伝わる文章の書き方
先日、ライターとして、伝わる文章の書き方について講演した(内向けではあるが)。
新聞記者と現在のwebライターとの経験から自分自身で編み出した内容であり、一般的な文章術全てを触れている訳ではない。文章を書く時に気を付ける部分を挙げている。
しかしながら、素性も実績もよく分からないwebライターが、SNSで主張する文章術よりはまともだと考える(情報商材ぽいのもあるので)。
その講演で使用したレジメを加筆修正し、ここに記しておきたい。
1.文章全体の構成方法について
➀伝えたい内容を最初に書く
読者は文章初めの三行ほどで読むかどうかの判断をする。面白い内容でなければ文章から離脱する。
→初めの段落で伝えたい内容を書き、興味、関心を持ってもらう。
②結論から先に書く「PREP法」とは
結論(Point)、理由(Reason)、具体例(Example)、結論(Point)の順に文章を構成する手法。
→一段落目の結論(Point)の文章が肝要で、その文章さえしっかりと書ければ、後は多少の読みづらさがあっても自然と流れていく。新聞ではリード記事を指す。一段落目は簡潔かつ具体的に書く。
2.一段落目(結論部分)の構成方法について
5W1H(Whenいつ、Whoだれが、Whereどこで、Whatなにを、Whyなぜ、Howどのように)の6要素を念頭に置いて文章を書く。内容によっては必要のない要素もあるが、読者に伝えるべき点やその優先度を判断し、必要に応じて内容をかみ砕き、理解しやすく書く。
【例文】
×令和5年4月度総務会議が行われ、テーマは「今年度スローガン・年間計画・総務方針等の説明」で、目的は「総務メンバーの初顔合わせを行い、親睦を図るとともに今年度スローガンならびに年間計画、総務方針を共有し理解を深めることでこれから始まる1年間の総務活動が円滑に行われること」で、自己紹介もあって充実した会議だった。
→①何月何日に開催されたのか(When)②何人参加したのか(How much)③どこで行われたのか(Where)④どのようになったのか(How)⑤なぜ(Why)の部分が目的をそのまま書き写しており、長文で読みづらい。総じて具体性に欠け、ぼんやりとした印象を与える文章。
○令和5年4月度総務会議は4月19日、富山市の▲▼ビルで開かれ、参加した11人は、鈴木総務課長から今年度スローガンや総務の活動方針などの説明を受け、今年一年の役割を理解するとともに、自己紹介を通じてメンバー同士の親ぼくを深めた。
→いつどこでだれと何をしたのか、そしてどうなったのかが理解しやすい。
3.二段落以降の文章展開について
内容にもよるが、四段落で構成する場合、二段落目は一段落目の詳細を時系列に沿って書く。または一段落目の理由。三段落目は二段落目の理由についての事例を示す。もしくは一段落目の背景。四段落目に再度結論を書く。
※これについては本当に内容によりけりなので、まずは心の赴くまま書けばよいのではなかろうか。
4.文章の技法について
①句読点の使い方を意識する。
・読点「、」は文章を読みやすくするために読者を思いやって使う。基本的には、話す時に息継ぎするリズムと同じと捉えて打つ。読点を多用して文節を区切りすぎるとつっかえるし、逆に読点のない長文は読みづらい。そのほか、主語と述語の間や、誤読されそうな部分、強調したい部分に使用する。
【読点多用の例文】
卒業式の、3分間スピーチで、流す、曲は、吉川晃司の、「モニカ」だ。
〔問1〕下記の文章に読点を打って読みやすい文章にして下さい。
卒業式の3分間スピーチで流す曲は吉川晃司の「モニカ」だ。
・長文になる場合は、句点「。」を使って文章を一度締める。読点を何度も使って一文にすると文章が間延びして読みづらくなり、理解度も低くなる。一つの文章に一つの意味を持たせる「一文一義」を意識する。
【例文】
×城址公園芝生広場では、「城址アスレチックパーク」と題したイベントが催され、「ラグビーワールドカップ2023フランス」開催にちなみ、ラグビーのタックル体験をはじめ、ビーチフラッグやけんすいなどの競技、身体に障害のある方でも楽しめるスポーツ「コーンホール」などを設え、子どもから大人、老若男女問わず多様な方が参加できる内容となっている。
〔問2〕上記の文章に句点を打って読みやすい文章にして下さい。
・かっこ「」の使い方を考える。かっこは会話部分、強調したい部分、固有名詞に使用されるが、一文に何度も「」が出てくると読みづらさを覚える。
【例文】
×事務局広報の活動は、「Facebook」や「Instagram」、「Note」の各種SNSページの更新、さらに広報誌「青雲」の作成である。
→事務局広報の活動は、FacebookやInstagram、Noteの各種SNSページの更新、さらに広報誌「青雲」の作成である。
かっこをつける意味を考える。固有名詞で付けているのであれば括弧が連続するためバランスが悪い。固有名詞を同列で並べているのであれば、強調する意味合いはないので、SNS活動を説明する文の括弧を外し、文の脈絡から「青雲」のみに付ける。
②助詞(「~の」、「~が」「~を」、「~に」等)を3回以上連続させない
連続すると文章が間延びし、幼稚な印象を与える。
【例文】
×私の家の部屋の机の中には、入会当時の手帳があります。
〔問3-1〕上記の文章を読みやすいように直して下さい。
→
×田中君に急にお願い事をするときにいつも変に気を遣う。
〔問3-2〕上記の文章を読みやすいように直して下さい。
→
③同じ単語が続く際、類語などを使用して言い換える
連続すると読者が混乱する。語彙力のない文章に自然と映り、稚拙さが出る。
【例文】
×港まつりのハイライトといえば「よさこい祭り」だ。ド派手な衣装をまとい、濃い目の化粧をほどこした踊り手が、鳴子(なるこ)を楽器のように鳴らしながら激情的に踊る姿は、見る人に情熱と高揚感を与えてくれる。2023年は県内のチームはもちろん、本場高知や東京、新潟など県外からも総勢55チームが出場し、踊る。9月23日大通り等を踊り、翌24日は教育会館や公園特設ステージで踊る。心を燃やしてまつり気分を満喫したい方は、是非ともご覧いただきたい。
〔問4〕( )を言い換えて埋め、読みやすい文章にして下さい。
港まつりのハイライトといえば「よさこい祭り」だ。ド派手な衣装をまとい、濃い目の化粧をほどこした踊り手が、鳴子(なるこ)を楽器のように鳴らしながら激情的に( )姿は、見る人に情熱と高揚感を与えてくれる。2023年は県内のチームはもちろん、本場高知や東京、新潟など県外からも総勢55チームが出場し、力のこもった( )を披露する。9月23日は大通り等を( )、翌24日は教育会館や城址公園特設ステージで( )。心を燃やしてまつり気分を満喫したい方は、是非ともご覧いただきたい。
④多用しがちな「という」、「こと」
「という」、「こと」は、思った言葉をそのまま文書化した際に出てくる。文章が稚拙でまどろっこしくなる。書き終えた後読み直し、「という」や、「こと」を入れた部分に着目。この二語は、削除や言い換えが可能。使用は1回程度にしておきたい。
【例文】
×広報の浸透のために私が始めたことは、原稿の校正である。元記者という経験を駆使して活動の一助になることを目的に引き受けた。
→広報の浸透のために、私は原稿の校正を始めた。元記者の経験を活かして広報活動の一助とするため引き受けた。
⑤単調な文になる「行う」
「行う」は動詞で、便利なため使いたくなる。しかし、使っていくうちに文中に何度も「行う」が出てくるようになる。「行う」の連続は文章を単調にさせてしまう。多様な用語で内容を的確に表現すると読者に伝わる。「行う」はなるべく使用を避ける。
【例文】
×彼は部屋に入ると掃除を行った。その後、食事を行い、買ったばかりの小説の読書を行った。就寝前には、スマートフォンのゲームを行った。
〔問5〕( )内を違う表現の単語で埋めて読みやすい文章にして下さい。
彼は部屋に入ると( )。その後、( )、買ったばかり( )。就寝前には、スマートフォンの( )。
⑥文章が弱くなる「思います」、「思う」
「思う」、「思います」を文の最後に使うと、文章全体が個人的な感想との意味合いが出て記事の信頼性が弱くなり、説得性に欠ける。「だ」、「である」、「です」、「ます」と言い切る(※あくまでも記事の場合)。
⑦英語の横文字、略語は極力日本語に言い換える
自分では常識的に使用していても、読者には分からない用語がある。和製英語がその最もたるもの。格好つけたいのか、単にその文言を理解してないまま文書化しているのか、との印象を受ける。
読者ファーストで考える。
日本語に直すことで、単語自体が短くなり読みやすくなる利点もある。
【例】
マスト→必要
リスケジュール、リスケ→日程調整
プレゼン、プレゼンテーション→発表
スケジュール→日程
コミュニケ―ション→つながり、など
トークセッション→対話形式
ペンディング→保留
⑧業界用語、専門用語は使わない
業界にいなければ意味を知らない用語は使わない。
【例】
旅行業界用語…AIR(航空券)、HND(羽田空港)、BKK(バンコク)、FIX(予約完了)
警察用語…サンズイ(汚職)、タタキ(強盗)、ガサ(家宅捜索)、ゲソ(足跡)など。
⑨差別用語は使わない
基本的人権の侵害になる。使う側に差別意識はなくても、当事者にとっては重大な侮辱、精神的な苦痛、差別、いじめにつながる要因。使われた側の立場になって考える。
※差別用語を例に挙げると、NOTEのルールに反する可能性が高いので、知りたい方は共同通信社発行の「記者ハンドブック」をご覧ください(実際のレジメには記載)。
5.執筆後は必ず推敲する
伝えたい内容を文章に表した後は、考え抜いた頭も疲れているので一呼吸置く。冷静になって読み返すと、誤字や句読点の打ち方など、項目4で説明した文章技法の修正点に気付く。気づいた点から修正し、読み返す。
推敲は何度しても良い。最後は声を出して文章を読み、つっかえる、引っかかる感覚がなくなれば良い。
→自分で理解できる文章を作らなければ、読者は分からない。
6.まとめ
・読む人に思いを馳せる
・自分が伝えたい内容を、読む人の目線に沿って文章に表す
・文章は分かりやすく、やさしく、簡潔に
→全ては読者のために
※このレジメには問題が5問出てきますが、答えを知りたい方はコメントして下さい(いないか)。
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