転職前夜に時給UP
ある年の3月31日、バイト先で呼び止められた。
「今月もお疲れ様でした!そうそう、もつさんは来月から、って言っても明日からですが、時給が25%上がるんです。本当は30%のはずだったんですけど、一回だけ遅刻しちゃってるから、5%下がってるんですよねー。」
嬉しそうに、そしてちょっと申し訳なさそうに告げてくれたのは、僕と同い年くらいの若い社員さんでした。アルバイトの面接から、実際に業務に入って数ヶ月お世話になりました。
当時、僕の時給は800円・・今と比べると、驚かれてしまいそうな金額です。そして提示してもらったのは、25%アップの時給1,000円。淡々と日々の業務をこなして、できるだけ多くの案件を処理しようと工夫を凝らした結果、評価していただいたのです。
単純に、そのことはとても嬉しかった。
しかし、タイミングがよくなかった。
僕は、転職活動で決まっていた就職先である、地方公務員として自治体に勤務することになっていたのです。そう、翌日から。
公務員試験のために前職を辞めて数ヶ月、無事に自治体からの内定をいただき、勤務先が決まりました。新卒の頃と同じように、4月1日からの勤務でした。
内定からは半年ほど時間があった(モラトリアムと呼ばれています)ので、前職で培われた体力も余っており、ダラダラと過ごすのも勿体ないということで、アルバイトを掛け持ちしていたのでした。
時給がアップしそうだったアルバイトは、通信販売のコールセンター業務。テレビや、ラジオ、インターネットで販売する商品の購入申し込みを受け付ける仕事でした。
基本的には、買う気満々のお客様からの電話なので、友好的に話しができました。確認事項も決まっているので、なるべく早く処理できるように、質問事項を整理したり、端末での情報入力には辞書機能を使って、1文字入力するだけで指示文を作るように設定していました。(例:や→夜間配達希望)
きっかけは、おせちの特番のためのアルバイト募集に応募したことからでした。9月から働き出して、社員さんに「続けてみたら」と言われ、あれよあれよと半年が過ぎて行きました。
採用面接の時に、春から公務員になるので、その繋ぎです。と、はっきり伝えていたのですが、人事と現場は違う人たちという”あるあるな状況”により、一見フリーターである僕の業務態度を評価してくださったのでした。
冒頭の若い社員さんに、改めて伝えることにしました。
「あの、評価いただけたことはとても嬉しいのですが、実は明日から別の場所で働くことが決まっていまして。面接の時に、お伝えしていまして、今日が最終日です。」
「ええーっ!そうなんですか!」
一般的にコールセンターは多くの人がいて、マニュアルもきちんとあるので、急にひとり欠けても(厳密には急ではないのですが)、なんとかなるものです。
社員さんは驚きつつも、ほんとうに残念がってくれたのは、いま思い出しても嬉しい記憶です。
ただ、翌日から始まった公務員としての業務の際、電話がかかってくると「お電話ありがとうございます。○○○ショッピングの担当△△が承ります!」と応答してしまうことが何度かあって、その度にめちゃくちゃ恥ずかしい思いをしていました。