【梅園魚品図正】(18) 松魚(かつを)/鰹魚烏帽子(えぼしうを)
松魚 カツヲ
『東醫寶鑑』出 松魚
『■鑑』曰、性平味甘 無 毒。味 極 珍、肉肥 色 赤 而 鮮明、如 松節 。故 為 松魚 。生 東北海 云々。 [■は宝+貝]
『常陸国志』出 鰹魚
或曰、肥満魚。
※ 「松節」は、マツ科マツ属のアブラマツ、バビショウ、アカマツなどの枝に生じる瘤状のもので、漢方薬として利用されるそうです。松節。
『古事記』及び『萬葉集』出 堅魚
『順和名抄』曰 鰹魚 加豆乎
『式文』用 堅魚 二字
『雜字簿』 鉛錘魚 カツホ
『東醫寶鑑』の松魚に充は非也
松魚不載『本草』 『東醫寶鑑』に始出
切割て、蒸し、なま干なるを、生干䲙と云。干乾したるを 土佐州、及 鎌倉、熊野より多く出。鰹節、土州より出るを 為上品。相州小田原、又、伊勢より出るを鰹の鹽醢と云。為 名産 。
今土佐より煮取を出すナマリブシを製したる跡の煮こゞりを 醢とす。
乾鰹 カツヲブシ
五六月 間、土人、採 松魚 用 鹽水 蒸 乾、為 脯。味、勝 生者 。倭俗、呼 鰹節 。無 毒。能 調 和 百味 。
『古事記』『萬葉集』、及び、淡海公 作所令、『順和名抄』等 書、作 堅魚 後世 合 為 一字 、用 鰹 字 。堅魚 非 生松魚 。
日本上古、無 食 生松魚 。只、為 脯 。而、其 堅 如 石。故、作 堅魚 。以 『徒然草』之説 可 證 。鎌倉 松魚、昔 下民 無 食 。後世、况 於 貴人 皆 多食珍 。年 、四月朔日 定 初松魚 最賞翫 。
※ 「鹽水」は、塩水。
※ 「為 脯」の「脯」という漢字は、ほし肉の意味。
※ 「淡海公」は、藤原不比等のこと。
※ 「况」は、いわんや。
※ 「朔日」は、ついたち。一日。
※ 「翫」は、味わうという意味。
鰹魚烏帽子 エボシウヲ
烏帽子魚、堅魚 多く集る時、魚に先だつて游行すと云。
乾たる者 得 之。故に其まゝ記す。
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筆者注 『梅園魚品図正』は、江戸時代後期の博物家、毛利梅園による魚図鑑です。説明文書は漢文体が中心でのためパソコンで表示できない漢字が多く、漢文の返り点と送りがあります。読みやすさを考え、パソコンで表示できない漢字は □ とし、名称の場合はできるだけ [■は〇+〇] の形で示すようにしました。
また、漢文の返り点と送りはカタカナと漢数字、振り仮名と送り仮名はひらがなで記載しています。
この作品に引用されている文献については、こちらの note を参照してください。 → 【梅園魚品図正】文献まとめ
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