ローズマリーと小田雅久仁『残月記』
本日の「なんちゃっていねい生活」特記事項はローズマリー・スチームの楽しみ、です。
庭で伸び放題になっていたローズマリーの刈り込みをやっと行いました。収穫した枝は乾燥させます。
まもなくやってくるストーブの季節に、この枝をやかんに入れて火にかけるのです。お部屋の空気がちょっとすっきりする、気がします。ま、気のもの程度ですけど。
さて、昨日の皆既月食は見事でした。
天文イベントといえば曇りにあたってしまうことが多い私ですが、昨夜はばっちり晴れてくれたおかげで赤い月を堪能できました。
いや、ありがたい。
ついでにアンドロメダ座の見つけ方も覚えたので、ますますうれしい一夜になったのでした。
月というと文学ではおなじみの主題ですが、近頃の小説だと小田雅久仁さんの『残月記』がありますね。
SF、幻想小説、ディストピア小説、分け方によっていろんな枠に入りましょうが、やはり月小説とするのが一番しっくりくる気がします。
ただし、三つの中短編に浮かぶすべての月は不穏にして不吉。どれ一つとして柔光に包まれてはいません。
特に圧巻なのは「そして月はふりかえる」における月の描写でしょうか。地球からは絶対に見えないはずの月の裏側が男に顔を見せた瞬間、男は人生のすべてを奪われ、絶望の世界に叩き込まれます。
タイトル通り月がふりかえるわけですが、その時の描写といったら! 宇宙的恐怖って、本当はこういうことを言うんじゃないかな。
本作における月は青白い夜の女王ではなく、圧倒的な不条理の象徴であり、残酷な人生を強制する暴君でもあります。こんな月を知ってしまったら、皆既月食もただ心穏やかに楽しむばかりでは済まなくなるかも。
というわけで、紹介は今日にしたわけですが、もし次の月食はちょっと趣向を変えて楽しみたいなら、ぜひ読んでみてください。怖いっすよ。