ぱりぱり
行きつけの店が出来た。呑み屋ではない。キムチ屋だ。
いただきもののキャベツキムチが美味かったので
己でも年明けに足を運んだ。
なんてことのない、
でもわりに賑わっている商店街に数軒あるキムチ専門店の中でも
そこはなんてことなさすぎるというか、
華美でもなくPOPなロゴの看板がある訳でもなく、
映える感じにするつもりもなさそう。
でもだからといってショボかったり古ぼけていたりとかではない。
韓国直輸入という謎の人形だかキーチェーンだかも雑に籠に置かれていたそれは要らない。
キムチの種類がたくさんで、壺っていうか甕っていうか、
「おっちゃんが毎日漬けてまっせ」感、
全身ユニクロのヒートテックみたいなおっちゃんが
愛想をするでもなくしなくでもなく立っていて、
キンパとかもすこしはあって、
生活なんだけど商売で、その感じが嫌いじゃない。
値段もたぶん、スーパーとかで売ってるちゃんと発酵させたんじゃないのに高いやつとかと比べてめっちゃ安い。
少量だけ買って帰ったキャベツキムチは、やはりよかった。
特にキャベツが好きではない、でもなんだか気に入った。
大根とか長芋キムチをばりばりやるのが好きなのだけど、キャベツもありやな、ぱりぱり。
先日もう一度足を運んだ。
年が明けて二回も来た妙なやつを
店主が覚えていたのかいないのかはわからない。
今度はちょっとすこしずつ多めにいろいろ買うたのだが、
グラムを計って袋に詰めてくれながら、
長芋をちょっと多めに入れてくれたようだった。
小銭がなかった。
「ごめん、大きいお札しかなくて」
「ほな、ちょうどね」
「え?」
顔を見るとげらげらでもニヤニヤでもなくふふふと笑ろてる。
「あー、ごめん、ちょうどやったらええねんけどなー」
適当な、でも、ほんまにそない思いもすることを言うたら返ってきた。
「そこはな、おねえちゃん、
「それでビールでも呑んでおっちゃん」って言うとこやで(笑)」
笑ろてもうた。けど、なんだかしみじみしてしもたのは、この日キャベツのキムチがまるっとなかったからで、やはりあれなんやろうか。
30年に一度とか言われる影響なんやろうか。
キャベツはしばらくもう漬けられへんのやろか。いや、たまたまか。
「そない言えるよう渡せるようがんばります。また来ますー」
などとまた適当なほんまに思いもすることを言うて帰った。
ご飯にのっけても、ビールのあてでも、ちゃんと、美味い。
皆、生きてる。
ぱりぱり。
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たまに出てきますね商店街話。
全部同じ商店街という訳ではないのですが。
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構成作家/ライター/エッセイスト、
momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。
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