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失くしたシュシュと奉公するシュシュ
光射す 窓辺に座り 針仕事
シュシュのほつれを 繕う午前
シュシュとは何か?
男性ではその言葉に馴染みがない方もいるかもしれない。
シュシュは、髪を束ねる時に使うリング状の装身具で、多くはヘアゴム/ゴムを布などで包んだものである。
わたしは、このシュシュをヘアバンドと同じぐらいの頻度で使用するのだが、わりと紛失しやすいものでもある。
外で失くす時は、気付かぬうちに髪からするりと落ちてしまって、気が付いた時にはどこで失くしたかはっきり分からないケース。
今までに、日本で購入したものふたつ、イタリアで購入したものひとつを、どこか道で落とした経験がある。
しかも、そういったものに限って、まだ購入して間がなくあまり使用していない新品にほど近いものだったりするから痛過ぎる……
一番、惜しく感じたのは、東京・両国の江戸東京博物館のブックショップで購入した縮緬風の端切れを数種継ぎ合わせたデザインのもので、それは、イタリアではなかなかないものだ。700円前後だっただろうか。もし、日本輸入のものを販売しているような店で見つかったとしても、価格は三倍ぐらいはするかもしれない。
歯科医に行った帰り道でのことで、電車に乗ってそれがないことに気が付き、すぐさま降りて、今来た道のりをたどりつつ探したが、クリニックに着くまでには見つからず、その旨を受付で問い合わせ、施術を受けた部屋も確認したがなかった。
「着物のような生地でできていて、イタリアにはないタイプなの……」と嘆くわたしに、受付の方は気の毒そうな表情で「あぁ、それは……」と一言。
もうひとつの日本製のものは、手ぬぐい生地のようなタイプで生成り地に緑色で模様が入っているものだった。
家から駅に行く途中で落としたらしく、気が付いて、やはり同じ道のりを戻ったが、見つからなかった。今さっき落としたものなのに、素速く持っていくような人がいるのだろうか?と、かなり疑心暗鬼になる。
三つ目のイタリアで購入したものはブラウンのものだった。購入してすぐ髪を束ねるのに使用して、行く先を目指した。そして、行き先に着く前に、なくなっていることに気が付いて戻ったが、やはりどこにもなかった……
この歌のシュシュは、二番目に失くした経緯を記したものと同じ日本の店で購入したもので、まあ、年季が入っている。こういったものも、使用している間に消費するものだ。ほつれていることに気が付き、二箇所ぐらいかなと見積もって作業を始めたが、縫い終わった後に確認したら、次から次へと、ほつれている場所が見つかることったら!!(恥) たかがシュシュひとつを繕うのに、予想外に時間と手間がかかってしまったが、失くしたものの片割れとして、このコはまだまだわたしに奉公してくれることだろう。
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