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「ほぼほぼ友だち」とアペルティーヴォ

普段から付き合いのあるシニョーラ(ご婦人)から、「クリスマス前に直接会いたいのだけど、いつなら会えるかしら?」という打診があったので、日時を約束して、彼女が指定するクリスマスツリー近くで会った。彼女が先に来て座って待っていた木製のベンチに腰をおろし、挨拶がてらしばし言葉を交わした後、「何か飲みに行きましょう!」ということになる。

彼女の名はバルバラさん。
元々はミラノ出身の方だが、子どもの頃からセカンドハウスがこちらにあってよく通っていたものの、ご主人が亡くなったことや、年を重ねてミラノでの生活ペースを忙しなく感じることもあり、2019年に全面的に引っ越しされたとのこと。その機会に、わたしが関わる機関にはじめて参加し、知り合ったのだ。
日本にも輸入されているイタリアのクリスマス菓子のパネットーネは元々はミラノ発だが、現在ではイタリア全国区。ミラノのあるバール・パスティッチェリアのパネットーネをクリスマスギフトでいただいた。約束をした際に、そういったことになるだろうことは予測していたので、わたしも手ぶらではちょっと……と、日本に関するものを中心に掻き集めて、即席で食品福袋みたいなものを用意して持参した。

午前11時頃、わたしたちは足を運んだバールでアペルティーヴォをすることにした(画像がそれにあたる) 。
apertivoアペルティーヴォとは、食前酒を意味するが、バールや家でアペルティーヴォをするとなると、ドリンクだけではなく、たいていスナック的な軽食のおつまみが付いてくるものだ。日本のガイドブックなどや情報番組などでも紹介されているとのことで、旅行でいらした方からも、「ぜひ、アペルティーヴォを経験したいんです!」という声を時々耳にする。
たいてい、ワンドリンクにおつまみが適当に付いてくるのがアペルティーヴォのセットで、5ー15ユーロぐらいの価格。

実は、わたしのアペルティーヴォ経験は多くない。
と言うのも、外食や家での食事会やパーティーでも、昼食・夕食ときっちり食すケースが多く、アペルティーヴォの余地があまりなかったのだ。
夕食を一緒にする予定の友人が、その前に夕方、他の人とアペルティーヴォの約束をしていると言うのも耳にしたことがあり、人と会う場合の機会にもなる。

ところで、わたしは、アペルティーヴォというものは、夕方の時間帯に1杯軽く飲む(アルコールでなくてもOKで、ノンアルコールでもアペルティーヴォはできる)機会かと思っていたが、ランチ前後の時間帯にもアペルティーヴォを設けているところもあることをこの時に知る。

バルバラさんは親世代で、わたしと同い年の息子さんがいるとのこと。
といっても、特には母のような存在と感じることもない。
それは、母性が感じられないということではなくて、もっと同等でフラットな感覚がするという意味で、現に、わたしたちは友だち言葉で話している。

日本食品を差し上げたら、どこで購入しているのかと聞かれ「、今度一緒にその店や東洋美術館に行かない?」と提案された。「あなたのスケジュールが分からないし、あまりずうずうしくなりたくないから、都合の合う時で……」と、控えめではあったが。

わたしのイタリアでの人との交際範囲/人付き合いの範囲を年齢で表すと、10代から80代までに及ぶ。

もちろんすべてが「友人」と言い切れるわけではなく、何かの目的や役割、もしくは、誰かの関係で出会ったりした場合は、わたしとその人の関係を第三者に説明する際に「友人」とは表現されないことがほとんどなのだが。
そうではあるものの、イタリア人の中には、年齢差や関係性に拘泥せず、いわゆる友だち同士のように振る舞う人がけっこういると思う。
まあ、そこはきっちり線引きしたいと思っている人だったら、ある程度のライン以上は踏み込ませないだろうし、踏み込まないのだろうけれど。

その一方で、「年齢の近い人とより友だちになるべき」と言う人もいる。
その理由に関してまでは、どの人も詳しく述べてはいなかったので、どういう考えがあってそう言ったのかは分からないのだが。
たとえば、それが子どもの場合は、発達段階で同じ年ぐらいの子どもとコミュニケーションを取ることで学ぶこともあるだろうし、小さい子どものいくつかの年の差は、一緒に遊んだり行動したりするのにも支障が出ることもあるかもしれない。
ただ、ある程度の大人になったら、友情を築くためには、同じぐらいの年齢であることよりは、お互いの興味・関心の一致や、生活環境や所属するコミュニティの類似、人としての相性やどのぐらいお互いに信頼がおけるか、許容できるか等、他の要素の方が重要であるように思える。
もちろん、年齢差による身体状況の違いで、同じことを一緒にできないこともあるかもしれないが、それ以外の活動を共にでき、何かをシェアできる関係であれば、友情は成り立つのではないだろうか。

バルバラさんは、普段は外ではコーヒーぐらいは飲むものの、ひとりではアペルティーヴォは他の人と一緒の機会で、それほど頻繁ではないので、それこそイベントごとになると言う。
わたしにとっても、それはほぼ同様である。

くすみピンクのニットに真っ赤なルージュ、シャンパンゴールドのマニキュア…とお洒落をしたバルバラさんとのアペルティーヴォは、日常の中でパッと花咲く楽しくキラキラしたひとときだった。

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Jacqueline
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