ウキウキのうきわ
何か面白いタイトルを付けようと思うと、ダジャレとか繰り返しとか、ある意味では簡単な方法でなんとかならないかと思う。しかし、音だけで面白そうと思っても文字にすると案外ふつうだったりする。
市民プールのありがたみを、大人になって実感している。昨年までは、空気で膨らますプールを庭先に置いて、ほぼ1日かけて遊んでいた。
プール本体、それを載せるために地面に敷く厚みのある敷物、エアポンプと、屋根代わりの布、買ったタイミングがバラバラなだけに、結構な金額になっているはずだ。大きなプールは快適だけれど、使う水の量もバスタブ2杯分くらいある。
ただ、それなりに大きいとはいえ、浮き輪でプカプカと浮いて遊ぶことはできなかった。まして姉妹2人の浮き輪が入れば、肝心の人が入れなくなる。
市民プールはその点、浮き輪がなければ遊べない場所でもある。エアプールのようなスネくらいの水深のプールは少数派で、幼児や小学生には深いプールが多くあるからである。
足がつかないところで頑張って過ごすのも、運動という面では優れているのかもしれないが、溺れる危険性や、疲れる可能性が格段に上がる。
いくら遊びとはいえ、ヘトヘトになるのは良くない。浮き輪を使えば、とりあえず沈んでしまうことはなくなる。さらに流れるプールに入れば、水の流れに身を任せ、あなたの色に染められ、である(たぶん僕の世代ではない)。
子どもたちが市民プールに行きたがるので、この夏休み期間は、何度もプールに行くことができた。僕としてもプールは好きだから、水の中で遊ぶのだけれど、子どもたちの入りたいプールが違うという課題があった。
昨今のプールは、子どもが1人でいることを良しとしない。近くに大人がいなさい、と指導がある。安全のため、もちろんそうなのだけれど、幼児は、大きなプールに入りたくないし、小学生は幼児用プールに入りたくない。
どうしたらいいのだ。
運が良ければ、子の友だちがいて、大人と一緒であれば、申し訳ないけれどお願いしてしまうことがあるが、そうでないときはかなり辛い。
そんな時に浮き輪が活躍してくれた。
あるとき、子どもは2人で大人1人の体制になって、入りたいプールが分かれてしまった。僕は、浮き輪で浮いていれば大丈夫だからと、何分もかけて下の子を説得した。
もともと怖がりな性格の下の子はかなり警戒して、嫌がったけれど、例えば半分ずつ交代でプールに入ることになると伝えたら、それは嫌だということになり、試しに流れるプールに入ってみた。
子は、浮き輪にしがみつくようにして、身体を強張らせていたが、次第に慣れてくると、自分から泳いで向きを変えたり、顔をつけたりして遊ぶようになった。
たった数分で、浮き輪に全幅の信頼を寄せ、足のつかないプールでもプカプカ浮いていられることを楽しんでいる様子だった。
その後、別のさらに深いプールにも挑戦し、浮き輪とともにプカプカしていた。暑い日差しのもと、水の中にいることは気持ちがよいのだ。
足がつかなくても楽しめる、それに気がついた子は、幼児用プールのことを忘れたかのように、広いプールばかり入るようになり、上の子と同じ場所でキャーキャー楽しんでいる様子に、成長を感じたのだった。