あそぼ
あれは夢だったのか
夢じゃなかったのか
幼い頃、近所で火事があった。
現場の野次馬に混ざり、私と母がいた。
記憶が曖昧なので、もしかしたら母と一緒ではなかったかもしれない。
昼間だったから、近くで遊んでいて、消防車やパトカーと救急車の音で騒がしかった為、好奇心で一人で行ったのかもしれない。
現場から少し離れた所に規制線が張られ、すでに鎮火した後だった。
大勢の人がいて騒がしかった。
火事があった家は白い家で、外壁が所々黒く染まっていた。すべての窓が割れていて、部屋の中は真っ暗で何も見えなかった。
ふと二階の割れた窓の部屋を見た時、包帯でぐるぐるの女の子がいるのが見えた。二人いた。包帯がぐるぐるで髪の毛も見えないのに、何故だか女の子だと思った。
あの家の女の子かな。
救急車が止まっていた為、病院から戻って来たのかな、なんてバカな事を当時は思った。
私がじーと二人を見ていたら、二人とも手を振ってきた。
私も手を振った。
今度はおいで、おいでをしてきた。
「あそぼ」
って聞こえた気がした。
私は嬉しくなって規制線をくぐって中に入ろうとした。
すると、「危ない!入っちゃダメ!」と腕を捕まれた。
私は女の子と遊びたい!って強く思い、その手を振りほどこうと必死だった。
「あの子と遊ぶの!」
そう言って必死にもがいたが、大人の手には敵わなかった。
その手は母だったのか、たまたま近くにいた大人だったのか思い出せないが、ひどくがっかりした気持ちになったのは、よく覚えている。
諦めきれなかった私は、別の日にその家に行った。
もちろん、野次馬もいなく静かだった。
相変わらず部屋の中は真っ暗で何も見えなかった。
二階をじーと見たが、女の子はいなかった。
あの不思議な体験は、現実に起こった事なのか夢だったのか、今でもわからない。
「夢だけど、夢じゃなかった!」
「夢だけど、夢じゃなかった!」
なーんて、楽しいお話じゃないお話でした。