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宝石を食べ比べる

宝石を食べ比べたことはあるだろうか、きっと多くの人が「そんなもん、あるわけないだろ」と答える質問だろう。

かくいう僕も、そんな経験はない。石を食べるなど、想像もつかないし、味よりも先に歯が心配になる。何より、もったいない。

しかし、”宝石職人”が作ったお菓子ならば、食べ比べてみたいと思うだろう。宝石職人、という意味の店名をもつ「モンテール」は、スーパーやコンビニで出会える身近なスイーツを作っている。

そんなモンテールの底力を見たのは昨秋のことだった。下記の投稿で、手軽に買えるモンブラン(以下、モン)のシュークリームとエクレアを紹介した。モンの再現度を上げる改良を毎年行っていたことを発見し、驚いたのだった。

洋菓子屋と和菓子屋を楽しめるのは、日本ならではなのでは?と日々考えている。日本で生まれた菓子が和菓子で、日本以外で生まれた菓子が洋菓子である。そんな単純な区分ではないだろうけれど、さまざまな文化を許容してきた歴史には、感謝したい。もぐもぐ。

モンテールは洋菓子屋ではあるが、和菓子も作っている。「わスイーツ」というブランド名で商品が並んでいるのを見かけたこともあるかもしれない。

パッケージに赤々と押されている和風のロゴ。初見で「紋亭流」を”あやていりゅう”と読んでしまい、新しい和菓子メーカーか⁉︎と勘違いしたのはここだけの話。

中でも、「ふんわりどら焼き」は数年前から登場した商品である。ふんわりもっちりとした皮に、たっぷりの餡と生クリームが入っている。(この辺りは、和菓子とは断言できなさそうだが)たっぷりの餡を包み込むように皮の縁がくっつけられているのが特徴的だ。餡は、定番の小豆だけではない。


和栗の餡が入っているものもある。

栗入りどら焼き、というのは別のお店にもあるし、通常は甘露煮の粒栗が入っているか、砕かれた栗を混ぜた餡が入っている。余談だが、Yマザキパンの高級あんぱんの最大の魅力は、あの砕かれた栗だと思っているのは僕だけではなないだろう。

和栗の餡は、和栗らしいほっくりとした風味を残しつつ、しっとりとした皮に良くあう。生クリームも和栗と合わせた、和栗クリームにアレンジされていた。

皮に、塩味のような醤油っぽさを感じ、パッケージの裏を見直すと「みりん」の文字。なるほど。どら焼きは、他のお菓子と比べてカタカナの原材料が少ない印象がある。

そんな和栗のどら焼きを食べて、さすがだなぁと思っていたところで、ちょっとちょっと!と、スーパーの棚にツッコんでしまった。


モンのどら焼きである。
(パッケージの写真を、不覚にも撮り忘れてしまった。)

栗が好きとか、モンブランに目がないと言うと、モンと和栗と何が違うの⁈と聞かれることが時々ある。全然違う。和栗の方が、より木の実感が強い。そして多くは甘さが比較的控えめである。

ただ、モンテールの“いつものどら焼き”に抱いていたイメージとは少し違っていた。昨年、コンビニスイーツで見かけた、口を開けたようなどら焼きだった。

食べてみると、皮も違っていた。大きさも少し小さく、焼き色は同じくらいの濃さだったものの、香ばしさやもっちり感よりも口溶けを優先したさらりとしたものだった。

マロンクリームの中には、ダイスカットされたマロンが混ざったホイップクリームが隠れていた。

柔らかい食感の中に、コロッとした固形の栗があると、僕の口の中では皮やクリームたちを先に飲み込んでから、舌の先に残しておいたそれを奥歯でゆっくりと噛んで香りと甘さを楽しんでいる。こういうものを食べた時、僕は常に「芸が細かいなぁ」と思う。美味しい。

モンをモンたらしめるのは、細く絞られたマロンクリームだと思うのだが、それを見せるとなると、どら焼きというお菓子は、ひとクセありそうだ。

見せなくても味で分かる!とは思うのだけれど、多くの人にとって“うねうね”“麺みたいな”“細いやつ”がないとモンではないのだろう。

その昔、中国から贈られた打楽器の銅羅ドラに似せたと言われている「どら焼き」。あずきの餡子だけでなく、ケーキのモンブランも組み合わせられる。

モンブランのどら焼きは、実はもう多くのコンビニで売られており、一巡した感があった。だから、二番煎じでも三番煎じでもあるモンテールのどら焼きは、あまり期待していなかった。

しかし、である。

モンテールは一つ一つのお菓子に気合が入っている。モンブランどら焼きは、シリーズのどら焼きとは皮を変え、マロンクリームもどら焼き用のもののはずだ。

というのも、すでに20年ほど前からモンブランプリンという不動の主力モンがある。そのクリームをどら焼きの皮で挟めばいいのに、そうしなかった。ケーキとしてのモンの再現度、というところでマロンクリームを使ったのだろう。

秋が栗の収穫の季節ではあるから、栗餡とマロンクリームを使った商品が被るのはよくあることだと思う。しかし、和と洋の方向性の異なる”どら焼き”をそれぞれ作っていたことに、驚きつつ嬉しくなった。

繰り返しになるが、モンテールは宝石職人という意味の言葉でもあるらしい。手軽に買って食べているお菓子が、職人たちの手によって宝石を磨くように作られているとしたら、僕はもっと大事に食べることでその労に報いることになるのだろう。



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