【絵本野山草】(16) 銭葵/びやう柳/くはん草/紫陽花/山紫/秋葵
銭葵
小葵、兎葵。 葉 形、戎葵に似たり。然ども丸し。花、大さ 銭のごとく、桜草の花に似たり。いろ白有。うす紫有。うす紅有。高さ三四尺ばかり。但、花は、はのあい/\より出、葉見事なるもの也。四五月あり。
びやう柳
金糸柳。花、黄色にして、桃のごとく、しべ、黄にして糸のごとし。葉、長じて柳のごとし。又、木細ふして、糸のごとし。葉は両方に封ず。たてに延ず、地にはふ。
金絲桃花 如 桃。而 心 有 黄鬚 。鋪 散花外 若 金絲 然 亦 似 根下劈開 。分 種 三四月 花開。
※ 「びやう柳」は、美容柳、未央柳。
くはん草
花いろ、紅うこん、かたち、ゆりのはなのごとし。葉すけに似て大し。花三月。
※ 「くはん草」は、ワスレグサ(忘れ草)の別名、萱草。
紫陽花
しの立、をでまりに似て、高五六尺、葉、両々對して似たり。又、かたちは、桜に似て、こまかなるきざみ有。花あつまり咲。牡丹一りんの大さ、をでまりのごとし。又、大小有。葩四枚にして、大は色白、中はあさぎ、小は紫にして青也。又、色白有。うす紅有。黄あり。四五月はなひらく。
※ 「をでまり」は、おおでまり(大手毬)のことと思われます。
※ 「あさぎ」は、浅葱。
山紫
小しきぶの木に似て、枝しだれて、花は少しきなり。五つはなびら。四五月咲。秋実有。色、藤紫 ふさのごとく、葉、皆よめなのごとく相むかひつく。
※ 「小しきぶ」は、小式部。
※ 「よめな」は、嫁菜。
あき葵
一名、かうぞ。又、とろゝ草ともいふ。花のかたち五月葵に同じ。葉のかたち、とりかぶと、あるひは、あさのはのごとく、ほそ長し。葉に大小有。大は一尺余、又、莖長く、はこはくとがり、又、のこぎり有もあり、なきも有。但し、形すさましきもの也。花、黄白くして、そこにこき紫のきほひ有。中のしん、ふように同じ。花にふくろ色その外に五の臺からむ。秋の葵といへども、夏の土用より七八月までさく。高六七尺ばかり。
葵の種類多し。花黄なるを蜀葵と云。花の小なるを銭葵、或は、から葵と云。花、赤きを紅青いと云り。
傾 日。『説文』黄葵つねに葉をかたぶけて、日に向て其根をてらさず。日向葵を云か。□ 足。左傳 葵、猶 能 □ 其足 と云り。
※ 「はこはくとがり」は、葉 強く尖りと思われます。
※ 「説文」は、後漢時代の漢字辞書『説文解字』のこと。
秋葵、一名 黄蜀葵。『説文』黄葵、常 傾 葉 向 日、不 令 照。其根 虞絮 □ 渥 各 有 賦。花 將 落 以 筋 取 浸 菜油内 治 湯火瘡 。甚妙。
集解
禹錫 曰、黄蜀葵 近道 處處 有 之。春 生 苗。葉 頗 似 蜀葵 而 葉尖小 多 刻缺 。夏末 開 花。浅黄色 六七月 採 隂 乾之 。
宗■ [■は奭+一] 曰、黄蜀葵 與 蜀葵 別種、 非 是 蜀葵中 黄者 也。葉心 下 有 紫檀色 。摘下 剔散 日 乾之 。
※「集解」は、解釈を多く集め、まとめること。集解。
※ 「禹錫」は、唐時代中期の詩人・政治家、劉禹錫。
筆者注 ●は解読できなかった文字、□はパソコンで表示できない漢字を意味しています。
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