「光る、兆し」とアイドルの定義
2021年5月1日。
最近好きになったジャニーズのアイドルグループ「SixTONES」が結成6周年を迎えた。
記念日イベントの予兆は、4月30日の田中樹のブログ「田中樹のリリックノート」から一気に加速した。
何かが始まりそうな予感にみんなソワソワし始め、毎週金曜日に更新されるSixTONESのyoutubeチャンネルに注目が集まった。最初、「ポテトフライ100gバトル - 俺はポテトを食べたいんだ!!」の文字が映った時はすっ転びそうになったが、動画の最後に「結成6周年カウントダウン生配信」がサプライズ告知された。
結果的にSixTONESは20万人近くのファンと共にその瞬間を祝い、配信の最後に『5月を「スペシャル月間」と題し、様々なコンテンツを届ける』という嬉しいお知らせもしてくれた。翌朝には、1ヶ月限定のSixTONES公式Twitterが開設され、Twitter上でもSixTONESの結成6周年を祝うハッシュタグの数々がトレンド入り。そして記念日の最後は、毎週土曜深夜23:30から放送されるSixTONESのオールナイトニッポンサタデースペシャルへと繋いだ。
6人グループということで、グループ名に「6」がつき、6という数字に拘りを持つ彼らにとって、2021年5月1日の結成6周年は、非常に特別な日であることは分かっていたつもりだった。しかし、この記念日を祝うための流れがあまりにも美しく感じたのは、私だけではないはず。
前回のnoteでも書いた通り、私は10年以上テクノポップユニットのPerfumeをファンだ。だが、デビュー記念日などで、Perfumeがここまでの完璧な流れを用意していたことは、今までなかったように思っている(単に忘れているだけかもしれないが)。
SixTONES、そしてSixTONESの周りにいるスタッフたちは、ファンがどうすれば喜ぶか、何を望んでいるのかをちゃんと分かっている。本当に抜かりないな…と感心してしまった。
少し話が逸れるが、この日の夕方、私は買い物へ行くときにSixTONESの楽曲「光る、兆し」を聞いていた。まだファンになって2ヶ月が経ったばかりのど新規中のど新規だが、この曲を聞いていると、どこか懐かしさを感じてしまう。色々考えて、はっと気付いた。「光る、兆し」は、Perfumeの楽曲「Dream Fighter」「STAR TRAIN」と雰囲気が似てるのだ。
2008年の秋、Perfumeは活動開始以来、目標としていた武道館ライブを開催した。その直後に発売されたのがDream Fighterである。
最高を求めて終わりのない旅をするのは
きっと僕らが生きている証拠だから
Perfume「Dream Fighter」より引用
そして、結成15周年&メジャーデビュー10周年の2015年の秋に発売されたのがSTAR TRAINだ。STAR TRAINは、彼女たちのドキュメンタリー映画「WE ARE Perfume -WORLD TOUR 3rd DOCUMENT」のために中田ヤスタカが書き下ろした楽曲である。
気づいてくれる人がいる
誰も見向きもしなくても
肩を組んで、笑ってきた
僕らはきっと負けない。
…
いつだって今が、常にスタートライン。
Perfume 「STAR TRAIN」より引用
「挑戦」というのは、ある意味自分たちの首を絞めるのと同じだと思う。
それでも生きる証拠を得るために、最高な瞬間を求め、終わりのない旅を続けたり、いつだって今が常にスタートラインと思いながら、挑戦をし続けるのは、PerfumeもSixTONESも、それ以外のアーティストもみんな同じなのだが。
どうしても重ねてしまうのは、私が2組のファンだから、なんだろうな。
「光る、兆し」は、2019年にCMソングとして書き下ろされた楽曲で、もがき苦しんだグループ活動での苦悩、グループやメンバーの存在意義など、SixTONESの歴史が色濃く刻まれている。先ほど紹介したPerfumeの上記2曲に比べると、遥かに感情移入しやすい。そして、SixTONESにとってこれからも大事な節目で歌われる曲になるんだろう。
波風に揉まれたって 先が行き止まりだって
ぶつかり続けたら壁は砕けるんだ
出来ないことなんて 全部頭ん中の妄想さ
始めることだけが、明日を変える
by.SixTONES「光る、兆し」より引用
「光る、兆し」の中でも、私はこの歌詞が最も好きだ。SixTONESの歴史もだが、自分の人生や出来事にも当てはめられることができるから、いつもここで泣きそうになる。0から1へ進むことは、常に困難を極めるけど、始めることだけが、明日を変える。何かに諦めそうになったり、進むことが怖くなったりしたとき、この歌詞は人生の様々な場面で力をくれそうな気がする。
さて、サプライズ生配信の終盤、この楽曲がバックで流れながら、メンバーから一言ずつ挨拶があった。中でも田中樹の挨拶に心打たれた人も多いはずだ。
様々な仕事をしているが、僕たちは「アイドル」であることを強く持っていなければいけない。アイドルの定義はあやふやで、なんだろう?と考えるが、みんなが応援してくれているから、僕らはアイドルでいられる。アイドルの肩書きをくれる、輝きをくれるのはみんなである。正直辛いこと、疲れることも沢山あるが、「みんなが待っていてくれること」それが僕たちが頑張れる理由になる。みんなから頑張る理由をもらえているように、僕たちもみんなに頑張る理由をあげられたら、と思っている。
Perfumeもライブや記念日などの大事な節目では、あ〜ちゃんが言葉をくれることが多いが、記念日の生配信、編集もできない状況の中で、アイドル SixTONESとファンの関係性を丁寧に再提示してくれた田中樹には、本当に脱帽だった。多分、彼のことだから事前に伝えたいことを考えていたんだろう。
そして、もしかすると東海ウォーカーで連載中の松村北斗のエッセイ「アトリエの前に」の内容を踏まえているのでは?と考えれば考えるほど、今回の田中樹の言葉が尚更深く突き刺さる。
プロならこのくらい当たり前かもしれないが、ここぞという時に「ファンが欲しい言葉」をちゃんと与えてくれる人がいるだけで、ファンにとっては心の持ちようが全く異なってくる。今回の田中樹の言葉で「SixTONESはきっと大丈夫」と安心したファンも多いはずだから。
(なお、「アトリエの前に」は楽天ブックスやdマガジンで読める。今月号は是非読んでみてほしい。)
こんなど新規中のど新規な私が言うのもなんだかおかしな話だが、SixTONESの長い旅は始まったばかりで、遥か遠い未来のことなんて誰にもわからない。
でも、果てしないこの道の先へ突き進もうとしているSixTONESとファンの「互いに頑張る理由を与えられる関係性」が、この先もずっと続くことを心から祈っている。