【絵本野山草】(14) 鶏冠花(けいかんか)/玫瑰花(はいかいか)/花しやうぶ/せいらん草
鶏冠花
三月、苗生立。高さ五六尺、葉青柔なり。又、高一寸あまり有もはなさく。花に大小有。大は一尺余。色、三いろ、又、五品也。はな赤きは毛氈のごとく、黄色はうこんの染色のごとく、花形丸長み有を からけいとう といふ。白赤さきわけ、色々とび入色しますじ色々有。亦、小き丸有。五つ開て、小きたねをむすぶ。又、やりけいとうは、たまぼこなりにして、みな種也。是 三色あり。三月より十月まで有。又、野けいとうは、白うすむらさき有。野原に多くあり。
※ 「鶏冠花」は、けいとうの花のこと。
※ 「さきわけ」は、ひとつの株の草や木に、色の違う花が咲くこと。
※ 「たまぼこ」は、玉鉾。玉で飾った鉾のこと。
鶏冠 有 紅白二色 。又 有 一枝上 秀 出五色 者 甚佳。亦 木紅者 一名 壽星 雞冠、即矮脚、雞冠 亦 有 紅白二色 。或云即玉樹後庭花也。其葉甚肥可 入 饌。
玫瑰花
三月四月花ひらく。荊せうびのるいなり。葉は青出、花は紅紫色、ひとへ大りんにして、芍薬のごとく、実は丸く小さくとがり、りんごのごとく、うこん色にして、後じゆくして朱紅色。又、はなよりまさりて詠有。
時珍が曰、高さ二三尺、枝多く針あり。葉せうびに似て、へりにのこぎりあり。四月にはなひらく。大なるは 鉢のごとく、すこしきなるは さかづきのごとく、妙香 らんじやのごとしといへり。
※ 「せうび」は、薔薇。ばらの音読み。
※ 「大りん」は、大輪。
※ 「詠《ながめ》」は、詩歌を作ること。
※ 「時珍」は、『本草綱目』の著者、李時珍。
※ 「らんじや」は、蘭奢待のこと。正倉院に収蔵されている香木。
玫瑰花 甚 香喜壯 宜 不時分 種 方盛 年久則 槁。花 作 糕 佳。又 有 黄花者 亦 佳。但 不 香 耳。
花しやうぶ
漢名 泥菖
花、四五六月迄。ぬまあやめ ともいふ。葉にすじ入有。すじしやうぶと云。花に色数おびたゞし。柿五葉有。又、花むらさき色、花びらあつく、うけかゝへ咲、大こりんさつまうけさきといふ。花形いろともに同じくして、はなすこしちいさき有。桔梗さらさといふは、地桔梗に白ふとく、斑入、受かゝへさき、たてなり。のり合といふは、地白にうす桔梗うすくいる。いつくしまといふは、紅紫のしぼり也。染絹といふは、地白にうす紫の粟紋、花びらの中に入、花びらあつし。網の手といふは、地白にうす紅のすじほそく、あみのごとくふ入。千重の白といふは、たのよりは花びら多し。其外、白紅藤しぼり、るり色、数百種有。こと/\く書つくされず。其大がい也。
せいらん草
はなのかたち、らしやう門のごとく、いろうすきるりなり。葉は、みそはぎのはなによく似たり。葉に斑入あり。五月はなあり。
※ 「らしやう門」は、羅生門葛のこと。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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