『「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた「生きづらい」がラクになるメンタルを守る仕事術&暮らし方』を読んでみた
こんにちは。
ものくろです。
はじめに
今回は、小鳥遊(2024)『「発達障害」「うつ」を乗り越え@小鳥遊がたどりついた「生きづらい」がラクになるメンタルを守る仕事術&暮らし方』ナツメ社を読んでみての感想となります。
本書を選んだきっかけ
僕自身は発達障害の当事者ではあるものの、今までこのようなハウツー本を手に取ることはありませんでした。また、普段から自分なりに工夫したり、Twitterなどで情報収集をしているため、あえてこのような本を手に取る必要はないと思って敬遠していたのですが、一度立ち止まって自分を見つめ直してみる必要があり、本書を手に取ってみました。
「大人の発達障害」という言葉を耳にするようになってから、もう10年以上は経つように思いますし、巷にも発達障害関連の本は溢れているように感じます。とは言いつつも、その中身にはだいぶ偏りがあるように感じていて、実際には自己啓発系の本や、医学モデルに基づいた教科書的な本、当事者研究系の本などが多く、意外と具体的な対策について書かれた本は少ないように感じています。
昔話をすると、大学院生のときにいた研究室の先生がおっしゃっていた(ボヤいていてた)話なのですが、どれだけ脳科学の研究が進んでエビデンスが蓄積された行ったとしても、具体的にできることは多くの場合筋トレのような地道なトレーニング(この場合、脳トレ?)、工夫の積み重ねでしかないと思うというお話をされていたことがあるのですが、本書を読んで「まさにそれだ!」と感じました。もしもこの先ずっと未来で、脳科学が劇的な進歩を遂げ、「ワーキングメモリが低い→脳に外部メモリを増設する」的なことが可能になるならば、話は変わるのかもしれませんが、それはもはや医療ではなく、人体改造、チューンナップの域であり、技術的にも倫理的にも難しいのではないかなと思います。ですので、この先少なくとも100年ぐらいの期間は、結局ヒトの個体差が埋まることはなく、各々が自分なりに工夫して生きていかなければならないことに変わりはないのではないかと思っています。
そういう意味で、本書は知っている人、普段から実践している人からすると、とても基本的で当たり前のことしか書かれていないと感じるのかもしれませんが、そういう言わなくても分かるでしょ!当たり前でしょ!的な、いわゆる暗黙の了解を明文化している点で優れている本だなと感じました。本書は、読みやすさを重視したアッサリとした内容となっているため、正直机上の空論というか、だけど実際問題どうすればいいのさ?と感じることもあるだろうなとは思うのですが、それでも賛否両論ありそうなこのテーマによくぞ向き合ってくれたなと感じました。
本書について
本書は、「仕事の困りごと編」と「暮らしの困りごと編」の2部構成となっており、見開き2ページで各テクニック、対策法を紹介しています。
「仕事の困りごと編」では42個の対策法、「暮らしの困りごと編」では43個の対策法を紹介しています。
「仕事の困りごと編」で印象に残ったこと
以降は、「仕事の困りごと編」を読んで特に印象に残った項目について列挙していきたいと思います。
仕事あるある 1 「一つのことだけに集中してしまう」
仕事あるある 3 「急ぎじゃない仕事で勝手に自分の首をしめてしまう」
仕事あるある 5 「なぜか残業してしまう」
電話対応 7 「かかってきた電話の内容をメモしきれない」
ケアレスミス 9 「メモの内容があとからわからなくなる」
メール対応 12 「メールの返信をズルズル先送りしてしまう」
メール対応 13 「書き終えたメールがなかなか送れない」
タスク管理Step2 17 「なかなか仕事に取りかかれない」
タスク管理Step2 19 「進捗報告が苦手」
タスク管理Step3 21 「自分の仕事と相手の仕事の区別がつかない」
タスク管理Step3 22 「関係のないことにまで責任を感じてしまう」
タスク管理Step3 23 「仕事の優先順位がわからない」
タスク管理Step5 27 「仕事の同時進行が難しい」
各Step実行後 28 「進捗チェックを忘れてしまう」
各Step実行後 31 「やることが多すぎてやる気が出ない」
コミュニケーション 32 「指示内容の理解に時間がかかる」
コミュニケーション 33 「質問の意図がわからないと言われる」
コミュニケーション 35 「「いい恰好」をしてしまう」
コミュニケーション 36 「話が長いと言われてしまう」
メンタル 40 「休みの日にも仕事のことばかり考えてしまう」
メンタル 41 「どう思われるかが気になって仕事が進められない」
メンタル 42 「一人で抱え込み過ぎる」
厳選したつもりが、ほとんどの項目を列挙してしまいました。さすがに全てを解説する訳にもいきませんので、一部だけ紹介させていただくと、
タスク管理Step2 19 「進捗報告が苦手」
対策法は、「進み具合を「見える化」する」とのことです。例えば、取引先に年賀状の手配をするという仕事を与えられた場合、
「1、デザインの決済をもらう 2、住所整理 3、印刷 4、手書き挨拶文を添える 5、郵便局で投函」という手順になるとします。
僕としては、手順1から手順5までの各々の割合が異なるため、正確なことは分からないのではないか?などと考えてしまい、結局進捗報告を蔑ろにしてしまうと思うのですが、完璧でなくとも概算をつけることが、お互いにとって大切なことなのではないかと感じました。また、まずは大雑把な概算をつけることで、やっているうちに感覚が分かってきたりもするものだと思うので、まずは完璧を目指さすに「見える化」してみるというのはとても有効な手段だと思いました。
メンタル 41 「どう思われるかが気になって仕事が進められない」
対策法は、「上司へ報告を入れつつ、こうと決めたら迷わず実行!」だそうです。コツは「周囲の人はこう考えるかも」はイリュージョンだと思うことだそうです。あらゆる可能性を考慮することは、確かに大切なことではあると思うのですが、マーク・ザッカーバーグ氏の"Done is better than perfect .(完璧にするよりもまず終わらせた方が良い。)"と言うように、まずは終わらせる精神で取り組むことは、本音としては受け入れ難いことだとしても、少なくともビジネスの上では大切なことなんだろうなと思いました。
「暮らしの困りごと編」で印象に残ったこと
以降は、「暮らしの困りごと編」を読んで特に印象に残った項目について列挙していきたいと思います。
ケアレスミス 1 「出かけるときに忘れものをしてしまう」
ケアレスミス 2 「肝心なときに大切なものが見つからない」
ケアレスミス 3 「なんだかわからないけど遅刻してしまう」
ケアレスミス 4 「予定を立てても遅刻してしまう」
ケアレスミス 5 「公的機関からの郵便物をスルーしてしまう」
環境調整 6 「部屋の片づけに取りかかれない」
環境調整 7 「片付けの優先順位がわからない」
自己管理 11 「お金を使い過ぎてしまう」
自己管理 17 「身だしなみを整えるのに時間がかかる」
コミュニケーション 24 「謝りグセがどうしても抜けない」
コミュニケーション 25 「話が一方的になってしまう」
コミュニケーション 28 「話がくどいと言われる」
メンタル 31 「無理をして頑張ってしまう」
メンタル 32 「没頭すると疲れが認識できない」
メンタル 33 「予定を詰め込み過ぎてしまう」
メンタル 34 「ストレスのサインに気づかない」
メンタル 35 「やることが多いと気ばかり焦ってしまう」
メンタル 37 「劣等感に苛まれる」
メンタル 38 「落ち込みのループから抜け出せなくなる」
メンタル 40 「0か100か、白か黒かで自分を追い込んでしまう」
こちらも厳選したつもりが、ほとんどの項目を列挙してしまいました。一部だけ紹介させていただくと、
ケアレスミス 1 「出かけるときに忘れものをしてしまう」
自分もそうなのですが、カバンの数が多いとついつい忘れものをしてしまいがちです。対策法は、できるだけカバンの数を少なくする、用意できる必需品は全てのカバンの中に入れておく、になります。
オシャレや気分転換、用途に合わせて複数のカバンを用意したくなる気持ちも分かるのですが、ものを移し替える際に移し替え忘れたりして、気づいたら「あれ、入ってない!」となりやすいため、できるだけカバンの数を減らすことは有効だと思います。これは自分も以前から取り入れていたことなので、汎用的な対策法なのだろうなと思いました。
メンタル 40 「0か100か、白か黒かで自分を追い込んでしまう」
対策法は、「よかった出来事を思い出して思い切り調子に乗る」とのことです。僕は自分を自分で褒めることに抵抗感があり、普段はなかなか実行できていないのですが、多少は役に立つかもしれないなと感じました。
というのも、最近流行りのこっちのけんとさんというアーティストの曲に「死ぬな!」という曲があるのですが、その曲の歌詞の中に「願い事3つ考えろ」という一節があります。辛いとき、悩んでいるときにポジティブなことを考えるのはなかなか難しいことかもしれませんが、そんなときこそこういう小さな足掻きが意味を持つのだろうなと最近思うようになりました。
まとめ
本書が抱えるジレンマ
本書は「発達障害」を対象にした本ではありますが、内容としては発達障害に関わらず、仕事、暮らしに困りごとのある人であれば、多かれ少なかれ役に立つ内容なのではないかと感じました。
発達障害は、医学モデル、社会モデルなどの視点次第で見え方が大きく変わってしまう障害だと思います。このようなライフハック本は、社会モデルの視点から見ると、発達障害で困っている人だけが工夫して社会の側に合わせなければならないのは不公平なのではないか?社会も変わる必要があるのではないか?、など様々な問題を抱えているように思うのですが、それは事実だと思います。ただ、社会はそう簡単に変わるものではなく、「諦めなさい!無駄だ!」と言う訳ではありませんが、少しでも当事者の人が生きやすくなるのであればそれに越したことはないと思います。
現実的な話
発達障害、うつ病などへの最も効果のある治療法は、環境を変えることだと言われています。言い換えると、自分がどうしても適応できない環境にいる限りは、このようなテクニックだけでは対処できないであろうということです。と言っても、だから無駄であると言いたい訳ではなく、困難へのアプローチはいくつもあり、そのうちの一つがこの本で紹介されているようなテクニックであるということです。
おわりに
今回は以上となります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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