海外文学勝手に50選やってみたーぱふぱふ!!Part1
なんかnoteの企画で #海外文学のすすめ というのがあったので、これは海外文学ラバーの自分としては参加するしかない、せずにはいられない気持ちが湧き上がりました。
あ、こんにちは こんばんは こんばんはー
そうなのです。
海外文学はちょっと前までなんとなくコアな読者に支えられてきた、まるで専門書扱い?の分野でした。
でもここ最近、『82年生まれキム・ジヨン』をはじめとする韓国文学や、それこそ『三体』などの中国SFがかなりの注目を集めていて、売り上げも上々です。
自分の店の海外文学棚も売り上げが伸び伸びで、これはわたしの力では!!と鼻の穴をふくらませていましたが、実は世の中の流れもあったんじゃなーい?と少し冷静になると見えてきて恥ずかしい限りであります。
ここでもっともっと海外文学の良さを知ってもらいたい。この勢いを止めたくない。そう強く思うので、noteさんがこういう企画を上げてくれているのに乗っかって、せっかくなら自分史上ベストの海外文学50選をやってみようと思います。
いやこれね、今までずっとやる自信なかったのです。まだまだ積んでいる作品もあるし読めていない名作もたくさんあるので、途上もいいところだから。
ただ書店員という仕事の中でかなりマイナーな作品も見てきたので、今なら人とは違う50選ができるかなと思ってやってみることにしました。
古い作品もありますし、中にはもう手に入りにくくなっているものもあります。児童書は迷いましたが、わたしの中では児童書かどうかははあまり線引きされてなく、自分の中で間違いなく重要な作品がたくさんあるので入れさせてもらいました。
楽しく見ていただければ嬉しいです。
長くなるのでさっくりの紹介とさせていただきます。
内容忘れちゃってるものも多々あるので、ゆる〜い目で見てやってください。
文学ということでフィクションのみです。エッセイ、ノンフィクションは対象外としました。
【】内に作者の国()に小説の舞台を明記しました。
順不同です。
・『めくるめく世界』レイナルド・アレナス 鼓直訳 国書刊行会
【キューバ(メキシコ)】
一言で言って本当にめくるめく世界なんである。現実と幻想が交差したとんでもない力作。同著者の『夜になるまえに』もあわせて読むと著者のことがよくわかっておすすめ。
・『卵をめぐる祖父の戦争』デイヴィッド・ベニオフ 田口俊樹訳 ハヤカワ文庫 【アメリカ(レニングラード)】
飢えに苦しむレニングラード、うんこが出ないことは切実な苦しみだ。少年たちのやりとりはユーモアたっぷりで、現実の悲惨さがよけいに胸に迫る。何度も読み返したい傑作。
・『ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅』レイチェル・ジョイス 亀井よし子訳 講談社 【イギリス】
昔の同僚にお見舞いが言いたいだけで、ふらっと散歩に出たついでに1000kmもの道のりを歩き出してしまう男の話。歩くという行為が不思議と浄化につながっていき自身の想いも流してゆく。あまり知られてないと思うんだけど本当にいい作品なのでもっともっと読まれてほしい。
・『トーベ・ヤンソン短編集』トーベ・ヤンソン 冨原眞弓編訳 ちくま文庫 【フィンランド】
ムーミンの作者トーベ・ヤンソンは短編の名手でもある。どの作品も孤独と自然とともにある人生への慈しみにあふれ、慈愛深い。わたしの中でのベストオブ短編集
・『バニヤンの木陰で』ヴァディ・ラトナー 市川恵里訳 河出書房 【カンボジア】
こちらもあまり知られていないと思うけど本当に素晴らしい作品。小説だけれどほぼ実際にあった話だそう。カンボジア、クメール・ルージュに支配されていた耳を塞ぎたくなるような現実をありのままに描く。救いは主人公の少女が決してあきらめないこと。
・『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ 御輿 哲也訳 岩波文庫他 【イギリス】
言わずと知れた名作。この書き方は度肝を抜いた。書かないことによって描かれるはるかに深遠な世界。
・『低地』ジュンパ・ラヒリ 小川高義訳 新潮社クレストブックス 【アメリカ(インド)】
政府の弾圧に抵抗していた弟が目の前で殺され、兄は弟の妻を連れてアメリカに渡る。自らの正義のために生きて死んだ弟、残されたものたちはどう生きるべきなのか、細部まで血のゆきわたった文章が本当に素晴らしい。
・『レンブラントの帽子』バーナード・マラマッド 小島信夫、浜本武雄、井上譲治訳 夏葉社 【アメリカ】
ああこれも本当に素晴らしい作品。ヤンソンと並ぶくらいのベストオブ短編集。心にしみわたるという帯の文がすべてを言い表している。
・『インド夜想曲』アントニオ・タブッキ 須賀敦子訳 白水uブックス
【イタリア(インド)】
この本に出会えたからわたしは海外文学にのめり込んだと言える、自分にとって生涯特別な一冊。こんなにシンプルなことばでこんなに豊かな世界を表現できるのかと圧倒された作品。もちろんこの須賀敦子さんの翻訳は何にも変えられない。
・『レクイエム』アントニオ・タブッキ 鈴木昭裕訳 白水uブックス
【イタリア(ポルトガル)】
こちらも傑作。幻想的な物語の中でリスボンの灼熱の暑さや、雑踏がまるで亡霊からのメッセージかのように響き渡る。食べ物の描写もやたらと美味しそうで記憶に残る。
・『アルグン川の右岸』遅子建 竹内良雄、土屋肇枝訳 白水社 【中国】
今にも消えてなくなりそうな少数民族<エヴェンキ族>の最後の酋長の妻が語る物語。交差する時代の波と伝統のはざまに翻弄される人たちの生き様がものすごい。
・『アメリカの鱒釣り』リチャード・ブローティガン 藤本和子訳 新潮文庫 【アメリカ】
これも初めて読んだ時に衝撃的だった1冊。文学はこんなこともできるんだとぶっ叩かれた気分。アメリカにおける鱒釣りの意味が感覚的にわかるときっともっとこのヤバさがわかると思った。
・『氷』アンナ・カヴァン 山田和子訳 ちくま文庫 【イギリス】
これはかなりの問題作だったんじゃないか。全編通して冷たさと不穏な空気が漂い、幻覚を見ている気分になる。ラストもただただ圧倒。
・『雪を待つ チベット文学の新世代』ラシャムジャ 星泉訳 勉誠出版 【チベット】
前半と後半でだいぶイメージの違う作品。前半は映画『初恋のきた道』を彷彿させるようなほっこりした田舎のチベットの風景。描写も美しくて心躍る。後半はそこから都会へ飛び出して近代化している文化の快楽の波に飲まれていく現実が描かれる。生きることはそれでも美しいと思える作品。
・『ダブリナーズ』ジェイムズ・ジョイス 柳瀬尚紀訳 新潮文庫 【アイルランド】
ユリシーズもフィネガンズウェイクも読んでいないので、あまり語れないのだけど、ダブリンの退廃的なところが非常に好き。イギリスの田舎町のように思われているかもしれないアイルランドだけど、アイルランドには文学があり悲しみがある。それはジョイスがいたからかもしれない。
・『エウロペアナ』パトリク・オウジェドニーク 阿部賢一、篠原琢訳 白水社 【チェコ】
これもかなり特殊な作品。ちょっと普通の小説からいくと理解できないかもしれない。いやわたしも理解しているわけじゃない。ヨーロッパの膨大な歴史をかなり細かいところまで解体し、一つ一つ置き直しているといった感じ。歴史に詳しくないのでこれもあまり語れないけど、読んでみると奇妙な面白さがある。トピックで語るユーモアたっぷりの人類史。
・『ストーナー』ジョン・ウィリアムズ 東江一紀訳 作品社 【アメリカ】
こちらは静かな傑作。一人の男の人生。特に何も起こらないのだけどそれがこれほどまでに美しい文章で、悲しみにあふれ、喜びに満ちているのか。心揺さぶられる一冊。
・『忘れられた巨人』カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 早川epi文庫 【イギリス】
実はカズオ・イシグロの作品でこれが1番好き。全部読んだわけじゃないので暫定。イシグロの作品の中ではかなりファンタジー色の強い作品。だんだん忘れていくという奇病が流行している世界で息子に会うために旅をする夫婦の物語。記憶が曖昧になっていく中で何が真実なのかが見えなくなる、その時愛はどうなるのか。物語はおとぎ話のようでもテーマがやはり深い。
・『HHh H』ローラン・ビネ 高橋啓訳 東京創元社 【フランス(チェコ)】
これもかなりの問題作だろう。史実に基づいたヒムラー暗殺計画を描いた作品。何が面白いのかというと作者本人の思考がだだ漏れで書かれているところ。本人が迷いながら書いているのがよくわかるのだ。それが不思議と呼んでいるこちらの胸を強く揺さぶる。
・『最初の悪い男』ミランダ・ジュライ 岸本佐知子訳 新潮社クレストブックス 【アメリカ】
まあかなりのこじらせ具合で同僚に片思いしている主人公の家に、巨乳で足の臭い女の子が居候でやってくる。めちゃくちゃ面倒でどうやって追い出すかということばかり考えていたのに、いつの間にか彼女に執着していたりする。妄想に次ぐ妄想でめちゃめちゃ笑える。こんなの面白すぎでしょう。
・『掃除婦のための手引書』ルシア・ベルリン 岸本佐知子訳 【アメリカ】
なんてありのままで生々しい文章なんだろう。この短編集も極上。こんなに飾らない生身の自身をさらけ出すようでいて、それはどこまでも美しい。
・『四人の交差点』トンミ・キンヌネン 古市真由美訳 新潮社クレストブックス 【フィンランド】
世代の違う家族4人がそれぞれで語る、一族の100年。あまりに寡黙でみんながそれぞれの想いを抱え生きているので、すれ違い、それが修正されないまま時が経つ。悲しみと孤独を抱えながら一つ屋根の下で暮らす様子は息が詰まりそうだけど、そこにいるのは自分のような気がして心が震えた。
・『すべての、白いものたちの』ハン・ガン 斎藤真理子訳 河出書房新社
【韓国】
白という色を纏ったものたちの生と死を繋ぐことばたち。普遍的な白から個人的な白までひっそりとしたことばで繋ぎ、生まれて死ぬまでを早回しで見るような不思議な感覚が残る。装丁もこだわり抜かれていて質の違う白い紙を何枚も使い肌触りまで変わるので五感に訴える丁寧なつくり。ぜひ紙で呼んでほしい1冊。
・『ガルヴェイアスの犬』ジョゼ・ルイス・ペイショット 木下眞穂訳 新潮社クレストブックス 【ポルトガル】
ポルトガルの田舎の村にある日空から巨大な物質が落ちてきて、その日から村人は異臭に悩まされる。それなのに人々はみんなそのことを忘れてしまい、覚えているのは犬だけという不思議な物語。内容はそうなのだけど明らかに物語の核はそこにはなくて、ガルヴェイアスという架空の村で暮らす人々の人生がそれぞれ交差していくのがとんでもなく面白い。
・『プラヴィエクとそのほかの時代』オルガ・トカルチュク 小椋彩訳 松籟社 【ポーランド】
こちらもガルヴェイアスと同様に架空の街プラヴィエクが舞台の物語。似たところのある2作だと思うけど、こちらは文章的に知と神秘と世界への神的な目線でできており、まただいぶ違った印象を受ける。トカルチュクは知性と理性を削ぎ落としていった先にあるなにかを表現するというところに到達しているのではないかと思う。ものすごい力を持った一冊。
さて、ここまででようやく半分きました。
もう半分続けてしまうとものすごい長さになってしまって、読みづらい記事になってしまうかと思いますので、ここでいったん切らせていただいて、次回またpart2という形で残り半分を発表させていただきますー。もったいぶってないよ。
こう見ると、アメリカ、イギリスが多いのはまぁ当然として(翻訳数が断然多いので)チェコとかフィンランドとか意外と多いですね。フランス、韓国が少ないのは自分でも意外だなぁ。後半も合わせて見るとまぁまぁ全体的にいろんな国のものを読んでるなと思います。
もしここに紹介した本の中で何か一つでも気になるものがありましたら、ぜひ本屋さんや図書館などで探して読んでいただければ嬉しいです。
読んだよーなどコメントもらえましたら、非常に励みになりますのでお待ちしておりますよー。
大切な本との出会いになりますように。
※トップ画像は、ここ最近の積読本のごくごく一部です。こんないい本たちを積んでるんだから、まだまだまだまだ途上ですねー!あしからず。
※※ オルガ・トカルチュクの出身国をなぜか【チェコ】としてしまっていましたが、ただしくは【ポーランド】でしたので訂正させていただきます。読者の方に教えていただきました。ありがとうございます!!