【絵本野山草】(9) 時計草/春蘭/時鳥/桜草/春蕙草/やまぶき/雪の下
時計草
ほじろ草ともいふ。花色白し。花■立 [■は艹+渋の右側] 、かたち風車のごとく、内に茶筌のほのごとくきざ有。二廻り立、其とまり紺色也。其うちに高砂百合のごとくなるもの、五つ長く立、花の底黄いろ、うちの方白く、黄色のふち取。又、其うちに、本紫 わらび手の丁子がしら、蜘蛛手のしん立、そのしんの根に紫色 髪すじのごとく、小ほそきものしべにて、取廻しくも手のしんのうち、亦、茶色 ●嚢花の実のごとく成もの長く立。花四つ時より開き八つ時迄 ●● へ日に向ふ。花しべのきざ廻ること時計のごとく、四月より咲出し、七八月まで咲。
※ 「きざ」は、刻でしょうか。きざみつけた筋のこと。
※ 「わらび手」は、蕨手。早蕨のような先端が巻き込んだ形のこと。
※ 「丁子がしら」は、丁子頭。灯心の燃えさしの頭にできる、丁子の実のような丸い塊のこと。
※ 「蜘蛛手」は、クモの足のように一ヶ所から四方八方に分かれていること。
※ 「髪すじ」は、髪筋。髪をとかしたあとの筋目のこと。
ウテナ白六 クサノシルクマ ハナビラ内白 白六クマ
又 ソト白サキヨリ白六クマ ハナビラ十枚 ウテ十枚
○ 三ツ丁子カレラムラサキレクトモ
○ 五ツシモクカシラキ色シク白六
○ 又 ウリガタ中シントモ 白六
○ 又 中シンノキワノクロミ 又中ホドノクロミ 花ムラサキキヤウ
○ 中白シヘ又ソト中ノシベ白
葉一ハン六セウ
春蘭
一名、獨頭蘭。葉、蘭に似て小し。春、白うす紅の花を開く。らんのごとし。二月花。
郭公草
花の形、桔梗の花びらの ●● りにて細手也。色数多し。白あり、柿紅有。又、本黄、うす黄有。花びら白く、内に黒紅色のほし入を山ほとゝぎすといふ。葉、さゝばにしてあつく、莖をまいて ●●葉の上に黒きほし有。又、なきも有。莖葉ともにうすき毛艸有。うぐひす草とよぶも、花よりわかちてよぶ也。九月花咲、長二尺あまりなり。
さくら草
さくらな。所多し。三月より四月迄花さく。花の形、桜花のごとく、しのだち廻り咲。花に色数多し。白、或は 雪白、紫、又、咲分、うす紫、飛入有。咲分桜草は、今のしぼりにあらず。一りんの花びらに紫と白と色分る。うす紫は、花少し大りん、小町桜草といふ。飛入は、しぼりさくら草、錦桜草、又、咲分さくら草といふ。長六七寸。
※ 「咲分」は、ひとつの株の草や木に、色の違う花が咲くこと。
※ 「飛入」は、草木の花の色に他の色が入って斑になったもののこと。
※ 「一りん」は、一輪。
※ 「大りん」は、大輪。
春けい
三月花。葉、しらんに似て、ひろくやはらかなり。はなのかたち、らんのごとく、色黄うこんなり。葉にしろきほしあり。
やまぶき
棣棠、酴醿花。花、はなはだ黄いろにして、かたち庭ざくらのごとく、葉は金のういばらのごとくちゞみあり。一種は一重。此花、正ざくらのごとく、又、色に二種あり。一種は白く、しの立、いばらのごとし。二三月花咲。又、秋より冬迄咲く。かへり花も有。山原に生ず。
※ 「かへり花」は、帰り花。返り咲きをした花、二度咲きの花のこと
ゆきの下
一名、石荷。又、虎耳草といふ。花三月咲。真中より蕨のごとく出て、花形、雪のごとし。葩三枚は小さし。二枚は大にして長し。花色白、葉の形丸く、雪輪のもやうのごとくにしてあつし。葉のうら、若葉は本紅古はは薄紅也。表に薄白き筋有。根下より長き蔓出て、先にめがい生ず。地に根ををろす。
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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