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海外文学勝手に50選やってみたーぱふぱふ!! Part2

前回の Part 1、想像以上の反響をいただき本当にありがとうございます。
なんとnoteの今日の注目記事にも入れていただきました。すごーい!
これだけの人たちが海外文学に興味を持っているんだなというのがわかって、すごくうれしかったです。

Part 1 はこちら


海外文学を出版されている版元さんたちにも声を大にして言いたい!
海外文学、たぶん今もうひと推しすれば跳ねる可能性のあるジャンルじゃないでしょうか。
このタイミングでいち押しの海外文学、どしどし販促していきましょう!

では早速 Part2 いってみましょうー!


・『白い牙』ジャック・ロンドン 深町眞理子訳 光文社古典新訳文庫
【アメリカ】

ジャック・ロンドンは昔オオカミだったのではないだろうか。そんなバカなことを信じたくなるくらい、この自然への描写は人間業ではない。凍てついた大地、自然の中で生きるということ、人間への目線の距離、全てが本当に緻密で完璧だ。山を走る生き物たちの息吹を感じるような緊迫感あふれる空気が流れ、鳥肌が立つようだった。わたしは新潮文庫の方で読んだのだけど、こちらの光文社古典新訳の方が新しいので、翻訳としてこちらの方が読みやすいのではと思います。


・『マラコット深海』アーサー・コナン・ドイル 大西尹明訳 東京創元SF文庫 【イギリス】

コナン・ドイルのSF!?というとなんか色物のような気がして、かまえてしまったんだけど大杞憂。8千年前から大西洋の海底に文明が生きていた。『海底二万里』以来のものすごくワクワクした気持ちを味わえた作品。


・『パパ・ユーア・クレイジー』ウィリアム・サローヤン 伊丹十三訳 新潮文庫 【アメリカ】

もはやこれは完全に古本で探すしか手がないと思うが、ものすごい名作なので本当にもったいない。10歳の少年と父親の対話が主なストーリーで、その会話が本当に素敵。小さな小さなことがらを二人で見つめてとことん議論したり、子供のころを思い出してみんなワクワクしてしまいそうな会話であふれている。つい笑顔になってしまうおかしみもたっぷりでいい。
同著者の『僕の名はアラム』はまだ手に入るので急いで買っておくことをおすすめします。こちらも傑作。


『グレート・ギャツビー』フィッツジェラルド 野崎孝 新潮文庫 【アメリカ】

言わずと知れた名作。映画化にもなっているしもはや説明不要かも。
絢爛豪華なギャツビーの華々しさとは裏腹に、抱えた孤独の深さが胸にいつまでも残る。疾走する車ですべてをふり切るように走り去ってしまった後、いったい何が残ったのだろう。村上春樹訳もあるのでお好きな方を。


・『悲しみよこんにちは』フランソワーズ・サガン 河野真理子訳 新潮文庫 【フランス】

こちらも説明不要レベルの名作。大好きで何度も読みました。サガンの作品の魅力はその刹那に全力で生きている光のようなものが散りばめられていること。無気力に見えても一瞬で息が吹き込まれ熱く燃え上がる。他に『熱い恋』や『一年ののち』も名作なんだけど、ほとんどの作品が入手困難になっていることが残念。


・『博物誌』ジュール・ルナール 岸田国士訳 新潮文庫 【フランス】

新潮社のものばかりが続いてしまうことをお許し願いたい。一時期新潮文庫から選んでいろいろ読んでいたことがあるので、どうしても偏ってしまいます。美しいフランスの田舎の風景とともに描き出される動物たちにまつわる短文集。詩的でもあり短歌のようでもある。挿絵も入っていて目にも楽しい。どこから読んでもいい気軽さも良い。


・『黄色い雨』フリオ・リャマサーレス 木村榮一訳 河出文庫 【スペイン】

静謐な筆致で書かれた死にまつわる幻想譚。これほどの孤独に真っ向から対峙した作品はなかなかない。沈黙と静寂の間におかれた言葉たちは、本のページから幽霊のように立ち上がってまとわりついてくる。ただただ圧倒された作品。


・『ペスト』カミュ 宮崎嶺雄訳 新潮文庫 【フランス(アルジェリア)】

コロナ禍で大ヒット、去年からたくさんの書店で平積みされているところを見かけました。読んだのがだいぶ昔なので詳細に覚えていないのだけど、人々の不安が感染症のように広がってゆく心理が非常に緻密に描かれていて驚愕したのを覚えている。今読んでもきっと古びていないのだろう。


・『ヴェルレーヌ詩集』ポール・ヴェルレーヌ 堀口大學訳 新潮文庫
【フランス】

ランボーかヴェルレーヌかだったらわたしはヴェルレーヌ派なのである。
なぜかは自分でもよくわからないのだけど、美しさの中に隠しきれない悲しみがあるからではないかと思う。しかしウィキペディアで見るだけでもこのヴェルレーヌの人生、波乱万丈にもほどがある。


・『海底二万里』ジュール・ヴェルヌ 村松潔訳 新潮文庫 【フランス】

子供の頃から大好きで何度も何度も読んだ作品。謎めいたノーチラス号、ネモ船長にドキドキわくわくしない子がいただろうか。今読んでも最高に胸が高鳴る一冊。


・『秘密の花園』バーネット 畔柳和代訳 新潮文庫 【イギリス】

これも子供の時から大好きな作品。秘密だったり、謎めいていたりするお話がとても好きだった。こんな庭がお家にあったらと何度夢見たことか!美しい庭園の描写も大好きでした。


・『アルケミスト 夢を旅した少年』パウロ・コエーリョ  山川紘矢、 山川亜希子訳 角川文庫 【ブラジル(エジプト)】

これもだいぶ昔に読んだ1冊。これを読んで旅に出ようと思ってバックパッカーになった気がします(何か違う!?)シンプルなことばで愛とは何か、人生で大切なことは何かを教えてくれた1冊。


・『トムは真夜中の庭で』フィリパ・ピアス  高杉一郎訳 岩波少年文庫 【イギリス】

子供の時大好きだった本シリーズ。たぶんわたしイギリスのひっそりと秘密っぽい話に弱かったんだわー。そしてこちらも庭の話。タイムリープものなのでそういう話が好きな人もきっと楽しめると思う。今読んでもやっぱり名作だと思う。


・『ドン・キホーテ』セルバンテス  牛島信明訳 岩波文庫 【スペイン】

これは割と最近読んだんだけど、まあとんでもなく面白くてぶっ飛んだ。もちろん古典で誰もがタイトルくらいは聞いたことあるかと思うけど、こんなにハチャメチャしっちゃかめっちゃかな物語(しかも全6巻)だと思わなかった。人生で悩んだらドン・キホーテ読むといい。なんの解決にもならないけど。


・『ムーミン谷の冬』トーベ・ヤンソン 山室静、冨原眞弓訳 講談社文庫
【フィンランド】

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205647

ムーミンシリーズは大好きだけど、特にこれが好き。いや彗星も好きだし、パパの思い出も好きだし、全部好きだからその時によって変わるかも。でもこの作品はいつもは冬眠してしまうムーミンが、一人で冬の最中に目が覚めてしまって、冬に生きている孤独な生き物たちと出会う物語でシリーズ1番暗く静かだ。ムーミンの物語を読んだことがない方はぜひ一度読んでみてほしい。ここに生きているのは小さくてとるに足らないわたしたちと同じ悩みを抱えた生き物たちだ。


・『くまのプーさん』A.A.ミルン 石井桃子訳 岩波少年文庫 【イギリス】

プーといえばディズニーという方はこちらを一度でもいいから読んでほしい。プーのすっとぼけがとにかく可愛く最高。そしてクリストファーロビンとわたし(お父さん)のお話として出てくるプーとゆかいな仲間たちは本当に想像力豊かでウィットに富んだ会話にあふれて楽しい。


・『死をポケットにいれて』チャールズ・ブコウスキー 中川五郎訳 河出文庫 【アメリカ】

これはわたしの厨二病小説かな。ブコウスキーが好きって言ったらかっこいいし、この本読んでたらかっこいいわー的なあさはかな気持ちで手に取りました。でも読んでみてやっぱり好きだ。この人が。どうにもこうにもダメなんだけど孤独があって悲しみがあって、それでも愛がある。


・『丸い地球のどこかの曲がり角で』ローレン・グロフ 光野多恵子訳 河出書房新社 【アメリカ(フロリダ)】

古めの作品から一転、最近読んだ中でダントツ良かった1冊。こちらも短編集。フロリダという特殊環境で生きる人たちのことをミクロの視点、マクロの視点両方を駆使しながら切り取ってゆく。その切り取り方は独特で人間たちの滑稽な試行錯誤と自然の容赦のなさをあくまで美しく、優しく丸ごと包むように書いていく。読んでいて幸せに死んでいくような気持ちになる1冊。


・『消失の惑星』ジュリア・フィリップス 井上里訳 早川書房 【アメリカ(カムチャッカ)】

これは今年最も記憶に残る1冊。カムチャッカという陸の孤島に生きる人たちのリアルな記録とも読めるが、1件の誘拐事件が絡んでくるので一筋縄じゃいかない。カムチャッカが抱える人種差別や女性蔑視がだんだんあらわになっていくのも非常に興味深い。大切なものを永遠に失うかもしれないということの恐怖感、それを見る周りの人達の好奇心、偏見、そういうものもうまく取り込まれていてすごかった。子を持つ母としても忘れられない作品。


・『アコーディオン弾きの息子』ベルナルド・アチャガ 金子奈美訳 新潮社クレストブックス 【スペイン(バスク)】

これも本当に傑作だった。ETAというフランコ政権からバスクの独立を訴える過激派組織の暗躍していた時代(つい最近のことだ)。はからずも闘争に巻き込まれ死んでゆく友人たち、そんな中で自分はどう生きるべき?悩みながら流されながらも等身大に青春をすごす少年たちの友情物語。と書けばきれいにまとまるがこの小説のすごいのはそこで終わらないところ、主人公が亡命してその先が独特の手法で書かれていること。多くは書かないが考えれば考えるほど深まるものすごい作品。


・『三体』 劉慈欣 立原透耶、大森望、光吉さくら、ワンチャイ訳 早川書房  【中国】

https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=000000014550&search=%BB%B0%C2%CE&sort=

https://www.hayakawa-online.co.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=000000014829&search=%BB%B0%C2%CE&sort=

そしてこちらは外せないだろう。もはや今世紀最高のエンタメ作品じゃないだろうか。今世紀はまだあと80年あるけどこれ以上のもの出る?大丈夫?って思うほど。内容はいろいろ書いてきているので触れないけど、まじで言っておく。せっかく同時代に生まれたんだからこれ読まなきゃもったいない!

以前詳しく感想を書いているので、ご興味ある方はぜひご一読ください。


・『屋根裏の仏さま』ジュリー・オオツカ 岩本正恵 小竹由美子訳 新潮社クレストブックス 【アメリカ】

百年前、写真1枚だけで花嫁になり渡米した娘たちの様々な声を淡々と集めた、言ってみればそれだけの不思議な小説。でもその様々な声が重なり合って響き合う時、女たちは一つの大きな肖像となってゆらりゆらりとこちらに迫る。ひしひしと胸に響く大勢の生命。


・『すべての見えない光』アンソニー・ドーア 藤井光訳 新潮社クレストブックス 【アメリカ(フランス)】

戦争の生々しさ帰ってこない人たちの記憶そういうものはそのままに、それでも美しい物語。目の見えない少女とナチスの技術兵となった少年のとても透き通った気持ちが通い合う恋愛小説。戦時下の自由に動くことのできない状況の中、ラジオを通して気持ちを通じ合わせていくというかなり特殊なケースが描かれる。息も詰まる空気の中徐々に差し込むような光が本当に美しい。


・『歩道橋の魔術師』呉明益 天野健太郎訳 白水社 【台湾】

ノスタルジックあふれる歩道橋をめぐる連作短編集。自分にとっての懐かしい場所がたちどころに思い出されてくるような物語が、歩道橋にいる魔術師という名の人物でつながってゆく。日常にあるスキマをのぞき込むような感覚で読むマジックリアリズム小説。


・『うたかたの日々』ボリス・ヴィアン 伊東守男訳 早川epi文庫 【フランス】

ラストはこれ。『うたかたの日々』と『日々の泡』と同じ作品と気づかず買って両方持ってます。意味同じなの気づけや。肺の中で睡蓮が育ってしまうという奇病を持ったクロエとコランの幻想的な恋愛物語。もうその設定だけでごはん一杯食べられる。読んでいるうちに夢なのか現実なのかわからなくなって言葉の中をさまよい歩くように陶酔してしまう作品。幻想文学への入り口にぜひ。


わー終わったー!!
フルマラソン走り終えたような感慨(大げさ)

ここまで書いた後でも、まだ迷っていたりします。
いややっぱりこれじゃなくてあれを持ってきたほうがいいかも……なんて考え出したらキリがない。

明日書き直したらもう全然違う内容かもしれません。

まぁとりあえずこれが今日のところの自分のベスト50かなという感じです。

Part2は古典、定番書多めの内容となりました。

出版社も見事に偏って新潮社の作品ばかりの紹介となってしまいました。
やはりなんだかんだクレストブックスは名作が多いです。それから新潮文庫になる作品もやはりずっと読み継がれるような名作が多いので、何を読んだらいいのか迷ったらまずはそこから手に取るというのもおすすめです。

そして岩波書店や白水社のエクスリブリスとUブックス、河出書房、早川書房、東京創元社、作品社、国書刊行会などの常に海外文学を出し続けている出版社さんにも注目してみてください。

これは何度も言っていることなんですが、海外文学は大体すでに海外で評価の高い作品が厳選されて翻訳されているものが多いので、日本で出るものはそもそも作品としてのクオリティが高いです。もちろん自分の好みや相性があるので、全部面白いなんて思うはずはないですが、読んでいるうちに自分に合うものがわかってくるので、ハズレを引くということがかなり少なくなると思います。

そして本当に世界は広い。
自分とは違う価値観、全く想像もしなかったような世界がそこに広がっていたりします。

おうちにいながらこんな豊かな世界が楽しめるなんて最高ですよね。

海外文学なんて難しそうと敬遠されていた方も、これを機に手にとっていただけたら小躍りして喜びます。

長々とお付き合いいただきありがとうございました!
もくめ書店にはこんな海外文学が並ぶかもしれません。
みなさんのおすすめ海外文学ももしよかったらお聞かせくださいね。

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もくめ書店〈酒井七海〉
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