8歳のボクが考えた不思議な話【あべこべ時計】
ある中古屋にセールスマンが商品を仕入れにやって来た。
セールスマンが、何か売れそうものはないかと探していると、鎖が付いた懐中時計を見つけた。
その懐中時計は、金色に輝いていて、ふたの内側に鏡が付いていた。
しかも、針が反時計回りに動いている。
「うわー、なにこれ! こんな懐中時計初めて見た!」
こんな珍しい懐中時計には二度と出会えないと思い、お店の人のところに懐中時計を持っていって、お金を出した。
すると、「それは売り物じゃないから戻してくれ!」と、お店の人がすごい勢いで何回も言ってきて、セールスマンはビックリした。
でも、言ってることとはあべこべで、その手はレジに値段を打ち込んでいる。
「えっ、売ってくれるの? えっ、どっち?」
セールスマンが戸惑っている間に、お店の人は嬉しそうにニコニコしながら、紙袋に懐中時計を入れて普通に売ってくれた。
「えーっ、何だったんだろう? まあ、懐中時計を買えてよかった」
そう思いながら、セールスマンが自分のお店に行こうとしたら、なぜか足が勝手に動いて真逆の自分の家に帰ってきてしまった。
何がどうなっているのか自分でもよくわからないから、気持ちを落ち着かせるために、とりあえず、テーブルの上にあるミカンを食べようとした。
すると、手が勝手に引っ込んでしまう。
「あ、あ、あー、取れない! なーんでー!」
他にもあべこべなことは続いた。
乗ろうとしていた電車を乗らずに見送ったり、野菜を買おうとしたら肉を買ってしまったり・・・
そんな日々が続いていくうちに、ふと気が付いた。
「あっ!そういえば、あの懐中時計を売っていたお店の人も、言うことがあべこべだったなぁ。 もしかして、この懐中時計を持っているから? ボクは、やることがあべこべだ・・・」
そんなことを考えていたら、さらに気が付いてしまった。
「お店の人は言うことがあべこべ・・・ということは、この懐中時計を本当はどうにかして売りたかったのか。 今ごろお店の人は大喜びだな・・・」
セールスマンは、とんでもないものを手に入れてしまって、途方に暮れていた・・・
あなただったら、あべこべ時計を買う?
買わない?
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