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『料理綱目調味抄』(6) 刺身の部/可用 刺躬魚の部

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [2]

刺身さしみの部

一書、何魚にも両身をさして、右板、左板といふ事有り。又、めなます、おなますといふ事あり。又、さしみとは、左の身、うち身とは右の身をいふと云々。

※ 参考:『南総乃俚俗(めなます喰ふ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

いり」と書は

いり酒也。「芥」と書は芥皷からしみそ、「生」と書は生姜皷、蓼酢、うど皷、葱皷、山葵わさび皷、胡椒皷、大根しぼり汁。

※ 「皷」は、味噌のこと。

「取」と書は

取合也。魚に魚、又、貝ゑびの類。權は、しそ、蓼、はじかみ、針糸くりせうが、又、きつ類。

※ 「權」は、けん

切方

刺線さしせんの差別誌也。

醤交あへまぜ

精進の指味、初より熬酒と掛るを云。冬にはあたゝめてかくべし。いり酒にはいつもわさび、又、生姜。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [2]

  刺躬さしみ  魚の部

こい

糸造り、子は煎り、ともにかはかし、いり酒、山葵。「取」水松、松菜。夏は冷水にって洗、平造り。しそ、たで、ともにあらい交盛まぜもり

※ 「取」は、取合とりあわせ

ふな

右におなじ。あらふ 事、未勘いまだかんがえず

みごい

右におなじ。洗てよし。

さけ ます

いり酒、山葵わさび、生酢、酢皷すみそ葱酢たです皷。

たい

平造り。春は子付もよし。かき鯛にも。「取」こたゝみ、さ●ゑひ、糸蚫いとあわび、糸いか、きす、さより。いり酒、生酢、山葵わさび酢、たで酢。

すゞき

平造り。調味、取合、右におなじ。

かれい

右におなじ。からしぬた。

まなかつほ

右におなじ。鯃もおなじ。からしぬた。

かつほ

平造り。強玉酢は、中原、善徳寺。芥蓼、生酢、大根擦汁、葱皷、塩酒にも。東國にてはなつの系物けいもつ。上方は冬。

※ 「中原」は、中原酢なかはらす。相模産の良質のお酢。
※ 「善徳寺」は、善徳寺酢ぜんとくじす。駿河産の良質のお酢。
※ 「系物けいもつ」は、景物けいぶつのことと思われます。四季折々の趣のある事物、またその場に興を添える珍しい料理など。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [2]

めじか

右におなじ。かつほに劣れり。

■にべ [■は魚+㚇]

平造り、紅腸べにわたともに造る。いり酒、蓼生、芥酢、葱皷ねぎみそ。夏日、● 前の系物也。他国になし。かたち、大すゞきのごとし。

ふか

皮を引、薄く筒に切り、ゆがく。芥酢、芥皷からしみそにらたで酢、同皷おなじみそ。皮の引様、くびすじに刀めを入れ、尾の方へむく。

くじら

皮身ともにうすく切、ゆがき、水に晒し、調味右におなじ。

鮮鱈なまだら

皮を引、平造り。雲子はゆがきて盛交。いり酒、生からし、蓼酢。

※ 「雲子」は、鱈の白子のこと。

交魚まぜうを

あぢ、さより、きすご、ゑび、いか、蚫、赤がい、等は 二三種交盛。水松みるなど ● 合てよし。いり酒、酢、皷、取合物によるべし。

※ 「水松みる」は、海藻の一種。海藻ミル。水松すいしょう海松うみまつ

海鼠なまこ

こたゝみ、いり酒、山葵わさび、魚に取合ても、一種もよし。冬はいり酒あつくしてかくべし。茶碗に入、むすもよし。

精進

いり酒、冬は温て。生蓼、酢皷、芥皷、蓼皷、番椒皷。

焼麩やきふ、あげふ、隠元いんげんどうふ、糸こにやく(味付)、ところてん、かんてん、わらび、うど、山のいもめ●、土筆、せり、じゆんさい、川苣、蓮根はす慈姑くはへ、はじかみ、めうが、防風、ちよろぎ、ゆりね、こく、うこぎ、なすび、ふ●たうなすび、椎茸しいたけ、かうたけ、いは茸、しやうろ、笋、むし笋、長さゝげ、わかめ、昆布(●●といふあり)、みる、松菜、ゑんす、いちご。

※ 「番椒」は、とうがらし。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [2]

いちこ●ときは、九年母か、だい/\を、袋をひらき、こまか成肉をよくほぐして、たねを去べし。す、夏のいり酒、差味に加てよし。菓子には、砂糖さたうをかくる。

なすび生漬の色よきを 引刺ひきさき、加ふるもよし。

菊花に、料理きくと云ものあり。いり酒、わさび、くりせうがを加へ、さしみによし。差味の取合ものによるべし。

右、差味、醤交、精進鱠、大様ことなる事なし。右の品々の内にて、時節の取合、作意次第 成べし。

※ 「いちこ●とき」は、苺擬いちごもどきと思われます。大根をおろして、酢と蜜柑をあえて、苺に似せて盛ったもの。
※ 「九年母」は、ミカン科の常緑低木。くねんぼ。
※ 「だい/\」は、だいだい
※ 「こまか成」は、こまかなる。
※ 「くりせうが」は、栗生姜くりしょうが
※ 「成べし」は、なるべし。



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