インディフィニト・ノート 12話
<前話までのあらすじ>
安藤は夢の中で高校時代の因縁があった里中の事を思い出していた。普段、
あまり感情を表に出してこなかったタイプだけに後先考えずに下級生の教室に殴り込みにいくという手法を取ってしまった。定番の屋上への呼び出しが
終わると水泳対決で決着を付ける事となった。
1話は<1~5P>こちらから
11話は<51~55P>こちらから
12話<56~60P>
決戦の日は、確か2009年の夏休み前の金曜日だった気がする。正確な日付は同じクラスで仲良かった孝子ちゃんに聞けば分かると思う。記憶力が良い事はもちろんだが日記を毎日付けていると聞いた事がある。
久々の本気モードという事もあって秘密の特訓を決戦日の4日前から3日間、毎日、3時間程、知り合いの水泳教室に通い詰めた。当日前は、たまった疲れを超回復させるべく、専門家のトレーナーの指導の元で入浴と睡眠でのリカバリーに注力した。
もちろんマッサージにも余念は無かったし夜寝る1時間前は携帯電話等のブルーライトを浴びる事を禁止して過ごしていた。エースにまで上り詰める直接の原因となったのは他校のライバルの存在だった。タメ歳でプライベートは、駄菓子屋のお好み焼きを一緒に食べる仲になっていた程だ。
話してるうちにライバルの幼なじみの女子とも仲良くなった。実は、凄く好きだったけど最後まで言い出せなかった。
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高校1年の夏から知り合った二人だけど、高校2年の夏でライバル関係にあった和真が深夜のランニング中、交通事故に遭遇して帰らぬ人となった。
ひき逃げで救急車を呼ばれる事もなく、発見された時には息をしていなかったそうだ。現場付近のガードレールは損傷も酷く車体の破片が複数、地面に散らばってたらしい。
その中の特徴的な部品から車両を割り出す事に成功。現場近くの修理工場
に損傷が酷い車が持ち込まれて緊急で修理して欲しいと割り増しで依頼を受けた事が判明した。
依頼してきた男は千鳥足で息が酒臭かったそうだ。呂律も回ってないので事件の可能性を感じたが断ったら何されるか分からなかったので一旦、車を預かる事にしたらしい。
翌日、その工場に警察が事情を聞きに行った際、近所で、ひき逃げが、あった事を聞かされた。店主は車両が一致した事を受けて預かっていた車を見せて車検証から身元がバレて身柄を拘束する事となった。
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警察に出入りしてる関係者(安藤の親戚)から聞いた話によると事故を起こした男は、当日、彼女に振られてヤケ酒だったらしい。なので別れた彼女を見付けだして責める訳にも行かず、行き場の無い怒りを何処にぶつけて良いのか分からなかった。
幼なじみの紗世ちゃんも同じ意見だった。付き合ってる状態なら文句の一つも言って、やりたかったって突然、自宅を訪ねて来て入って来るなり一晩中、抱き着いてきて胸で泣きつかれた事があった。
もちろん好きだったから和真には悪いと思いながらも、どっかで進展を期待していた所はあった。でも実際は、何の進展もなく、告白するタイミングも与えて貰えずに帰り際、友達としてしか見れないと勝手に振られてしまった。
気分は最悪で俺の方が泣きたいくらいだよと大声で叫びたかった。青春漫画なら絶対に付き合う流れだろうという淡い期待は見事に打ち砕かれてしまう。
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しばらく女性不振になった。その後、葬式で顔を合わせたきり、紗世ちゃんと和真の家族ともに疎遠になっていた。和真の事は本当にショックで心の中にぽっかりと穴が開いた状態になっていた。
元々、そんなに勉強が好きだった訳ではなかったので部活に行くと嫌でも和真の事が頭をよぎるので退部させて欲しいと顧問の先生に退部届を出した事があった。
顧問は黙って受け取ったと思ったら「私が一旦、来年の春まで預かっておくから、それまでは席だけでも置いておけ。結論を出すのは早すぎる」と言われて少し感動した記憶がある。
今だからわかる。顧問の先生なりの優しさだったんだろうと思った。茶髪に染めて、お約束の不良の真似事(喧嘩)もやってみようとゲーセンにたむろしているリーゼント頭の不良を探しても見当たらなかった。
兄貴の私物のVHSで録音されたヤンキー映画の影響を受けすぎてしまったので友達に思いっきり笑われた事があった。
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対決の当日は雲一つない青空で無風だったのは良く覚えている。話し合いの結果、対決の時間は午前11時に決まった。二人だけの対決なので大袈裟にしたくないという想いから予選の時間に合わせていた。
平日の昼休憩に開催では無いので生徒の応援も控えるだろうという読みだった。がしかし、その当ても大きく外れる事となった。里中は、1年生の中
でもトップクラスのイケメンなのだ。転校生ではあったがファンクラブが設立される程、人気が高かった。
切れ長の瞳に長いまつ毛、白粉を塗ったら女形を出来る程、整った顔立ちをしていた。ファンクラブ総出で、学校を抜け出すというのはマズイという事になり、代表して里中のクラスの女子半分が参加するというので落ち着いた。
もちろんチェキ(インスタントカメラ)で相当数の写真を撮るという条件付きだった。チェキの最大の魅力は何と言っても撮ったその場でプリントアウトできる事に尽きる。女子に大人気だった。
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