【絵本野山草】(3) 午時花/錦帯花/鹿子百合/仙翁花/のこぎり草
午時花
花六七月
一名 金銭花 又、子午花
葉のかたち、ずた草に似たれども、のこぎり小く、はなにこはみあり。花のかたち ぼけの花に似て、さきとがり、よこ花開。赤ぼけに似て、色又濃紅にして見事也。花がくへさき至極いかりつよく、うちにあかき ざい五つたち、中心に蘂一つ立。しべともにあかし。葩 の底にもゝいろあり。其次に少し紫有。此しべ 惣あかし。臺 長春 に似て、又、たねのふくらなし。つぼみたねに似て、たね又つぼみに似たり。長一二尺ばかり也。
※ 「ずた草」は、喘息薬種(ユキノシタ科)のことでしょうか。
※ 「ぼけ」は、木瓜のこと。
※ 「長春」は、長春花のことと思われます。金盞花の別名。
錦帯花
一名 夕錦草
葉、蕃椒 に似たり。葉に大小有。はなは山さくらに似たり。又、花の莖長くして、はるか下に 臺あり。花のいろ黄あり。又、紅有。半黄半紅あり。とびいりあり。一本のうちにいろ/\有。また黄ばかり、べにばかりあり。葉むかひあひ出て、えだも両方へはびこる。はな七八月にさくなり。
※ 「夕錦草」は、オシロイバナの別名。
※ 「臺」は萼のこと。
鹿子百合
六七月花有。
葉、ほとゝぎす草に 似たり。花白にして紅のくまあり。又、紅むらさきのほしかのこあり。葩六枚、花大さ 鬼百合のごとく、茎同じ。高さ四五尺ばかりなり。
せんのうげ
剪秋羅
花葉とも がんぴに似、色本紅有。白あり。うすきあり。紫有。むらさきしぼり有。とびいり有。高さ二尺斗。六七月花さく。
剪春羅花有五種 春夏秋冬各以時名
春夏二羅色黄紅不佳 獨秋冬紅深色美
亦在春時分種 又一種色金黄美甚名金剪羅
※ 「がんぴ」は、岩菲。ナデシコ科の多年草。前春羅、前夏羅と書いて「がんぴ」とも読むようです。
剪春羅、花五種あり。
春夏秋冬、おのおの時を以て名づく。
春夏の二羅、色黄、紅。佳ならず。
ひとり秋冬のものは、紅深く色美なり。
又、春時種を分かつ。
又、一種、色、金黄、美 甚だし。金剪羅と名づく。
のこぎり草
一名 がんぎ草
又、もしほ草 又、はごろもといふ
一本に二三十莖生たつ。高さ二尺ばかり。葉せまく 長して、ふちに鳫歯有。夏秋の間はなをひろく。細小の菊花に似たり。いろ紅白二いろあり。紅花を 上品とす。はな五月にあり。また 九月末にあるは 紅むらさき色なり。
※ 「鳫歯」は、雁歯(雁木)でしょうか。橋の上の横板のこと。雁の列や、歯並びのように一枚一枚食い違って並ぶところから。
此『本草圖經』等其生如蒿作叢高五六尺一本一二十莖秋後有花出於枝端紅紫色形如菊形能合之。『史記龜策傳』言蓍状極 ■[忄+癶+土] ■[匕+女]
悉不可信惟神之爾。『詩經』浸彼苞蓍葛風下泉章。『朱註』著筮草也。
これ『本草圖經』等に、其 生 蒿の如し。叢を作るに、高さ五六尺、一本 一二十莖、秋後 花あり。於 枝端より出づ。紅紫色形、菊の形の如し。よく之に合す。
『史記龜策傳』に言ふこと、蓍状を 極 ■。■ に 悉く信ずべからず。惟 之をのみ神にする。『詩經』かの 苞蓍を浸す。葛風下泉の章。『朱註』に著は 筮草なり。
※ 「著」は、蓍のことのように思われます。
※ 「筮草」の「筮」は、易で占筮のために用いる五十本の細い棒で、蓍萩の茎が使われたそうです。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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