『料理綱目調味抄』(13) 雜の部(鮓・こけらずし・漬物類)
鮓
鯛、鱸、鯧、鯖、鯵、鰹、さわら、にべ、いはし、鰤、ます、鮭、しいら、鯉、鰻、此分、身取ても、又、平につくり、こけら鮓にも。鮒、鮎、わたか、はす、はへ、もろこ、おいかは、此類は丸ずし。此類、河辺にて鮮をそのまゝ漬れば、骨柔らか也。
鮒一夜塩して、其塩を洗、又、めしに塩加減して腹にこめ、眼に結て漬るを生ずしと云。鮒、鯖、骨をぬくべし。鯔は、七寸斗成を骨をぬき、能洗、古酒にたぶ/\と漬、一夜して上魚をかはかし、飯に塩を合せ腹にこめ、粽の笹に巻、桶に双べ、間々へ飯に塩合詰て、押を掛る。春は三四日、夏は二日になるゝ。
※ 「七寸斗成」は、七寸ばかりなる。
※ 「能洗」は、よく洗い。
※ 「たぶ/\と」は、なみなみとの意。
※ 「粽」は、ちまき。
※ 「双べ」は、ならべ。
鱗■ [■は魚+岑]
魚は右に記す。早鮓は、飯に酢少潅。取合、蚫、蚶、ゑび、たこ、いか、茄子、木くらげ、笋、しゐ茸、しそ、たで、めうが、はじかみ。精進は笋、茄子、茸類、うど。一書、雉子、身を平に造り、一夜塩して鮓に漬る。
※ 「めうが」は、茗荷。
※ 参考:『古事類苑 第44冊(こけらずし)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
鳥味噌 并 魚
白皷に、酒たぶ/\と入、鳥の毛を去り、丸ながら入て、連日煮れば、如 帛 なる時、扣て、漿。又、にる分量、鳩一羽、鮒一尾に酒一升。魚は鱗を去、右のごとし。鴨、鳩、雀、うづら、ひばり、鶏、鯛、鯉、鮒。
※ 「扣て」は、たたきて。
※ 「漿」は、醤油のこと。
※ 「にる」は、煮る。
味噌漬
鳧、鳩、うづら、ひばりは、日を経ても用。魚の切目に、鯛は経 日は、したるし。
※ 「鳧」は、かも。鴨。
※ 「魚の切目に、鯛は」は、「魚の切目、小鯛」かもしれません。
※ 「したるし」は、しなだれ、したしたとなること。参考:『大日本国語辞典 巻2(したるし)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
糟漬
鯛、鱸、蚫、みるくひ、うみたけ。一夜塩し、かはかして、かすに塩合せ漬る。鳥は、ひばり、うづら、鴨。
※ 「みるくひ」は、みる貝のことと思われます。
※ 「うみたけ」は、海茸。二枚貝の一種。
酒母漬
諸魚の塩つよき物、漬てよし。さし鯖、骨を去、●のごとく造り、かうじに酒水等分ひた/\にして壷に漬。外に塩不入。
※ 「さし鯖」は、刺鯖。背割りした塩さば二尾(二枚)を、一枚の頭をもう一枚の頭の部分にさしこんで、二枚一単位で売られていたことから、そのように呼ばれたそうです。
五盃漬
ほし魚、塩鯖、いわし、酒二盃、酢二盃、塩一盃に漬。五七日に桶に入、押かけ、なれて後、酒びてに用。生姜。
※ 「酒びて」は、酒浸て。魚、鳥肉、野菜などを、塩を加えた酒に浸すこと。また、その料理。
澤庵漬
武州のねりま、尾州みやしげ大根、たる斗干て、ぬか一斗、塩三升、麹三升に漬、押かくる。から漬也。水もれはとる、からづけ也。
※ 「武州」は、武蔵国。
※ 「尾州」は、尾張国。
※ 「から漬」は、辛漬。たくあん漬けのこと。参考:『日本大辞林(からづけ)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
莖漬
京の口細大根、江州の柳大根、蕪は東近江 長蕪。漬様如常。麹を袋に入、桶一つに四五共に漬てよし。ほしてあらはず。
※ 「江州」は、近江国。
※ 「如常」は、常の如し。
奈良漬
白瓜を吟味して如常割、中を ●分深くとり、瓜に塩厚くして、干事一時斗、塩水をとり、瓜を冷し、かすに食かげんの塩を合糟壱匁に瓜二つの積り、桶の底にぬかに塩交ぜ大分に敷ば、水気ぬかにしたゞり、瓜いづれもかたし。桶に合せ、中蓋を仕て、度々に押付置べし。其外、漬様品々有り。瓜、なすびなど漬交ぜるは悪し。大根、茄子、蓮根、皆、糟漬。
※ 「塩交ぜ」は、塩交ぜ。
※ 「したゞり」は、滴り。したたる、しただる。
酴醸漬
どぶろくに糂汰を交、漬るもよし。かすに白皷合ても。瓜、なすび、大こん、はじかみ、何れも水けを去て漬る。
※ 「交」は、交ぜ。
※ 「糂汰」は、糂汰味噌。五斗味噌のこと。
※ 「皷」は、味噌のこと。
阿茶蘭漬
酢をいり、あつきに漬る。酢一升、塩三合、なすび、はじかみ、めうがのこ、はす、牛蒡。塩鯖、いはし、貝類。
※ 「めうがのこ」は、茗荷の子。茗荷の花穂のこと。
酢漬
梅酢もよし。米酢、器物の下へ粒がらしを入、漬れば、かびず。はじかみ、めうが、なすび、しそ、乾して漬る。
※ 「かびず」は、黴ず。
漬松蕈
水一升、塩四合、六合にせんじつめ、茸の間へ松葉を置、漬る。茸は軸の中迄通程ゆがく。しめじ、初茸、同前。
※「せんじつめ」は、煎じ詰め。
※ 「中迄通程ゆがく」は、「中まで通るほど湯がく」と読みましたが、誤読しているかもしれません。
漬笋
げんのうと云を、皮を去り、ゆでゝ、水一升、塩四合、六合にせんじ詰、ひやして、笋の浮上るほどにして、押をかけ、風を入べからず。用の時、二●る塩出す。又、松茸、笋、能茹て、水なしに塩に漬るもよく。
※ 「げんのう」は、玄翁。まだ短く柔らかい状態の筍のこと。参考:『最新野菜料理法:実地経験 一名・台所重宝記』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「能茹て」は、よく茹でて。
漬茄子
米五升、こわき飯に焼、冷し、糀五升、めしにもみ合、桶に入、三日に甘くなる。又、●● 當用には、塩二升入、なすび漬、十日斗して用。春迄たばいには、八日頃冷気になりて漬る。茄子、大小あれば数は見合たるべし。
※ 「焼」は、ここでは炊くという意。
※ 「當用」は、当用。さしあたって用いること。
※ 「たばい」は、貯い。貯ふ。蓄えること。
瓜漬
白瓜、二つに割、塩に漬、桶に入置。用時、塩を出す。ほし瓜のごとく用。
浅漬
大根、本末切揃(ねりま)、糀一斗五升、塩一升三合、大石二斗押置、四五日にして水上る。一ヶ月して用。
漬梅
丸山梅は、梅一升 無疵、又、三升蒸て、肉をこし、此肉に塩を合せ、一升の梅を漬る。風通べからず。
※ 参考:『日本料理法大成(漬梅・丸山梅)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖