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NHK九州沖縄特集 小さきものの声を聞く〜思想史家・渡辺京二の遺言〜を見て
NHKの九州沖縄特集で「小さきものの声を聞く~思想史家・渡辺京二の遺言~」が放送されていた。
旦那がチャンネルをころころ変えていた時にたまたまうつって
「あぁ~渡辺京二さんだ。」
「???」
「この間亡くなりはってん(2022年12月25日 92歳)。私はすごい好きやってんけど、私しか知らんねん。」
「こんなNHKで特集する人、お前しか知らないわけないやん!!」
そりゃそうだ…。と我に返る。でも言い訳させていただくと、私が渡辺京二さんを知ったのは大阪在住の時。熊本の思想史家のことを誰かと話題にしたことは一度もなかったのです。
渡辺京二さんとは
まずどういう人なのかの紹介ですが、NHKの放送を参考にさせてもらいました。
熊本で暮らしながら庶民の目線で時代を書いてきた人。30を超える著作で時代をうつしてきました。江戸時代の庶民の暮らしの豊かさを描き日本が近代化していく中で失ったものは何だったのか。近代とは何かを問い続けてきました。その奥底には水俣病があります。犠牲になったのは漁民など自然と共に暮らす人々でした。渡辺さんは水俣病の支援活動に取り組みます。連綿と続いてきた生活を奪われた人の申し立ては前近代から近代への申し立てだと言います。名もなき庶民、小さき者たちの声を聞き、近代とは何かを問い続けてきた人。
代表作「逝きし世の面影」
代表作は「逝きし世の面影」。江戸後期〜明治初期まであった、日本の文化を外国人の視点から書いてあります。女性も子どもも人々は穏やかで自由を謳歌している。花が咲き乱れる景観は素晴らしく生活は豊かではないが、簡素で人の表情は幸福で満ち足りている。もちろんダークサイドの部分もあるのだけれど著者はなくなってしまった(逝きし)文化に着目しています。
江戸末期の日本の江戸時代は暗黒なイメージでしたが、外国人たちはこんなに安心して暮らせる国はないと書いています。
年貢さえ収めていれば支配は根っこまで届いていない。村の生活を人々は送ることができた。と放送では話されていました。
石牟礼道子さんとの出会いと水俣病の支援活動
自身の生死にかかわる闘病を経て、大学を出て日本読書新聞の編集者として文芸誌を担当されます。二年働きますが会社の対応に納得がいかず、熊本に帰られます。そこで、生活のため雑誌を創刊します。それが『熊本風土記』でした。
雑誌を作るにあたって常にライターを探されていて、出会ったのが石牟礼道子さん。石牟礼道子さんは当時熊本の水俣で主婦だった方ですが
水俣病によって村の共同体が崩れていくことを目の当たりにしていました。
石牟礼道子さんの書いた原稿が雑誌に掲載され、後に小説「苦海浄土」となります。
石牟礼さんとの出会いから渡辺さんは水俣病の支援活動に深くかかわっていきます。機関誌を発行し、被害を全国に知らせました。厚生省で抗議行動をし仲間と共に厚生省の会議室を占拠しようと行動を起こします。
放送の中で水俣病がただの損害賠償請求事件だけにおさまらず、全国に広がる市民活動となったのは、この石牟礼道子さんと渡辺京二さんの出会いが大きいのではないかと当時一緒に活動に参加された方が言われていました。
気になる人
今回のNHKの放送で初めて渡辺京二さんがお話しされているところを見たのですが、とても穏やかなしゃべり方をされる方でした。
でも話すことはとても熱いんです。私が初めて渡辺京二さんの本を読んだのは「気になる人」という本なんですが
「逝きし世の面影」の著者、渡辺京二さんは、熊本にいながら広く世界を見渡している。その渡辺さんには、熊本在住の近くにいて「気になる人」、昔から知っているけどもっと知りたい「気になる人」がいる。~略~
小さいが、まぎれもなくその人の場所を持っている人々を尋ね歩く。
渡辺さんが熊本の気になる人を尋ね歩き、対談していくのですが、どの人と話してても熱い。そして受け入れる優しさがにじみ出ています。
代表作「逝きし世の面影」は分厚く、文章も難しく、なかなか大変でした。まずは軽くと思っている方に「気になる人」を是非お勧めします。
最後に
放送で最後にこの文章が流れました。
つまり自分は一人ある
自分は自分の考えで生きている
国からも支配されない
いわゆる世論からも
妄想からも支配されない
というあり方ができるのは
自分がある土地に
仲間とともに結びついている
と感じるからなんだ
自分がこの世の中で
自分でありたい
妄想に支配されたくないという
同じ思いの仲間がいる
それが小さい国である
自分が自分でありたいという
自分と同じく自分が自分で
ありたい人たちで作った仲間が
小さな国になっていく
そういうもの
をしっかり作るということが
僕の思う革命なのさ
「幻のえにし」より
後にNOTEで渡辺京二さんを検索したら、結構ありました。私だけが知っているなんて、おこがましいにもほどがありました。
心からご冥福をお祈りいたします。