十八番 「それイマイチやわ。キモいわー」な路上ミュージシャンと
普段なら素通りだ。
でも足をとめた。
鶴橋駅のあのガード下の雰囲気のせいかな。
芸や生きることをぼんやり考えながらの嬉しい帰り道の日だったからかな。
スタンドマイクの下にさっきまで呑んでおられたのであろうロング缶が数本並んでいたのを見たからかもしれない。
「なにが人気? 得意ですか?」
「お! いいですか!?」
歌い出し歌い上げてくれたのは尾崎豊の『Forget-me-not』だった。
ちゃんと聴いた。
聴き終わり、口から出た、出した。
「それイマイチやわ。キモいわー」
「えーっ。なんで?! なんでですの?!(笑)」
げらげら笑うもちゃんと言った。
「でも稼げそう(笑)」
「そうなんです!(笑)」
「大事やんね(笑)」
「ちょ! ちょっと待って! 時間あります? ちょっといろいろ聴いて下さいよ! 色々やってみるから!」
しばらく付き合うこととなる。
「これはどうです?」「ほなこれは?」
DEEN。B'z。ひゃー。ぎゃー。
でもそんなことやってたら人も集まってきてね。
煽ってみもした。
「斉藤和義とかも歌ってるんですか?」
超どや顔で気持ちよさそうに歌ってくれた。
勿論、『歌うたいのバラッド』だ。ひゃー、もー、ぎゃー。
でも、ああ、そうやねえ、そうなんやろなあ。
92歳の祖母はデイサービスのカラオケの稽古に余念がない。
いろいろ選曲&チャレンジしてきたことは以前にも書いた。
最近は落ち着いた。
藤あや子の『こころ酒』ばかり繰り返し歌っている。
「●●(地域名)の藤あや子」という二つ名を持つ。
様子を見に会いに行くと稽古させろとうるさい。
わたしはスマホでYouTubeを大音量で流す。
彼女はそれをBGMにお歌いになり、不肖の孫は缶ビールを呑み呑み手拍子したりダメ出ししたりする毎回だ。
何年も何年も前に観た新宿ゴールデン街の流しのことも思い出した。
あの日も訊いた。
「一番お得意ってかお好きなのは?」
『My Way』
へったくそやった!
せやけどめっちゃええギターを持っていた!
*
以下は関連する過去記事の羅列です。
先月のその日
祖母の話
ゴールデン街の流しに会った話
(2010年って。笑)
◆◆
【略歴や自己紹介など】
構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。
旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。
普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。
劇場が好き。人間に興味が尽きません。
舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。
某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
【Twitter】と【Instagram】 など、各種フォローも、とてもうれしいです。
詳しいプロフィールや経歴やご挨拶は以下のBlogのトップページから。
ご連絡やお仕事の御依頼はこちらからもしくはDMでもお気軽にどうぞ。
めっちゃ、どうぞ。
Webマガジン「Stay Salty」Vol.33巻頭に自己紹介エッセイを寄稿しました。
12月Vol.34からは不定期コラムコーナー「DAYS」も書かせていただいています。
東京・湯島の本屋「出発点」では2箱古本屋もやっています。
営業日と時間は「出発点」のXをご参照ください。
ぜひぜひ遊びに来て下さい! 自己紹介の手書きペーパーもあり!
読書にまつわるエッセイ集(ZINE)、
tabistorybooks『本と旅する』もお店と通販で取り扱い中。
旅と思索社様のWebマガジン「tabistory」では2種類の連載をしています。
酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在19話)と
大事な場所の話「Home」(現在、番外編を入れて4話)。
noteは「ほぼ1日1エッセイ」、6つのマガジンにわけてまとめています。
旅芝居・大衆演劇関係では各種ライティング業をずっとやってきました。
文、キャッチコピー、映像などの企画・構成、各種文、台本、
役者絡みの代筆から、DVDパッケージのキャッチコピーや文。
担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
YouTubeちゃんねるで過去映像が公開中です。
こちらのバックナンバーも、さきほどの「出発点」さんに置いていますよ。
あなたとご縁がありますように。今後ともどうぞよろしくお願いします。