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【梅園魚品図正】(59) 䱐魳(いるか)
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乙未閏七月廿六日 改真寫
『兼名苑』云
䱐魳 イルカ 一名 鯆□
一名 ■[魚+敷]■[魚+常]
一名 江豚
『塩海異物志』 䱐鰤 イルカ
海産無鱗 大魚色黒し 一浮一没する也。
『本草綱目』 海豚 イルカ
ユルカ 筑前南部
予、文政十一子年六月遊水稽古舟中にて、両國橋間に海豚の縄にて整たるを見る。其勢あたかも雷獣の如し。頭の鹽吹より水を吹て、如シ 水鉄砲ノ 。其形狀、鮪に似て其大八九尺あり。則、舩中に筆を取、暫く舟を止、寫之。此者両国の商人、見世物に出せる由、鯨と名を偽り見せる。此圖しばらく失ひしに、今又箱中に見當りしに改清書して此に出す。
考るに、海豚の肉 似テ 鮪ニ 其色白し。魚商夏月多く、マグロと呼て賣れり。日本橋魚市に二つ三つ切になしたるを見ゆ。カジキ鮪は、又、一種の者也。鮫の類也。海豚は鮪より肉硬し。油多くして鱠になしがたし。冬月味尤隹し。海豚一疋を漁夫得れば、油を多く取。民用に徳あり。鯨に類す。
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筆者注 『梅園魚品図正』は、江戸時代後期の博物家、毛利梅園による魚図鑑です。説明文書は漢文体が中心でのためパソコンで表示できない漢字が多く、漢文の返り点と送りがあります。読みやすさを考え、パソコンで表示できない漢字は □ とし、名称の場合はできるだけ [■は〇+〇] の形で示すようにしました。
また、漢文の返り点と送りはカタカナと漢数字、振り仮名と送り仮名はひらがなで記載しています。
この作品に引用されている文献については、こちらの note を参照してください。 → 【梅園魚品図正】文献まとめ
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