によって桜をどこから見ているのか、何輪なのかといった視点やお菓子の製法、桜色という色も濃かったり、淡かったりと全然違いました。こんなに違うとは。職人さんの技術や発想の豊かさに驚き、心を動かされました。

さて今回は桜にまつわる和菓子を見てきましたが少しでも春を感じていただけたでしょうか。今年もお花見ができるかどうか微妙なので和菓子で桜を愛で、春を感じるというのも素敵かもしれませんね。
私もなにか買って一服してみようかなと思っています。

ではまた。

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