【絵本野山草】(12) 花いちご/松本剪/小しやが/水河骨/かきつばた/芍薬
花いちご
花の形、江戸桜の千 ● 花に似たり。正中ほどうこん色有。葉はやまぶき草のはに似たり。しのだち、いばらのごとし。三月にさく。
松本剪
剪紅花、剪秋蘿。花に色数多し。紫松本は、花の色うすむらさきなり。から錦松本は紅に白のかすりしけし。銭川松本は、からにしきよりはかすりすくなし。白八重松本は、花びら六七枚より八九枚出る。花形松本は、花びらかさねさくにいろ本紅也。五月はな有。
※ 「がんぴ」は、雁皮。
参考:『高尚堂画譜 草花之部(松本剪)』『草木栽培書(剪秋蘿)』『花道古書集成 第一期第三卷 再版(剪秋蘿)』『和洋草花培養法(剪夏羅)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
小しやが
花、つねのしやがにて小さし。いろうすむらさきなり。立ひら白くうすむらさき、ぜんたい白もあり。葉同く小さく、三月はなさく也。
水かふほね
澤蓬草、四月花。葉あつくつや有。葉さき尖り、莖のもときれあり。くきふとく、葉 見事也。花又あつく、艶有。銀ばい草の花をあつくしたるごとし。黄紅有。紅といふも、咲出し黄にして、花のふけるにしたがひ紅色出る也。姫かうほね有。草立至極ちいさし。花葉ともに同じ。又、しんくれなひといふ有。花のうちあかく、外黄色なり。
※ 「しんくれなひ」は、深紅。
かきつばた
紫燕花。六つ出、五つ出、しぼり。四月、五月、四季さき。
花数多し。四季咲あり。ねずみ色有。白有。紫、地むらさきに白の斑入あり、鷲の尾といふ。地白に紫の粟紋、一処に入を舞鶴といふ。地あいきゝやうにて、花 殊外大りん有。濡きぬといふ。白六えう有。むらさき六えう有。大八ツはしといふも、いろ、葉花すぐれて大りんなり。村雲といふは、地うすねずみにむらさきのしぼり少し入。これに六えうあり一種、摂州吹田辺に花あり。いろ、舞つるのごとく、はなびら一ぱいに粟紋入、見事也。其外、色立しぼり、立ちがひ有も有。悉乃するに暇あらず。
※ 「大りん」は、大輪。
※ 「摂州」は、摂津国。
参考:『和洋草花培養法(燕子花)』『芸術資料 第一期 第三冊』
芍薬
四月中はなさく。数定らず多し。一重、八重、千重有。色大紅あり。大白有。薄紅、白うす、紅、そこ白内紅有。大葉、中葉、うす葉、白うす葉あり。底赤有。中の香に大白有。大黄、大白、銀しでといふ。大黄、金しでといふ。中葉、ふち黄なるをにしき立といふ。又、牡丹に似たるを牡丹立といふ。只、にほひみじかく小さきを上といふ。大なるを下といふ。又、中心に実、牡丹のごとく三つ立、五つ立、地より芽出、色赤長のびること、二三尺なるをよしとす。葉枝ともに、をも木にひきそひ天へ立也。葉に三の枝有。九葉、七葉、五葉、三葉有。亦、末を五葉にして、元に二葉両方むかひあふたるあり。
芍薬 生 中岳川谷及丘陵 今處處 有 之
准南者勝
春 生 紅芽 作 叢
莖上三枝五葉 似 牡丹 而 狭長高一二尺
夏始 開 花 有 紅白紫數種
子 似 牡丹 而小秋時 采 根
根亦 有 赤白二色 崔豹古今注云
芍薬 有 二種 有 草芍薬 木芍薬
木者 花大而 色深俗呼
為 牡丹 非也。
一名は何離、一名は白朮、一名は餘客、一名は犂食、一名は解倉、一名は鋌。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖