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【イギリス食物史】中世から伝わるお菓子 カタンケーキとミンスパイ 


今回のお話は、イギリスの行事菓子について。

カタンケーキ

キリスト教の暦で11月25日は、セント・キャサリンズ・デー。セント(聖)・キャサリンの祝日です。この日にイングランドでは、カタンケーキというお菓子がお祝い菓子として食べられていました。

西暦300年頃に殉教したとされるキャサリン・オブ・アレクサンドリア。レースメーカーの守護聖人、セント・キャサリンとして知られている。

中世からヴィクトリア朝中期まで、イングランドではレースが高級品として珍重され、上流階級の人々の洋服の襟や飾りとして付けられました。レース作りは女性の仕事で、未婚の女性達も多く携わっていました。そのレース職人達の守護聖人がセント・キャサリンです。

様々なキリスト教の祝日がありますが、イギリスで現在この日はあまり知られておらず、カタンケーキについて知る人もいません。


私とこのお菓子との出会いは、ある街のカフェでした。

そのお店では、古くから伝わるお菓子や地元で採れる食材を使ったメニューと提供しています。その中でも特に、カタンケーキの由来とお菓子に興味を持ちました。

車輪をイメージしたお菓子。おいしい!

見たことも聞いたことも無い、ビスケット。こういうお話が大好きな私は、それからずっとカタンケーキが気になっていたのですが、とうとう今年は11月25日に合わせてオンライン動画講座にまとめました!

その由来、作り方、お菓子のまつわる逸話、食べられるお店までご紹介しています。

ただいま、受講者募集中です!

「カタンケーキ 11月25日に食べられるお菓子。レースを編むふたりのキャサリン」
https://www.facebook.com/share/p/15kFrC7ZpA/ 

Facebookにて作り方を動画で紹介しているので良かったご覧ください⇩

https://www.facebook.com/100003985345409/videos/558916910246330/

今年は試作のために何度も作りました。出来上がったものを周りの方におすそ分けすると、大好評でした!イギリス人が好む味みたいです。


他にもたくさんある、イギリスの伝統菓子

古くより伝わるお菓子は、そのほとんどが宗教的なお祝い菓子として生まれ、受け継がれてきました。良質な製粉された白い小麦粉、砂糖、卵、ドライフルーツ、ナッツ、スパイスなど高価な材料で作られる、特別な日にだけ食べられる物でした。

ドライフルーツには子孫繁栄、子だくさんの願いが込められています。

クリスマスのお祝い菓子

クリスマス・プディング

中世から伝わるお菓子として有名なのは、ミンスパイとクリスマス・プディング。このふたつのお菓子は、12月になると店頭に並び始め、現在でも人気のあるお菓子です。


中世のミンスパイ

ごつごつしたパイ生地に中に、お肉入りのフィリングが入ったミンスパイ。オープン・エア・ミュージアムの「中世のクリスマス料理」の講座で作ったもの。【2010年】

中世のミンスパイは、今の物よりも大き目でした。一つに大きく焼いて、分けて食べてることもあったよう。イエス・キリストのゆりかごをイメージして楕円形をしていたというお話もあります。

ペイストリー生地は、小麦粉とラードに熱湯を加えて作る、焼き上がるとカチカチで頑丈なパイ生地でした。パイの型は無かったので、フィリングを覆うパイ生地は型の代わりで、パイとはフィリングを食べるもので、周りのパイ生地は食べ残しました。パイ生地は、そのままパイとして再利用されるか、貧しい人々に施されたそうです。

裕福な人たちの食事として伝わるレシピ

中世のダイニングルーム。
上方に家の主人や家族、客人が横一列に座り、食事をした。

長い間、お菓子は宮廷や上流階級、裕福な人達のみが食べられるものでした。今私たちが文献などで知りえる中世のお菓子は、一部の人達が食べていた食事のレシピ。そもそも現在まで残されている中世レシピのほとんどは、裕福な人々の食事です。


かつて行事菓子は、宮殿やお屋敷、修道院などで作られていた。エリザベス朝のタウンハウス、ウェールズのプラスマウア(Plas Mawr)のキッチン。
ナショナルトラストお屋敷のクリスマス・ディスプレイ。
ヴィクトリア朝になると、お屋敷のキッチンでは料理人たちが美しいゼリーやアイスクリームも作るようになった。


現在のミンスパイ

中世のミンスパイには、ひき肉(ミンスミート)がフィリングに入っていたが、時代が経つにつれてドライフルーツの割合が増えて、現在ではお肉の名残りとしてスエット(Suet)と呼ばれる牛のケンネ脂が入っています。

スエットは、牛脂を乾燥させたもの。

様々なデザインのミンスパイが登場。

12月のクリスマス・パーティー、カフェやティールームでも見かける。

中世に生まれたミンスパイは、時代によって少しずつ形や材料が変わりながら、現在でも人気のあるお菓子。今のミンスパイは、生地はサクサクのショートクラスト・ペイストリー。フィリングには、本来の材料であるカランツやレーズンの他に、追加でお酒(ブランデーやラム酒、ポートなど)やナッツ、クランベリーなどが入っている場合もある。ベジタリアン用には、スエットを植物性のオイルなどで代用してあります。

雪の結晶を上にのせたデザインが気に入っています!

ミンスミートは、手作りする人も多い。12月になると瓶入りのミンスミートが沢山売っています。スーパーの自社ブランドが多く、価格帯別にシンプルなものからお酒やナッツなどが加えらているスペシャルなバージョンまであります。

私のレシピのミンスミートのレシピは、刻んだアーモンドとブランデーがたっぷり。手作りすると、自分の好きなように材料をアレンジできるのが嬉しい。

残ったミンスミートは、ロールパンにしても。
蒸しプディングにするレシピ。



ミンスパイはいつ食べる?

本来は、クリスマスの12日間に12個食べると良い年を迎えられる。その期間に隣人が訪ねてきたら、その人の幸運を願って食べてもらう。という言い伝えがあったが、現在では12月に入るとお茶菓子として食べている人が多い。


ホット・クロス・バンズ

これは、イースターのホット・クロス・バンズの同じ現象。ホット・クロス・バンスは、聖なる金曜日グッドフライデーに食べられるお菓子だったが、今では一年中食べられている!

とにかく、どちらも人気のあるお菓子で、カフェやティールームでも食べられる。


スコットランドで大みそかのお祝いホグマニーに食べられるブラック・バン。スコットランドでは、12月25日よりもホグマニーを盛大に祝う習慣があった。


イギリスの伝統クリスマス菓子については、こちらで紹介しています!

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