哲学者に、聞いてはいけない
人生相談、新聞などで見かけるとついつい読んでしまうことありませんか。これは仕込みでは、と思えるくらいに自分とはちがう次元の考え方をしていたり、こんな人生あるのか、と慄いたり。
とにかく、他人の不幸は蜜の味という言葉がある通り、自分じゃなければなんでも楽しく読めてしまうのが、文字のすごいところ。これが、話し言葉だとなかなかすんなり聞けなかったりしますよね。
読み手は、何も他人の不幸を読みたいのではなくて、その先の識者の回答が気になるわけです。相談内容を理解し、時には相談者への自戒を提案する発想が、とても意外で勉強になるのです。(新聞の人生相談は殆どそのパターンかも)
毎週木曜日は、読んだ本のことを書いています。
先日、人間らしい哲学者として紹介した方の著書を紹介します。物語ではありませんが、これもまた彼の人間らしさが如実に表れている作品でした。
哲学の先生と人生の話をしよう
國分功一郎
寄せられた相談に、古今の哲人たちの言葉を引用しつつ、ご自身の経験や感想を織り交ぜた回答文。その鮮やかなこと。
相談内容が、切実だからこそ、そしてどの相談者も洞察がとても深く、借り物の悩みではなく本心から出た言葉で訴えてくるところは、ふだん目にする人生相談とは装いを異にしていました。
回答文は、それこそアドバイスとして、解決の一助として温かな言葉を投げてくれるのです。そこは期待通り。自分と似ている悩みがあれば、励まされること間違いなしです。
さらにすごいと思ったのは、先生が先生であるだけでなく、相談者の親や兄弟のように、さらには友人のように、挙句の果てには、居酒屋でたまたま隣り同士だった人のように、相談者に寄り添ってくれること。
中でも、相談内容よりも、相談者のペンネームを深掘りし、そこに人間性を見出し、褒めて勇気づけをする回は、人生相談の真髄だなぁと唸らされました。
ペンネームというアバター(分身)にこそ、本人の存在性が息づいていること、それをきちんと言語化して示すことで、顔が見えないはずなのに、対面や電話でマンツーマンで答えているような雰囲気がありました。
蜜の味、を知りたい方にはやや物足りないかもしれませんが、哲学ってやっぱりいいよね、と思える作品。
ちなみに、同じような趣旨の本がいくつかありますが、読み比べてみても、この作品はエンタメ性(思い悩んでいる方には申し訳ないけれど、やっぱり楽しいのが読みたい)が高いです。
こちらも文庫になっていました。
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