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【語源】日本釈名 (8) 宮室(出居・厠・城・柱・階・猿垣・鴨居・寺など)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本釈名 3巻 [1]

出居デヰ

内より出て客に對して居る家を云。出居は『東鑑』に出たり。

※「東鑑」は、鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』。

「すみか」也。鳥の「すみか」也。上古は、人も巣にすみし也。高き所には「巣」を作り、ひきし所には「いはや」をつくりしと也。

※ 「ひきし」は、ひきし。
※ 「いはや」は、いわや

「せき」は「ふせぎ」なり。

ホウタチ

『藻塩草』曰、むかし 道をありく時は用心のため、ほこをつきて兵具とせり。人の家に入ては、其ほこを妻戸に立かけ置けるが、きずの付けるゆへに、是をかくさんとて「ほうだち」をはしはじめたり。「ほうだち」は「ほこだち」也。篤信曰、古へほこをつきたるは、今の人やりをもたせゆくがごとし。

※ 『藻塩草』は、室町時代に編纂された連歌用語の辞書。
 『藻塩草 20巻【全号まとめ】』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「ありく」は、ありく。
※ 「ほうだち」は、方立ほうだて。参考:『東雅:20巻目1巻2』『倭訓栞:増補語林 下(ほゝだち)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「篤信」は、『日本釈名』の著者、貝原かいばら益軒えきけんの名。

カハヤ

川の上に作りて不浄フジヤウをながす、故にいへり。是、上古の事なるが、今も紀州の高野山、豊前の彦山などには、かくのごとくする也。一説、かわるきや也。

※ 「豊前の彦山」は、豊前国ぶぜんのくに英彦山ひこさん。日本三大修験道場のひとつ。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本釈名 3巻 [1]

シロ

高くして、遠き所より、いちじるくみゆる故、「しるき」と云意にて、「しろ」と名づくるなるべし。「る」と「ろ」と通ず。下を略せり。又、城は、必白土にてぬる、故に「しろし」と云意か。

マド

「せば戸」也。「は」と「ま」と通ず。「せ」を略す。「まど」は戸のせばき也。

ハシラ

「はし」は「あし」也。家の足なり。「あ」と「は」と通ず。「ら」は、たすけ字也。一説「はしら」は家のはしにあり。中にもあれど、はしにあるを要とす。

キダハシ

「きだ」は「キタ」也。段々ありてのぼるはし也。又「きざはし」とも云。段々きざみあるはし也。

ケタ

「かけわたす」也。略語也。

猿垣マセカキ

山里などに猿の通らざるやうに、ひきく垣をしたる也。「ましがき」也。

※ 参考:『和漢雅俗いろは辞典(ませがき)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「ひきく」は、ひきく。

榰柱スケ

家のかたぶくを、さゝふる柱也。「助」なり。

※ 「さゝふる」は、ささふる。支える。

鴨居カモヰ

なげしの下、戸の上の横木也。「かも」は「カミ」也。「い」は「板」也。又、「鴨」は、水鳥也。昔、火災のまじなひに鴨の居たるかたちを作りしにや。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本釈名 3巻 [1]

シキイ

「敷板」也。一説「し」は「シタ」也。「た」を略す。「きい」は「こゑ」也。相通す。下にありて、こゆる也。一説、鴫居なり。「しぎ」は水鳥也。昔は、火災のまじなひに鴫の居たるかたちをつくれりと云。

扠首サス

屋上のむなぎ・けたをさゝふる木也。和訓にあらず。音也。『和名抄』にいづ。

※ 「むなぎ」は、棟木むなぎ
※ 「けた」は、けた
※ 「和名抄」は、平安時代中期に編纂された辞書(和名類聚抄)
 『和名類聚抄【全号まとめ】』(国立国会図書館デジタルコレクション)

蘆雚エツリ

カベつり也。かべの下地を、よこたて、なはにてつるをいふ。「へ」と「ゑ」と通ず。

「てらす」也。下を略す。丹青タンゼイをぬり、金銀をちりばめて、てりかゞやく故なり。

※ 「丹青タンゼイ」は、赤と青。彩色の意。

簀子スノコ

「すく」也。其間すけり。「こ」はつけ字なり。

※ 「すけり」は、けり。隙間が空いている。

トコ ユカ

「ところ」也。人の坐臥するところ也。「ゆか」は「ゆたか」也。安座する處也。

殿トノ

宿直處トノヰトコロ」也。下を略す。

御殿ヲトゞ

「御とまり所」也。「とまる」は「宿る」也。



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