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ガイドブックには載っていない、激レア台北鎮魂ツアー

昨年の12月中頃、念願の台湾台北へ行ってきました。
それまでの台湾の水際対策は非常に厳しいもので、ビジネス以外の外国人の受け入れは行っていませんでしたが、2022年11月に渡航制限が大幅に緩和されたのです!👏

7日間の自主防疫期間と期間中の滞在はホテル等で一人1室という条件つきではありますが、マスクをしていれば外出もOKというかなり旅行者にとっては動きやすい規制緩和です✨有難い!

いや〜、ずっ〜と行けるようになるのを待っていたのですよ。
どれくらい待っていたのかと言うと、2021年4月から。


母を見送ってからずっと。


2021年4月に母を見送ってからずっと、台湾へ行けるようになる日を待っていました。
今回の台湾への渡航はただの旅行ではなく、「母の納骨」という大事な大事な旅でした。

※本記事は台湾ガイドブック的な内容ではありません。
懐かしのテレビ番組『世界ウルルン滞在記』を観るような感覚で、「へぇ〜、こんな故人の送り方もあるんだな」と、異国でのとある家族の別れのカタチを感じていただけたらと思います🙏

我が家の事情

サムネにグルメやマッサージを満喫してる画像載せておきながら、いきなり重たいテーマをぶん投げてすみません。
サムネは釣りか?釣りサムネか?

えー、あー、うー、👀
つ、釣りました🙇🙇🙇

いやいや、さすがに墓地や祭壇の画像をサムネにするのはアレじゃないですか💦

そもそもなぜ台湾で納骨を?と疑問に思われたことでしょう。
両親は生粋の日本人ですが、私の姉が台湾の方と結婚して、台北で暮らしています。
そんなわけで、台湾とは少しばかりご縁があります。

我が家の事情を簡単にお話ししますと、まず先に父をお見送りました。
その時に「お墓どうするよ?」問題にぶち当たりまして、我が家の場合は日本にお墓を建てるよりも、台湾にお墓を建てる方が良いという結論に至ったのでした。
台北から車で約30分ほど離れた場所にもともと姉が自分達用に所有していたお墓があり、父にはそこへ入ってもらうことになりました。

妻の本音

生前の父は典型的な亭主関白な人でした。
家事は全て母がやるもの、父は目の前で母がせっせと掃除をしていても一切動かない。
母がいなければ朝食のトースト一枚焼くことすらできません。
実際に食パンをガスコンロで直火焼きしようとして、黒焦げにした実績があります。
娘の前では母への感謝を口にすれど、母に面と向かって言葉にすることはありませんでした。
そんなどこにでもいそうな昭和世代の夫婦。

妻側からしたらそんな夫をどう思っていたのでしょうか。
母の言葉をまんま引用するなら

「あんなクソ親父と一緒のお墓には入りたくない」

だそうです。

あくまでこれは私の母の言葉ですが、世の旦那様方、奥様には感謝の気持ちを言葉や行動でちゃんと伝えてあげてくだいね😉

そんな腹に一物抱えた母が父の納骨の際に台湾の墓苑を訪れた時、いたく気に入り、

「ここなら私も入りたい」

まさかの自分も入りたい発言。
あんなに父と同じお墓に入ることを嫌がっていたのに。
そう言ってくれるのならと、この時に母も台湾のお墓に入ることが決まったのでした。

渡航制限に阻まれて

2021年4月、緊急事態宣言が出ていた日本で、母の葬儀をどうにか執り行うことができました。
そして葬儀後、姉は母の遺骨と一緒に台湾へ帰って行きました。

なにせ世界中が感染症の脅威と戦っていた時だったので、海外渡航なんてとんでもない。
台湾から母の最期に駆けつけた姉だって、日本入国時に2週間の隔離期間、台湾帰国時にも2週間の隔離期間を要し、大変な思いをしての渡航だったわけです。
そんなご時世に納骨のため台湾へ?
いやいや、無理だわ。
そもそも世界の大半が、ビジネス以外での外国人の受け入れをしていない状況でした。

待っててね

台湾では大事な時には鑑定してもらって吉日を選ぶ人が多いようです。
引っ越しする日、商売を始める日、出産まで日を選ぶ人もいるとか。
風水や八字(四柱推命)などを商売繁盛やより良い人生の一助として取り入れる。
日本人からすると理解し難い部分があるかも知れませんが、台湾の人たちはとても大事にしています。

なので、お墓に入る日だって選びます。日本では四十九日を過ぎたら法要をする方もおられると思います。
台湾では、お墓に入るのに最適な日時はひとりひとり違うため、急いで納骨をせず、故人にとって最適な日時を待つこともしばしばあるそうです。

母をあまり待たせるのは申し訳ないと思い、一度は渡航を諦めて、姉と台湾にいるご家族の皆さんに納骨をしていただくことも考えました。

けれどもしかしたら、半年後には状況は変わっているかも知れない。
母には申し訳ないけど、もうしばらく待ってみよう。

時間はかかるかも知れないけど、待っててね。

そして渡航規制緩和を待っていたら、一年半以上もかかってしまった次第でございます。

台湾式納骨の儀

ここからは台湾形式の納骨式になります。
台湾でもさまざまな宗教・宗派がありますので、あくまでひとつの宗派のやり方になります。
どうか形式に囚われず、こんな送り方もあるのだなと、寛容なお心でお読みいただけると幸いです。

そんなこんなで、ようやく父のもとへ母を送る日がやってきました。
墓苑にお願いして台湾のお坊さんに来ていただきました。
ちなみに台湾での諸々の手配は、全て姉がやってくれました。ありがとう💕
👇祭壇を準備する前の写真ですが、日本とはだいぶ違うのでご覧ください。

このあと中心にお骨を安置して、お花や食べ物をお供えしました

大変申し訳ありませんが、仏教なのか道教なのか、宗派はよくわかりませんでした💦
ですが、お坊さんの読経は独特のリズムで、まるで歌っているようでした。

途中で姉がお坊さんの言葉を通訳してくれます。

「お母さんの魂がここへ降りてきてくれるように、呼びかけてください」

お母さん、ここへ降りてきてね。

「お母さんの魂が降りてきたかこれを使って確かめます」

え?確かめるって、どうやって?

台湾のお墓に入ることを決めた時点で、日本の仏教形式の送り方ができないことは理解していました。
郷に入っては郷に従え、父の時に台湾式の送り方はすでに経験済みです。
けれど、父の時にこれやったかな?
すっかり記憶が薄れています。(お父さん、ごめんなさい)

頭の中は???のまま、赤い三日月型のものを2つ渡されて、言われるがままに心の中で問いかけます。

「お母さん、ここに降りてきていますか?」

両手で包んだ三日月を手から落とし、落ちた向きで判断します。

筊杯(三日月型の神意を問う道具)

表と裏なら「はい」、裏と裏なら「いいえ」
ちなみに表と表なら「わからない」だそうです。

答えは表と裏「はい」でした。

台北観光ではメジャーな龍山寺や廟などで、見かけたことがある方もいるのではないでしょうか?
神様に答えを尋ねる時に使う道具だそうです。

無事魂が降りてきているのが確認でき、いよいよ母を送るための本格的な読経が始まりました。
お坊さんの歌うような読経が響き渡り、まるで荘厳な一曲を聞いているようでした。
魂が降りてきていると思ったら、なんとも不思議な気持ち。

この場に母がいる。

待たせてごめんね。
やっと台湾へ来ることができたよ。
コロナから守ってくれてありがとう。
私の家庭のこと、心配ばかりかけてごめん。
きっと父が首を長くして待ってるよ。
今から父のところまで送っていくね。
これからは父と二人で見守っていてね。
ゆっくり眠ってください。

本当に本当にありがとう。

じつは台湾へ行く直前に、息子と夫が立て続けに陽性者になってしまいました。
けれど無事台湾へ行けるように、両親が私のことを守ってくれのだと勝手に思っています。

台湾のお墓

当日はあいにくの雨で、おまけに風も強くて写真どころではなかったので、父の納骨式の時に撮った写真を載せます。

華やかなお花のプレートの下にお骨を安置します

墓石のようなものはなく、このお花のプレート分がひと区画。
手前のプレートが我が家のお墓です。
中は骨壷が4つくらい入れそうなスペースがあります。
グリーンシートの下も全てお墓。
この時は墓苑のご配慮にて、よそのお墓にはグリーンシートがかけられていました。

墓苑は傾斜を利用したすり鉢状に造られていて広大です。
休憩所のようなこれまた立派な建物があるのですが、そこから自分のお墓まで行くのに車が必要なくらい広いです。
そしてすり鉢状の形状をしているので、高低差がきつい💦
とても広く見晴台のようなところがあったり、芝が植えられきれいに管理されていて好感度◎

奥の丘まで全部が敷地内

カラフルな風車がズラーーーーーっ。
ここが墓地なのかと驚く広大さ、明るさ、開放感。
形にとらわれない母が気に入り「ここなら私も入りたい」と言わしめた、その理由が少しでもお解りいただけだでしょうか?

とある家族の別れのカタチ


おそらく、多分、いや絶対。
ガイドブックには載っていない、台湾での衝撃?納骨ツアー、いかがでしたでしょうか?

海外渡航が出来なかった期間、母は墓苑の納骨堂で待ってもらっていました。

このご時世だから仕方がない。
母だってきっと分かってくれる。

そう自分に言い聞かせていましたが、時間が経つにつれて、母に対して申し訳ない気持ちが日に日に大きくなっていきました。

さすがにもうそろそろ、きちんと納骨をしなければと、姉と相談していたところに、渡航規制緩和のニュースが!😆

やっとやっと台湾へ行ける!
母を父のもとへ送ってあげられる!

行きたい国 台湾。
やりたいこと 納骨。

家族にとっては、これでひと区切りとなるのかな。

ようやく
やっと
感謝
安堵

そんな気持ちの旅でした。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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