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ジパング(著:かわぐちかいじ)【これが未来の読書感想文か「怖くないのか?」生きるということは知ることなのだ「いや、ネタバレを読んで」】
「沈黙の艦隊」の作者。かわぐちかいじの、
代表作ふたつめ。
後にアニメ化されたらしい。
内容としては、現代自衛隊の護衛艦が、
ミッドウェイ海戦の時代にタイムスリップしてしまうという、
よくある仮想戦記のテンプレみたいな話。
しかしそれを、かわぐちかいじ が描くと・・・
さて前作の「沈黙の艦隊」では、
代表的な人物がふたり出てきた。
まずは主人公の海江田。
知的で傲慢な合理主義者。
理想を実現させるために、暴挙を惜しまないタイプ。
対して深町だったっけ?
もうひとり、自衛隊に留まって海江田を追いかけるやつがいる。
人情家で激情家。
合理よりも人情や、気持ちの方を大事にする。
人を踏み台にする性急な行為は嫌悪する。
このふたりのライバルを登場させていたが、
まあ「沈黙の艦隊」では、あんまり対立させられなかった。
海江田の敵は米国であり、深町は置いてけぼり。
そこで、今作にて、
深町と海江田に決着をつけてもらうべく、
両雄には最初から最後まで完全対立する舞台を用意した。
それが本作だ。
本作の海江田「草加」は日本海軍の参謀将校。
護衛艦からの未来の情報に触れ、
歴史を変えるべく革命(暴挙ってこと)を考える。
対して本作の深町「角松」は、護衛艦乗り組みの自衛官。
だが過去世界で実質的に艦長として、
そして草加の考える性急な結論を抑止するための「穏健派」として行動する。
革命とか穏健派とか。
字義通りの意味じゃない。
要は、
知的で合理主義で傲慢なやつと、
人情肌で現実重視で犠牲を好まないやつとの、
もはや宿命的な意見の相違だ。
この2人の対立軸を、
ありえたかもしれないもうひとつの第二次大戦を背景に、
ドラマとして描いていく。
それが本作となる。
という意見をどこかで読みました。
その通りだと思う。
まあその過程で仮想戦記お馴染みの展開も出てくるけど、
それも単に日本軍が未来技術で逆転勝利するとか、
そんな単純な展開ではなく、
予想外の事態が起きて、お互いに作戦通りの行動が出来なくなり、
その場で勇気をもって臨機応変に行動しなければならない。
そういう大胆な決断力が示される展開が多いのだ。
さすがマンガ。
こういう展開にしなければ、面白くならない。
ということを熟知している。
そうなのだ。
時代は違えど、人間は怖いのだ。
技術レベルが違うからと甘く見れる相手ではない。
恐ろしい勢いで順応してくる。
いざという時のためらいが、急速に致命的な事態をもたらす。
本当に恐れるべき、あるいは頼るべきは、人間の思考力なのだ。
なので、いわゆる予想通りの展開には、
だいたいならないので、仮想戦記らしさを本作に求めても肩透かしを食らうであろう。
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