江戸の花名勝会 十一 北組(坂東亀蔵)
兠 あらためは 忠臣蔵の 何段目
仮名手本所
元来 牛じま也 永代じま新地
写○ありて 本所と地名なるべし
※ 「仮名手本所」は、浄瑠璃の演目『仮名手本忠臣蔵』の「仮名手本」 と 赤穂浪士が討ち入りした吉良上野介邸のあった「本所」 を掛けています。
廾将の首を小桶に打入て
寺より里へ おくるはつもの
回向院境内 勧進大角力
トンツ
つらいくがいを 乗切る 明智
白い仕かけで 雲に籠
ぬしゆくゑ ○ し くらうつくした
くかいの此身 もゆるをねの火 不知火と
※ 「回向院」は、江戸時代後期、江戸の大相撲が独占的に開催されていた寺院。
※ 「勧進大角力」は、寺社や山門などの造営・修復のための費用を捻出するために開催された相撲のこと。勧進大相撲。
※ 「くらうつくした」は、苦労尽くした。
※ 「くかい」は、苦しみの多い世界のこと。苦界。
※ 「明智」は、すぐれた知恵のこと。
※ 「雲に龍」は、雲龍久吉(第十代 横綱)に掛けています。
※ 「不知火」は、八代海や有明海で、夜半に点々と見られる怪火のこと。不知火光右衛門(第十一代 横綱)に掛けています。
軍配に描かれている力士は、第十代 横綱 雲龍久吉 と、第十一代 横綱 不知火光右衛門 です。「両関さん江」とあるので、大関時代ののぼり旗のようです。
現在、横綱の土俵入りには「雲龍型」と「不知火型」がありますが、この二人の力士に由来するものです。
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江戸の花、名勝会には、「二八 楠田」「田舎そば」「一字 角力赤膏 旧○」という文字が見えます。
「二八」は、蕎麦粉と小麦粉を8:2の割合で作った蕎麦のこと、一方、「田舎そば」は、あらい蕎麦粉で作るつなぎの入っていない蕎麦です。
「角力赤膏」については、手がかりがありませんでした。怪我につける薬のように思われるので、「紫雲膏」のことかもしれません。紫雲膏は、熱傷や痔疾につける漢方薬の軟膏剤で、赤い色をしています。現在も、様々な製薬会社から紫雲が製造販売されています。
何か分かることがあったら、また追記したいと思います。
筆者注 ○は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖