
【絵本野山草】(28) 風車/鉄線花/唐松草/富貴草/葉鶏頭/雁来紅


風車
花、三四月有。花のかたち、くるまのごとし。はなびら八枚にして、うちにしん有。花に数多し。白一重、うちむらさき、一重べに、紫ひとへ、むらさき一重、こんいろ一重、又、雪白八重、ひとへ、千重、あるひは、ゆき白千瓣、白に爪紅色千瓣、かき紅千重有。いづれも花上品にして見ごとなり。はなの大さ四寸あまり。

鉄線花
三四月はな有。花、かざくるまのごとくにて、ちいさくしまり、花に千瓣、うち紫千重あり。もりあげさき、又、白とうち紫とのさきわけあり。又、纏枝牡丹といふは、「てつせん」の千重にあり。はな白く葩八つにして、面白ふなし。図にのせず。花の大さ二三寸。
※ 「さきわけ」は、ひとつの株の草や木に、色の違う花が咲くこと。咲分。
※ 「纏枝牡丹」は、風車(植物)の別名。


唐松草
三品。三四月花有。又、秋から松。花の色白く、かたち、から松のごとし。莖にくろみ有。又、紫花あり。草だち、白のから松よりはしなやかなり。又、白に紫のうつりあるも有。葉も白のから松よりはすこしあつし。「大からまつ草」といふも有。草たち、大にたちのびる。草なんてんといふ。又、黄から松有。葉すこしかはりあり。

冨貴草 金鳳花
花のかたち、梅のはなのごとく、しべたちのび、至極本金、黄いろ、大りん。葉、きくのはなに似て、丸くあつし。きれすくなく、草花の上品なり。はなに八重有、千重有、白ありといへども、見ず。また「さつまきんぽうげ」といふ。
※「大りん」は、大輪。


葉鶏頭
花形も葉も、つねの「けいとう」也。花は、紅と黄とさき分の三種有て、葉に白くまだらの斑あり。葉、さきまはりは青く、あをの中白く、青紫にうす雪のふりたるやうにて、花より見事なれば「はげいとう」といふ。花赤きは、葉にも白紅のまだら有。七八月。

葉地エンシク カキ エンシ
鳫来紅
がんらい紅は「にしき草」といふ。「葉けいとう」といふは、あやまり也。是にははななく、葉の間に実をむすぶ。「はげいとう」の花形は、けいとうのごとく也。けいとう花の同るい也。鳫来紅とは、鳫来る時分 見事なる故、一名也。葉 盛 八月。
※ 「鳫来紅」は、雁来紅。

葉地エンシク キ エンシ
老少年一名ハ 秋紅雁来紅 有 作詩 曰 翔雁南來 塞草秋。
未 霜 紅葉 已 先 愁 緑珠宴罷 歸 金谷 。
七尺珊瑚 夜 不 収。
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