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大衆演劇のパクリと盗作と表現 ちょっと考えたい事あるいはリスペクトと愛について

旅芝居観劇初心者の頃、
ある劇団の芝居のオープニングで席を立ったことがありました。
幕開きに障子にライトで光らせてタイトルを出し「カーン!」「ドーン!」
立ち廻りの際にハードロックを流して効果音「カーン!」、
作品の内容こそ違えど演出から立ち廻りから・・・。
でも効果音と動きとタイミングは全く合っていませんでした。
(※かの劇団の「カーン!」「ドーン!」に合わせた
カッコいい気持ちいいキメ!には秒単位での動きの演出がつけられているねんで?)
せやのに公演前の宣伝では豪語していたのです。
「新時代!」「これが僕たちの新・大衆演劇だ!」
帰りました。すみません。(大人げない&失礼すぎるな)

同じく初心者の頃に同じ劇団を意識した他劇団の芝居も観ました。
魔剣ならぬ魔刀。宿縁の女郎。
自分の力に限界を感じた主人公は
山奥に住む謎の老師に闘いの手ほどきをうけ運命に立ち向かう!
あきらかにかの劇団を意識して作られたお芝居でした。
忘れもしません。口上で作家(興行師が台本を書いた!)は言いました。
「皆さんご覧ください。(元劇団)を超えました!」
「四季劇場より旅芝居はすごいんです」
拍手喝采の中で私は一匹、「うーん・・・」、なんだか悲しくなりました。

その後かの劇団を意識する劇団は数えきれないほど観ます。
もうキレて帰ったりはしません。
グレーゾーンが魅力とは言え、「アウト!」すぎるものも多々やけど。
いろんなことを考えてしまうのです。
かの劇団をパクるというのはもちろん例え話です。
歌舞伎も。アニメも。
漫画もテレビでも。他の芸能も。なんでもそうやねんけども。
ちなみに我がまわりの友人たちはある意味オトナな(?)見方をします。
「パクリきれていないのをみて切なさと愛しさを感じて笑う」
私もかな。苦笑しながらも。
「楽しそうやなー」「前列のお客さん喜んでるなあ」
でも悪い意味でクソ真面目であかん私は真顔になってしまうのです。
「好きなんやろうなー」「やりたいだけやん」
「あ、意味わかってない。誰の差し金かな」
帰宅後考え込んでしまうのです。
だってあきらかに笑えないくらいの
「アウト!」(タイキックレベル!)も増えている。
SNSの普及と浸透でそれらはもしかしたら
ほんまに笑えない「アウト!」になりかねない。
いくら幾つかの劇団が「SNSへのレポ写真の投稿を禁止します」とか言い出したりしていても。
どうやろう。今ここでちょっとみんなで考えてはみませんか。
根本的な解決はもしかしたらやっぱり出来ないのかもしれないけど。
(音の問題とかもあるし)でも。

旅芝居・大衆演劇はいい意味で≪ごっちゃまぜ≫さが魅力だと思います。
古典も今風も伝統も俗っぽさも。
昔っからそうで、だから面白く独自の進化を遂げてきたんやと思います。
旅役者たちの「今をとりこむ」力はすげーです、素敵です。
ほんまに大衆の舞台、好きや嫌いどうこうではなくだから面白い。
楽しい舞台をやりたい!楽しみ楽しませられる舞台を!
悪気はないんやろうと思うのです。あの熱と汗!
一度はいろんな人に観てほしいあの衝撃を。
まだ未見の方、是非一緒に行きましょう。これ、本音です。

さらに毎日が舞台の旅芝居・大衆演劇は
近年ちょっとしんどさ大変さもあるんやと思います。
毎日舞台で大入り(客席満員)がことさらに求められる時代。
ちいさな劇団が乱立し、
限られた劇場と温泉センターを取り合いとまでは言わないけれど
来月の公演先生きる場所を確保するのに必死で
終演後のお見送り(送り出し)だけじゃなく
開演前のお出迎えだのグッズだの
お楽しみサービス(抽選会、イベントデー)など
舞台以外の努力まで必要とされるようになった時代。
他の劇団と違うものをやろう!
取り入れよう!新しいものをつくらなければ!
しんどい!時間もない!めちゃめちゃしんどいと思います。

でもね、
本当に本当に尊敬しているなら
そのままパクったりなぞったりするという行為は
やらない出来ないのではないかなと
私は思ってしまうのです。
どれだけ大変で時間がなくても。
原作や元のものをそのまんまや
出来ないなりになぞって利用するんじゃなくて
原作や元のものの伝えたかったことを
自分の中に取り入れて自分なりのカタチとして表現する。
それがプロの仕事じゃないかなあ。
その方がきっとやりがいもあるしきっと
本当の意味で私たち観客の心に残るのではないかなあ?
長い目でまた来たいと思わせるのではないかなあ?
さらに広く知らない人にも深くハマってもらえるのではないかなあ?
私たちも胸を張っていろんなひとに薦められるのではないかなあ?
旅芝居の役者さんたちにはその力があると思うのです。
毎日が舞台だからこそ。
舞踊では曲を使って曲以上の物語を見せたりもいるじゃないか。
芝居で生きる人たちだからこそその力で。

ちなみに。好き嫌いで言うとパクリはめちゃくちゃ嫌いです。
一度自分の文をパクられたとき訴えるとか乗り込むとかって言うて騒ぎました。
地方紙に書いた女性作家への取材コラムを一般紙文化欄でパクられた件でした。
構成も内容もオチまで一緒。何人にもみてもらいましたがパクリでした。
結局なにも動かなかったけれど今でも記者の名前は覚えてるし忘れません。
今はカッとはなりません。一言。「かっこわるいな、しょうもないなあ(大手のくせに)」のみです。





モト(物語やテーマ)がほんまに大好きだからこそ
リスペクトをこめてモチーフを借りて自分の心と体で表現したそれは
時にモトのものや原作の言いたかったことをモトよりも伝えてくれたりする。
私はこれを大好きなストリップの踊り子さんの舞台から教わっています。本当に感動します。

先日、フォーメーションから曲から「あー・・・」だった『ヤクザ忠臣蔵』を観て(※写真は全く違う劇団のもの)なんか悲しくなって。超悩んだけど書いて、おいておきます。


■omake■
そんな観方で、ずっと旅芝居や旅役者をみてきております。
以前はblogに、近年はnoteのマガジンにまとめているので、よろしければ。

と、わたくしめのプロフィールなども、すこし。



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