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【絵本野山草】(29) 蓮(はす)・小毬(こでまり)・大でまり

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『畫本野山草 [5]』
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『畫本野山草 [5]』

れんの花

一名  荷葉かえう  一名 ふよう
四五六七月まで   唐蓮たうれん
花、かずをゝし。つまべにあるひは、そこ紅、又、こくいろ、白花有。金糸きんし、れんぎんし、れん、といふ有。花びらにすぢのごとく成物見ゆる。天竺てんぢくれんあり。色、本紅、花びらほそく、つじちいさく、はなびらをれいり万瓣まんえのごとし。これに白花有。又、白に蓮紅有。本紅白さきわけ、大蓮あり。

※ 「さきわけ」は、ひとつの株の草や木に、色の違う花が咲くこと。咲分さきわけ

荷葉めうへ
葩ウスベニノ仕立ハ
ヱンジググサキヨリエンシクマ
内ソトトモ同
又モトヨリゴフンスシ入

およそはすは、まづうき葉、二かい葉、三かい葉 出て、花のつぼみを出す。葉、次第しだいにさかへて花を開く。花ひらき、其花をちて、ばうとなる。しかるに、うき葉とは、水の上にうきながるゝをいふ。又、二かい葉は、つぎに出て水の上よりすこし出てひらくを、二かいといふ。三がい葉は、二かいの上にまき葉立をいふ。三がいば出てつぼみを出して、葉盛して、花開、花ひらいて、落て房と成。

※ 「成」は、なる。

荷葉かえうえがくは、先 葉さかりにして、葉のすこし下に花をあしらふ。蓮花を画は、花の少し下に葉をあしらふ。又、れんえがくは、蓮房れんばうたかくあげ、葉花ともに少し下にしらふ。あるひは、花をちらす。葉をからして、水に入、蓮房 とばして、土中どちう●●●(■は宀+百)、芽出蕐盛、房實飛、此三ツ 「過現来」ト云。

爾雅じが』に「芙蕖ふぎよなり。そのくき、其、其花は■蓞かんたん(■は艹+凾)、其れん、其ぐう、其中はてき」。『格物叢話』に「荷花かくは重臺のもの、雙頭さうたうのものは、以てずいとす」。又、あかつき朝日てうじつをきたれみづいるものあり。睡蓮すいれんと云。荷花かくはを「水芙蓉すいふよう」とも「そう芙蓉とも」云なり。

※ 「芙蕖ふぎよ」は、蓮の花のこと。ふきょ。
※ 「ぐう」という漢字は、蓮の根の意。
※ 「てき」という漢字は、蓮の実の意。
※ 「荷花かくは」は、蓮の花のこと。かか。


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『畫本野山草 [5]

  一名いちめいは、■蓞かんたん(■は艹+凾)  一名は、水芙渠すいふきよ
あり 千葉せんえう 千葉しろ 千葉 べに 
あり 紅邊こうへん白心はくしん 
あり 馬蹄蓮ばていれん 多而をゝくして をゝい也
あり ■荷ぼくか(■は里+儿+土)  ならびに  かなり
うゆ 華山くはさんに  山頂さんてうに あり いけ
しやうず 千葉蓮せんようのれんを  ふくして 羽化うくはす
鄭谷ていこくが しに 所謂いはゆる太華たいくは峯頭ほうたうのぎよく井蓮せいれんこれなり

蓮花風吹

南海なんかいに あり ねふりて  朝日てうじつに よるたれて いる  上レ みづに とし あれば みづ
すなはちはやくひらく(癶+弓+矢)
かつて 端伯たんはく もつて 浄友じやういうと 
また あり 金蓮きんれん 銕線てつせん 蓮白れんはく 花大くはたい 乙蓮いつれん  はなはなはだ かたし ひらき
もと ごとし 芭蕉ばせをの   ごとし いもの
また なづく 観音芋くはんをんいもと 
青蓮せいれん あるひはいはく  すなはち 銕線てつせんれんと
しんの 佛圖澄ぶつとしやう とり はちを もり みづを たいて かうを じゆす これを
鉢中はちのうち しやうず 青蓮せいれんを 
はな 光色くはうしき 耀かゞやかす ひとを
四五月内しごぐはつのうちにひらく

※ 「鄭谷ていこく」は、唐の詩人。
※ 「佛圖澄ぶつとしやう」は、五胡十六国時代の西域の僧。仏図澄ぶっとちょう
※ 参考:『草木栽培書()』(国立国会図書館デジタルコレクション)

蓮房 れんばう
キ クサノシルクマ 四バン六セウ
白キ白


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『畫本野山草 [5]

小でまり

はな三月。花の色、白にして、形をでまりに似たり。葩五つ有。中にさかやき有。葉のかたち、のこぎり有。下つけのごとく、葉かた/\について、はな間こより出る。木立こだち、やまぶきのごとく、よこになびきはびこる。花、段々だん/\とつらなる也。又、くき赤黒なるは、葉にこはみあり。

※ 「下つけ」は、下野草しもつけそうのこと。
※ 「こはみ」は、こわみ。硬くてごわごわしていること。

小毬 こでまり


おでまり

三四月。「粉團ふんだん」は、はなの名なり。葉、両方へむかひ出て。かたちまろく、大くちゝみ有て、「ゆすら梅」のはに似たり。木の高さ、丈餘じやうよ。枝同、両方へ出て四方へふる。其すえに花有て、まりのごとし。はなびらもと一やうにして、五つわかる。花一りんのかたちは、白梅はくばいのごとく、花あつまる。あるひは、てまりのごとく、花にうつりあり。うてななし。花もとせうにして、日をかさねて大となる。初開て、青し。盛にしろく中心まんなかあな有。

繍毬花しうぎうくは 繍毬しうぎう なし はなを
はなはだ しげくむらがりなし
ごとし てまりの
ゆへにもつてなづく
もつて 八仙花はつせんくはを  つげば 故枝ふるえだに やすし しやうじ

※ 「丈餘じやうよ」は、一丈(約3メートル)あまり。丈余じょうよ

大てまり



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