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マティスの切り絵と礼拝堂のデザインに圧倒されたはなし。
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マティス展ってちょっと前に都美術館でもやってなかったっけ、とスルーぎみだったのですが、同じ画家でも切り取り方が違えば新鮮な展示になるんですね。
そんな気付きを得た「マティス 自由なフォルム」の感想です。
国立新美術館は開業日から行き慣れてるんで(実は館内に足を踏み入れた1人目の一般客。テープカットも生で見たよ)サクサク行ってサクサク手荷物預けて展示室に入りました。
展示構成
Section1 色彩の道 | Ways of Color
Section2 アトリエ | The Studios
Section3 舞台装置から大型装飾へ | From Décor to Large Decorations
Section4 自由なフォルム | Forms in Freedom
Section5 ヴァンスのロザリオ礼拝堂 | The Rosary Chapel in Vence
マティスは1941年の腸閉塞手術後に車椅子生活となり、油彩から切り紙絵にシフトします。
※手術以前も切り紙絵の作品はあります。
Section1からSection3までが手術前、Section4とSection5が手術後の作品となります。開催概要から、本展覧会のメインは後者と言って良いでしょう。
本展はフランスのニース市マティス美術館の所蔵作品を中心に、切り紙絵に焦点を当てながら、絵画、彫刻、版画、テキスタイル等の作品や資料、約160点超を紹介するものです。
ちなみにSection4の後半から写真撮影可能です。
個人的見どころ
マティス夫人の肖像
すいません初見で女性には見えませんでした……たぶん鼻と唇の下の影が緑なのが原因。
マティスと聞いてパッと思いつく野獣派時代の油彩画。人物の輪郭線は太い筆でザクザク描かれ、瞳と最低限の陰影だけがハッキリとした色で塗られています。
塗られてないところの面積のほうが大きいんじゃないでしょうか。
この絵に限らず下描きっぽい線が見える絵はいくつかあって「これって未完成?」と悩むこともしばしば。
芸術って難しい……。
でも「マティス夫人の肖像」は特に「これ以上手を入れるのは『無い』な」って思えるんですよね。
ブロンズ像のシリーズ(ジャネット、アンリエット、貝殻のあるヴィーナス)
画家が立体物(とくにブロンズ像)も手がけることはそんなに珍しくないですが、展覧会には数個しか飾らない印象です。
ところが今回は一区画埋めるぐらい多くのブロンズ像が展示されています。「自由なフォルム」がテーマなので外せない、と言ったところでしょうか。
だとしたら、注目すべきはシリーズもの!
特に女性の頭部がモチーフのシリーズ「ジャネット」「アンリエット」はナンバリングが上がるに従いフォルムが抽象的になっていくのが解りやすいです。
まるでアフリカの仮面のような見た目のも。
そして「貝殻のあるヴィーナス」はⅠもⅡもすべてが溶けてフォルムだけが残った、と私には見えました。
アトリエにあった調度品と絵の具パレット
で、出たー!! ジャポニズムと並んで画家の罹患率高いオリエンタリズム!!
マティスもバッチリその手のアイテム持ってたんですねぇ。油彩画もちゃんとあるんですけど、描かれた調度品の実物の方が気になりました。
大きい壁掛け布の「赤い"ムシャラビエ(アラブ風格子出窓)"」はモロッコあたりの品かと思いきや産地は北インド?らしい。というかモロッコは地理的にはアフリカなのにすごくオリエンタルなイメージがある……。
猫脚の「三日月を伴う蓋のある火鉢」は正にアラビアン! なデザインですが結構デカい。
マティスが使用した木製パレットも展示されています。混色していない絵の具が並んでいてパレットそれ自体がアートっぽい(マティス本人はたぶん自分が使いやすいように絵の具を置いただけでしょうが)。
『デッサン―テーマとヴァリエーション』
マティスのデッサン画を収録した書籍です。最初の一枚以外モデルをほとんど見ていないというのが驚きです。
最初にモデルのイメージをアタマに叩き込んだら次からは書きたい構図をアウトプットできるってことですよね? すごいなぁ。
『ジャズ』
Section4の撮影禁止ゾーンに展示されている書籍です。一部は都美術館で見ました。
切り紙絵はどれも単純化されたフォルムですが、タイトルを読めばちゃんと「その絵」だと判ることに驚きました。
これが巨匠のアート力……!
ブルー・ヌードⅣ
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ここからは撮影可能作品を紹介していきます。こちら公式サイトのトップ画にも採用されている切り紙絵の裸婦像です。
たくさんの紙片を使い、かなり「わかりやすく」女性のフォルムをしていますが、よく見ると複数種類の青が使われています。
デッサンの線も残ってますね。
よく見ると青の濃淡がある点に、先日見た尾形光琳の燕子花図屏風に少し通じるものを感じました。
花と果実
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壁一面を占拠する巨大な絵です。圧巻。
包装紙と言われても違和感ない絵なんですが、実際は中庭の装飾の雛形です。
他の人が写らないよう写真を撮るのがめちゃくちゃ難しかった……。
これは5枚のキャンバスで構成されているのですが、記事を書き始めるまでなぜか巨大な紙がベースと思い込んでいました……。
また、タイトルこそ「花と果実」ですが果実は花と花との間にちょこんとあるだけなのが面白い。
キャンバス1枚だけ色が青と白のみ、っていうのも全体の単調さを消してていいです。
陶の習作
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ワカメと思ったらヤシの葉でした。そんだけなんですがすさまじく印象に残ったので。
顔
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マティスが読売新聞社に寄贈した絵。読売はトーハクで1951年に開催されたマティス展の主催団体のひとつだったそうです。
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赤は目立つなぁ
本の表紙になるとインパクト大ですね。
ヴァンス礼拝堂のための雛形群
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正面
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背面
Section5は丸ごとヴァンス礼拝堂関連の展示です。
建物のマケットを見ると小さな村の素朴な礼拝堂って感じがします。
何の説明もなくマケットという単語が使われてるので後で調べたら雛形という意味でした。
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背景からして解っていてもワカメにしか見えない。
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奥:聖ドミニクス(1949年)
礼拝堂の壁画の下絵とキリスト像。良い感じに重ねて撮影できました。もはや記号レベルまで単純化されたキリスト像が好きです。
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キリスト教の祭服はいろんな色があるって初めて知りました(白一色だと思ってた)。
五色ぶんのセットが展示されていて、すべてデザインが異なります。
私が好きだと感じたマケットの写真をピックアップしときます。
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下:白色の腕帛のためのマケット(1950-1952年)
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審神者の大好物
各カラーの意味はこちらが参考になります。
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礼拝堂のステンドグラス案のひとつ。こちらが採用されていたら、今とはずいぶん雰囲気が異なったでしょうね。それはそれとして幾何学的でリズミカルなデザインがすごく好き。
ヴァンスのロザリオ礼拝堂(内部空間の再現)
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展示の最後はヴァンス礼拝堂の再現コーナー。日の出から夜までの変わりゆく光も早回しで再現しているので、ステンドグラスを通して床に落ちた光の動きも追うことができます。
これがまたずっと見ていられる。
さすがに人の滞留が凄いんで2周も待ちませんでしたが……。
ぶっちゃけかなり気合いの入った再現空間に圧倒されました。まさに一見の価値アリです。まだ間に合いますよ!
コラボメニュー
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バターライス添え
昼食は地下一階のカフェテリアでコラボメニューを食べました。赤ワインの煮なのでけっこう苦味はありますがバターライスとマッシュポテトが多いので完食はそこまで苦ではありませんでした。
実はこのカフェテリアに入ったのは初めてだったりします。
ミュージアムショップ
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今回はポストカードの他に写真撮影不可だった『ジャズ』のクリアファイルと「花と果実」のしおりを購入。
ポストカードも撮影禁止作品から選んでいます。
おわりに
都美術館の展示ではあまり気にしていなかったマティスの切り紙絵が「すごく面白い」と思えました。
今までも似たようなことを繰り返してる気がしますが、「○○の作品はわりと見るし」「どうせ似たような展覧会でしょ」 という先入観は即捨てるべしと改めて感じた素晴らしい展覧会でした。
ご紹介ありがとうございます!
私のサイトマップ
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